ソフトウェア開発とシステム開発の違いを解説【職種・開発手法】

「ソフトウェア開発」と「システム開発」という2つの用語はよく耳にするものでありながら、その違いや特徴を正確に理解している人は少ないかもしれません。この記事では、まず「ソフトウェア」と「システム」が何であるかを基本から解説します。次に、それぞれの開発プロセスで担当される職種と、使用される開発手法について詳しく見ていきます。

この記事を読めば、ソフトウェアとシステムのどちらが自社のプロジェクトに適しているのか、それぞれの開発における疑問が解消されるでしょう。

ソフトウェアとシステムとは？

コンピュータ科学と情報技術の世界では、「ソフトウェア」と「システム」は頻繁に使用される用語ですが、これらの違いを明確に理解している人は少ないかもしれません。一見似ているこれらの概念は、実はそれぞれ独自の特性と用途を持っています。

• システム：ソフトウェア＋ハードウェア
• ソフトウェア：ハードウェア上で動くアプリケーション

つまり、イメージとしてはシステムの中にソフトウェアが存在しています。ここでは、ソフトウェアとシステムの基本的な定義と、それぞれの役割について解説します。

ソフトウェアの定義

ソフトウェアは、コンピュータが特定のタスクを実行するために必要な指示やデータをまとめたものです。これには、オペレーティングシステム、アプリケーション、ユーティリティプログラムなどが含まれます。

ソフトウェアは、ユーザーがコンピュータと対話する手段を提供し、多様な作業を効率的に行うためのツールとも言えます。例えば、テキストエディタは文章を作成するためのソフトウェアであり、データベース管理システムは情報を整理・保存するためのソフトウェアです。ソフトウェアは、プログラミング言語を用いて開発され、その後コンパイルされて実行可能な形になります。

ソフトウェア開発の意味について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

ソフトウェア開発って何？意味や開発の流れ、関係する職種も解説！

システムの定義

システムとは、特定の目的を達成するために相互に関連する部分（コンポーネント）から成る整体のことを指します。例えば、ハードウェア、ソフトウェア、人間、プロセスなどがシステムに含まれます。システムは、単一のソフトウェアアプリケーションよりも広範で複雑な場合が多いです。また、特定のビジネスや業務、または科学的な目的を達成するために設計されます。

具体的には、銀行のATMではハードウェア（ATM自体）、ソフトウェア（取引を処理するプログラム）、人間（ユーザーまたはオペレーター）、プロセス（取引手続き）から成るシステムです。

システム開発の意味について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

【基礎知識】システム開発とは？種類・工程・業種について解説

ソフトウェア開発とシステム開発の違い【担当職種】

次にソフトウェア開発とシステム開発の担当職種の違いを解説していきます。

担当職種	ソフトウェア開発での主な業務内容	システム開発での主な業務内容
フロントエンド開発者	UI（ユーザーインターフェース）の設計・実装	–
バックエンド開発者	サーバー、データベースの裏側の処理	–
フルスタック開発者	フロントエンドとバックエンドの両方の開発	–
データサイエンティスト	データ解析、機械学習、統計学を用いた情報抽出	–
システムアーキテクト	–	プロジェクト全体の設計と構造決定
データベース管理者	–	データベースシステムの設定と運用
ネットワークエンジニア	–	ネットワーク環境の構築・管理
プロジェクトマネージャー	–	プロジェクトの進行管理、スケジュール作成、調整

この表からもわかるように、ソフトウェア開発とシステム開発では担当する職種が異なります。ソフトウェア開発は主にプログラミングとデータ解析に特化しています。一方で、システム開発は全体のアーキテクチャやデータベース、ネットワーク、プロジェクト管理に焦点を当てているといった形です。

ソフトウェア開発の担当職種

ソフトウェア開発には、特定の役割を果たすいくつかの職種が存在します。主に下記のような職種がソフトウェア開発の担当という形で大きく分けられているようです。

• フロントエンド開発者
• バックエンド開発者
• フルスタック開発者
• データサイエンティスト

ソフトウェア開発の職種では、特にフロントエンド開発者やデータサイエンティストが重要な役割を果たします。これらの職種は、ユーザー体験（UX）の最適化やデータ解析に特化しているため、ソフトウェアの品質と直接関連しているのです。それぞれの職種がどのような業務を担当するのか、以下で説明します。

