システム開発のPoCとは?MVP開発との違いや費用・プロセスを解説
「システム開発をPoCでしたいけど、どんな方法かわからない」「PoC開発のメリット・デメリットを知りたい」
上記の疑問や悩みを抱えた方もいるでしょう。この記事では、PoC開発はどのようなものかだけでなく、メリット・デメリットや流れ、成功のポイント、事例を解説します。
PoC開発を詳しく知ることができ、事業にも活かせるようになる記事です。ぜひ最後までご覧ください。
目次
PoC開発とは
PoC開発とは、新しいシステムやアイデアの実現可能性を検証するためにテストを行う開発の手法です。システム開発において新システムのアイデアに実効性があるか、アイデアの実現は可能かを検証します。
プロトタイプを作成し、実際の導入環境により近い状況で検証する点が特徴。新しい概念やアイデアを創出する前にラフな形で実物を作り、デモンストレーションを行います。
システム開発には、PoC以外にも様々な手法があります。他の開発手法も確認したいという方は、以下の記事も参考にしてください。
MVP開発との違い
MVP開発とは、ユーザーが価値を感じられる必要最小限の機能を持つプロダクトを作成し、ユーザーのニーズを検証しながら少しずつ製品・サービスの開発を行う手法です。
PoC開発とMVP開発の違いは以下のとおりです。
比較項目 | PoC開発 | MVP開発 |
---|---|---|
用いられる段階 | 市場投入前の実験段階 | 市場投入時 |
プロトタイプの扱い | プロトタイプとして扱う | 最低限の機能を持った製品として扱う |
導入環境 | 現場に近いものを想定 | 市場に投入し、現場で利用する |
目的 | アイデアが実証可能なものかチェックする | 市場の反応を確かめる |
コスト | MVPに比べると高い | 低い |
PoC開発とMVP開発の違いを把握することで、より効率的な開発が可能です。MVP開発についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
PoC開発のメリット4つ
PoC開発のメリットは以下のとおりです。
- 開発プロセスや人員コストの無駄をカットできる
- システムの実現性を事前に検証できる
- プロトタイプをユーザーに試用してもらい期待効果を確かめられる
- 一般消費者や投資家の注目を集められる
上記のメリットを把握しておくと、PoC開発による成功の確率が高まるでしょう。
①開発プロセスや人員コストの無駄をカットできる
PoCではシステムの実現性の検証を事前に行えるため、開発を進めたあとで実現不可能といった事態に気づくことを防げます。
実現性のある開発のみ着手できるため、不要な工数の発生や無駄な人員のコストを抑えられるでしょう。つまり、開発前にプロジェクトの進め方を明確にできます。
②システムの実現性を事前に検証できる
PoCではプロトタイプで検証を行い、システムの実現率を事前に可視化できるため、投資対効果を引き出せます。
自社の技術では開発できなかった、あるいは想定外の軌道修正を繰り返し行わなければならないといった事態を防げるでしょう。
また、同じプロジェクトでも、会社のリソースによっては実現できない場合があります。PoC開発では、事前に実現性を検証できるため、プロジェクトを途中で断念してしまうリスクを防げるでしょう。
③プロトタイプをユーザーに試用してもらい期待効果を確かめられる
PoCでは新システムの試作品をユーザーに利用してもらえます。ユーザーから使用した感想や意見を聞き出せるため、期待効果とのギャップを確認できるでしょう。
ユーザーの意見をもらうことで利益の指標や予想される売上を出しやすくなり、費用対効果の推測の精度向上も期待できます。
④一般消費者や投資家の注目を集められる
PoCは、新しい技術やアイデアの実現可能性を検証することができるため、成功すれば注目を集められます。開発リスクを抑え、コストの見直しにつながると、投資家や企業は利益を得るチャンスと見るでしょう。
PoCによって検証された結果をもとに開発を進めることで、宣伝効果も得られ、より多くの人々に利用されるサービスや製品を提供しやすくなります。
PoC開発のデメリット2つ
PoC開発のデメリットは以下のとおりです。
- 検証回数が多くなる可能性がある
- システム開発に関する情報が漏れる可能性がある
上記のデメリットを把握していないと、開発にコストがかかってしまい、効率が落ちる可能性があります。
①検証回数が多くなる可能性がある
PoC開発は、検証テストの数が増加し、コストの増加につながる可能性があります。場合によっては、必要なデータをすべて取得するために複数のテストが必要になるでしょう。