フロントエンド開発者

フロントエンド開発者は、ユーザーが直接触れるインターフェースを設計・実装する職種です。HTML、CSS、JavaScriptなどのウェブ技術を駆使して、使いやすく魅力的なUI（ユーザーインターフェース）を作成します。

また、ユーザー体験（UX）に直結するため、ソフトウェア開発においては欠かせない存在です。良いフロントエンドは、ユーザーがアプリケーションを継続して使用するための鍵となります。

バックエンド開発者

バックエンド開発者は、サーバー、データベース、APIなど、裏側で動くシステムの設計と構築を担当します。主に、データの保存、認証、ロジック処理などを行い、フロントエンドと連携して全体のシステムを機能させる役職です。

バックエンド開発者がしっかりと機能することで、ユーザーはスムーズな操作感と高いパフォーマンスを体験できます。

フルスタック開発者

フルスタック開発者は、フロントエンドとバックエンドの両方を担当する職種です。一人で全体のシステムを構築する能力があり、多角的な視点でプロジェクトを推進できます。

フルスタック開発者が多才なスキルセットを持つことで、小規模なプロジェクトやスタートアップでは特に価値を発揮します。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、大量のデータから有用な情報を抽出し、ビジネスやプロダクトの改善に役立てる職種です。機械学習、統計学、データマイニングなどの高度な技術を用いて、データ解析を行います。

この職種がソフトウェア開発に関係する点は、データを基にした新しい機能の提案や、既存の機能の最適化に寄与することです。

システム開発の担当職種

システム開発においても、特定の役割と責任を持つ多くの職種が関与します。主に下記のような職種がシステム開発の担当という形で大きく分けられているようです。

• システムアーキテクト
• データベース管理者
• ネットワークエンジニア
• プロジェクトマネージャー

システム開発ではより広範な視点での設計と実装が求められるため、システムアーキテクトやネットワークエンジニアなど、企業全体の業務フローと直接関連するような大規模なプロジェクトに関与する職種が多いです。

以下、システム開発における主要な担当職種とその業務内容について詳しく説明します。

システムアーキテクト

システムアーキテクトは、プロジェクト全体の設計と構造を決定する役割を担います。要件定義から設計、実装に至るまでの全体像を把握し、最適なシステム構成を提案する役職です。

また、他の職種と連携してシステムの効率とパフォーマンスを最適化する責任もあります。

データベース管理者

データベース管理者は、データの保存、取得、更新などを行うデータベースシステムの設定と運用を担当します。

また、データの整合性やセキュリティを確保するための役割も果たし、システム全体のデータフローを管理します。

ネットワークエンジニア

ネットワークエンジニアは、システムがスムーズに動作するためのネットワーク環境を構築・管理します。インターネット接続や内部ネットワーク、セキュリティ対策などが主な業務内容です。

また、システムの安定性とセキュリティを確保するために、常にネットワークの監視と調整を行います。

プロジェクトマネージャー

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの進行管理と品質を担当します。スケジュール作成、リソース配分、進捗確認などを行い、プロジェクトが計画通りに進むよう調整する役職です。

また、リスク管理や品質保証もその責任範囲に含まれます。

ソフトウェア開発とシステム開発の違い【手法】

次にソフトウェア開発とシステム開発の手法の違いについて解説していきます。

開発手法	ソフトウェア開発での使用	システム開発での使用
スクラム	一般的に使用される	あまり使用されない
DevOps	一般的に使用される	限定的に使用される
ビッグデザインアップフロント（BDUF）	あまり使用されない	一般的に使用される
スパイラルモデル	限定的に使用される	一般的に使用される
Vモデル	限定的に使用される	一般的に使用される

それぞれの開発手法の特徴について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

【初心者向け】システム開発の手法５選とメリット・デメリットについて解説！

ソフトウェア開発の手法

ソフトウェア開発においては、スクラムやDevOpsといった手法が一般的に使用されます。スクラムはアジャイル開発の一形態であり、短いスプリント（通常は2〜4週間）で開発を進め、定期的に成果を評価します。この手法は、顧客の要求が頻繁に変わるようなプロジェクトに特に適しています。

一方、DevOpsは開発（Dev）と運用（Ops）の連携を強化する手法で、継続的なインテグレーション、継続的なデリバリー、自動化を重視します。これにより、開発から運用までのプロセスがスムーズになり、より迅速なリリースが可能となります。

開発フェーズ	スクラムでの対応	DevOpsでの対応
要件定義	スプリントプランニングで行う	プロダクトバックログに基づく
設計	スプリント内で進行	コードレビューと連携
開発	スプリント内で進行	継続的インテグレーションによる
テスト	スプリントレビュー前に実施	継続的テスティングによる
デプロイ	スプリント終了後	継続的デリバリー/継続的デプロイ
モニタリング・運用	スプリントレトロスペクティブで評価	自動化モニタリングと連携

このように、スクラムとDevOpsはソフトウェア開発の各フェーズで異なるアプローチを取ります。

具体的な違いとしては、ソフトウェア開発ではユーザーインターフェースやデータ処理が中心であり、スクラムやDevOpsが効果を発揮する場面が多いです。一方、システム開発ではハードウェアとの連携や、複数のシステムとの統合が必要な場合が多く、そのような状況下ではBDUFやスパイラルモデルがよく用いられます。

ソフトウェア開発で用いられる「アジャイル開発」について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

【基礎知識】アジャイル開発とは？特徴や全体像、失敗しないポイントも解説

システム開発の手法

システム開発においては、ビッグデザインアップフロント（BDUF）、スパイラルモデル、Vモデルといった手法がよく採用されます。

• BDUF
  開発の初期段階で全体の設計を詳細に行い、実装とテストを進める手法。大規模なプロジェクトや、要件が明確で変更が少ないと予想されるプロジェクトに適している
• スパイラルモデル
  プロジェクトをいくつかのフェーズに分け、各フェーズで設計、実装、テストを行いながら進める手法。要件が変更される可能性が高い、または新しい技術を採用するプロジェクトに有用
• Vモデル
  各段階で単体テスト、結合テスト、システムテストを行い、最終的には受け入れテストを経て開発する手法。品質を重視するプロジェクトに特に適している

それぞれの流れと対応方法については以下の通りです。

開発フェーズ	BDUFでの対応	スパイラルモデルでの対応	Vモデルでの対応
要件定義	初期段階で詳細に行う	フェーズごとに適宜行う	初期段階で行う
設計	初期段階で詳細に行う	フェーズごとに適宜行う	設計フェーズで行う
開発	設計後に進行	フェーズごとに適宜行う	開発フェーズで行う
テスト	開発後に進行	フェーズごとに適宜行う	対応する開発フェーズごとに行う
デプロイ	テスト後に行う	フェーズごとに適宜行う	受け入れテスト後に行う

システム開発は、ソフトウェア開発よりもハードウェアや外部システムとの連携が多く、全体としてのシステムの安定性や効率性が求められます。そのため、上記のような計画的かつ総合的な手法が多く採用される傾向にあります。

これらの手法は、ソフトウェア開発でも用いられる場合がありますが、システム開発ではより広範な視点での計画と実行が必要とされるため、それぞれの手法が特に効果を発揮するのです。

まとめ

この記事では、ソフトウェア開発とシステム開発の違いを解説しました。ソフトウェア開発はアプリケーションやサービスに特化し、特定の技術領域、例えばフロントエンドやバックエンドに焦点を当てます。対照的に、システム開発は企業や組織の全体的な情報システムを設計・構築し、システムアーキテクトやデータベース管理者が中心的な役割を果たします。

また、開発手法も異なります。ソフトウェア開発ではアジャイルな手法が一般的ですが、システム開発では計画的なアプローチが多く見られます。これらの違いを理解することは、プロジェクトの成功に向けてどの職種や手法が最適かを判断する際に有用です。最終的に、これらの違いがそれぞれの開発プロセスで成功を収めるための重要な要素であることを認識することが重要です。

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