また、追加のテストごとにプロジェクトの全体コストが増加するケースも。プロジェクトの成功にはテストが不可欠ですが、コストも増加する可能性にも注意が必要です。
②システム開発に関する情報が漏れる可能性がある
PoCではプロトタイプを作成して検証するため、検証の過程で機密情報が漏洩するリスクがあります。検証中のプロトタイプやデータが競合他社の手に渡った場合、重大な損害が発生するケースも。
情報漏洩を防止するための対策を講じ、PoC開発のコストと効果のバランスを慎重に考慮することが重要です。
PoC開発の流れ
PoC開発は以下の流れで進みます。
- 企画
- 検証方法の検討
- 本番環境で検証する
- 結果の評価と改善
- 本格的な開発に進むかどうかの決定
上記の流れを把握しておくと、スムーズにPoC開発を進められるでしょう。
また、システム開発の基本的な流れを知りたいという方は、以下の記事も参考にしてください。
①企画
PoC開発の企画段階では、主に以下の業務を行います。
- PoCを行う目的や必要性を明確にする
- PoCを行う範囲や期間、予算を決定する
- PoCを行うためのチームを編成する
上記の内容を固めることで、PoC開発を成功させるための体制を整えられるでしょう。
②検証方法の検討
PoC開発の検証方法の検討は以下の流れで進みます。
- 検証項目の設定
- 検証するための環境や条件を整える
- 検証項目に基づいて、PoCのプロトタイプを作成する
- 実際の導入環境により近い状況で検証する
- プロトタイプを使用して、検証を実施する
- 検証結果を記録する
- 評価
PoC開発の検証方法では検証する項目を明確にし、検証するための環境や条件を整えたうえで、本番環境に近い状況で検証を行います。
③本番環境で検証する
PoC開発では、本番環境に近い状態で丁寧に行う検証によって、実際の運用において問題が発生するリスクを最小限に抑えます。
検証項目が決定したら、PoC開発を行うハード・ソフト環境を決め、検証用データが必要であれば用意しましょう。
④結果の評価と改善
検証が終わると、結果をもとに評価を行い、実用性やパフォーマンスなど、あらゆる観点から多角的に評価を行います。
「目的とする効果が得られるか」「ビジネスとして成立するか」などの評価を行い、同時に改善点や問題点を洗い出しましょう。
⑤本格的な開発に進むかどうかの決定
最終段階では検証結果を評価し、必要に応じて改善を行った後、目的とする効果が得られるか、ビジネスとして成立するかなどの評価をします。その結果、現実性がなければそのアイデアは中止し、現実性があれば改善などを加えて実装しましょう。
PoCを行うことで、無駄な開発コストをかけずに済み、製品の価格を抑えることによる競争力の強化や、より早い利益回収につながります。PoC開発の流れにおいて、本格的な開発に進むかどうかの決定は、PoCの目的を達成するために欠かせないステップです。
PoC開発の費用
PoC開発の費用はどのようなアプリ・システムを開発するか、雇うエンジニア人材のスキル、人数によって変動します。
小規模なアプリケーション開発の場合、100~300万円程度が相場とされていますが、完全自社開発であれば、費用を100万円以内に収めることも可能です。
一方で、生成AIなど高度な技術が求められるプロジェクトでは1,000万円以上の費用が必要なケースもあります。プロジェクト内容に応じた適切な予算を見積もりましょう。
システム開発の適切な予算額や見積もりについて知りたいという方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
PoC開発を成功させるためのポイント5つ
PoC開発を成功させるためのポイントは以下のとおりです。
- 小規模から開発をスタートさせる
- プロジェクトのゴールとPoC後の開発計画を明確に定義する
- システムの問題点や課題を明確に理解した上でPoCを実施する
- 現場を意識した検証を行う
- 依頼先の会社は信頼できるところにする
上記のポイントを意識することで、PoC開発の効果を高められるでしょう。
①小規模から開発をスタートさせる
PoCの開発を成功させるには、小規模プロジェクトから始めましょう。大規模なPoCから開始すると、開発コストが高くなり、開発時間が長くなる可能性があります。
小規模から始めることで、リスク評価が容易になり、コストを削減しやすいです。小規模開発をすることで、PDCAサイクルを活用してPoCを継続的に改善できます。
②プロジェクトのゴールとPoC後の開発計画を明確に定義する
PoCプロジェクトを計画する場合、プロジェクトの目標と PoC 完了後の開発計画を定義しましょう。PoCが効果的であることを確認し、最終製品またはサービスの開発を進めるために使用できることを確認するのに役立ちます。
PoCの完了後は、PoCの結果と開発プロセス中に発生した問題や課題を考慮して、開発プロセスの計画を立てることが重要です。最終的な製品やサービスが効果的であり、対象ユーザーのニーズを満たしていることを確認するのに役立ちます。
③システムの問題点や課題を明確に理解した上でPoCを実施する
PoCプロジェクトを確実に成功させるには、PoC を実施する前にシステムの問題点と課題を明確に理解しましょう。PoC がシステムが直面している問題や課題に確実に対処するのに役立ち、より効果的な最終製品やサービスにつながる可能性があります。
PoCの完了後は、プロジェクトの目標と開発計画を定義しましょう。PoCが効果的であることを確認し、最終製品またはサービスの開発を進めるために使用できることを確認するのに役立ちます。
④現場を意識した検証を行う
PoCプロジェクトを成功させるためには、現場を意識した検証が重要です。PoCは、最終製品やサービスが使用される実際のサイトと同様の環境でテストする必要があります。PDCA サイクルを活用して PoC を継続的に改善しましょう。
⑤依頼先の会社は信頼できるところにする
プロジェクトを外注する場合、開発会社の信頼度は重要です。信頼度の高い開発会社では、PoCが適切に計画および実行され、プロジェクトの成功率も高まるでしょう。
開発会社を選ぶ際には、複数の会社を比較し、プロジェクトに最も適した会社を選びます。開発会社を選ぶ際は実績やIT人材の数と質、コミュニケーションやサービスの質が重要です。
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Bubbleを用いることで、プログラミングに比べて1/3程度のスピード・費用で開発が可能です。費用・期間が抑えられるため、新規事業の際に向いています。
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PoC開発を活用している業界
PoC開発を活用している業界には、以下があげられます。
- IT
- 医薬品
- バイオテクノロジー
上記の業界における事例を把握しておくと、PoC開発を活用しやすいです。
①IT
PoC開発で新しいシステムやソフトウェアの有効性をテストするのは、IT 業界で一般的な方法です。以下にIT業界における事例をまとめました。
企業名 | 内容 |
---|---|
OptiMind | 物流業界の新興企業である OptiMind は、PoC開発を使用して、配送ドライバーをサポートし、ワークフローを自動化する新しいサービスを作成 |
Hybrid Technologies | PoC開発を使用して保護者向けの位置追跡サービスを開発 |
上記の事例を把握しておくと、IT業界でPoC開発をより活用しやすくなるでしょう。
②医薬品
PoC開発は、新薬の有効性と安全性をテストするために医療業界で用いられます。主な事例には以下があげられます。
企業名 | 内容 |
---|---|
PMDA (医薬品医療機器総合機構) | 革新的な医療機器の実現可能性を検証するための PoC プロジェクトを実施 |
臨床試験 | 新薬の安全性と有効性を検証するために PoC が使用される |
医薬品の安全性や効果を評価するため、PoC開発は幅広く採用される方法です。
③バイオテクノロジー
バイオテクノロジー業界では、新薬や革新的な技術の有効性と安全性をテストするためにPoC開発が用いられます。以下はバイオテクノロジー業界における、PoC開発の事例です。
企業名 | 内容 |
---|---|
Digzyme | AI とデータドリブン技術を活用した酵素機能改善サービスの有償のPoC開発を開始 |
Microbiofactory | PoC開発を利用して、環境問題を解決するために微生物を使用した革新的なソリューションを作成 |
PoC開発の手法は、バイオテクノロジー業界でも活用される、効果的なものと言えます。
まとめ:PoCで効率的なシステム開発を実現しよう
ここまでPoC開発に関してメリット・デメリットや流れ、成功のポイント、事例を解説しました。PoC開発は製品をリリースする前に検証をすることで、事前にどれだけ利益を得られるかシミュレーションしやすい方法です。
PoC開発は新規事業の立ち上げに適しており、リスクを抑えながら成功の確率を高められます。ITだけでなく、医薬品やバイオテクノロジーといった業界でも採用されている開発方法です。ぜひPoC開発の採用を検討し、効率的なシステム開発の実現をめざしてみてください。