生産管理システムの開発で失敗しない!現場に合うシステムを作る方法と開発会社の選び方とは?
生産管理システムの開発について
- 開発とパッケージの選び方
- 開発費用の相場と開発期間の目安
- Excel・Access・ノーコードによる自作方法と限界
- 開発会社を選ぶ際のチェックポイント
- 開発を成功させる進め方と失敗パターン
など、生産管理システムの開発に必要な知識を網羅的にご紹介します。
このような方はぜひご一読ください
・生産管理システムの導入を検討しているが、開発とパッケージどちらを選ぶべきか迷っている
・Excel管理に限界を感じており、本格的なシステム化を検討している
・開発会社への外注を考えているが、どのように選べばよいかわからない
・過去にシステム導入で失敗した経験があり、今度こそ成功させたい
製造業において、生産管理システムの導入は業務効率化とコスト削減を実現するための重要な施策です。しかし、「導入したが現場で使われない」「想定していた効果が出ない」「開発費用が膨らんでしまった」といった失敗事例は後を絶ちません。
生産管理システムの開発で失敗する原因の多くは、「自社に合わない選択をしてしまうこと」にあります。開発とパッケージのどちらが自社に適しているのか、どのような開発会社を選ぶべきか、どのように進めれば現場に定着するシステムが作れるのか——これらを理解しないまま進めてしまうと、大きな損失につながります。
本記事では、生産管理システムの開発を成功させるために必要な知識を、費用相場から開発会社の選び方、成功・失敗パターンまで徹底的に解説します。
当社Swoooは、国内最多規模の実績を誇るノーコード開発会社です。
ノーコード・ローコード技術を活用することで、従来のシステム開発と比較して1/2〜1/3のコストと期間での開発を実現しています。製造業向けの生産管理システム開発においても、多くの企業様の課題解決を支援してまいりました。

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目次
生産管理システムの「開発」と「パッケージ」どちらを選ぶべきか
生産管理システムを導入する際、まず直面するのが「自社専用にゼロから開発するか」「既製品のパッケージを導入するか」という選択です。
結論から言えば、どちらが正解かは企業の状況によって異なります。それぞれの特徴を理解した上で、自社に最適な選択をすることが重要です。
開発(スクラッチ)を選ぶべきケース
開発(スクラッチ開発)とは、自社の業務フローや要件に合わせてゼロからシステムを構築する方法です。パッケージ製品のような既成の枠組みに縛られず、完全にオーダーメイドのシステムを作り上げることができます。
スクラッチ開発が向いている企業には、以下のような特徴があります。
- 特殊な工程や独自のルールを持っている:標準的なパッケージでは対応できない、自社独自の生産方式や品質管理基準がある場合
- Excelや属人化した管理が限界に達している:複数のExcelファイルが乱立し、データの整合性が取れない、特定の担当者しか状況を把握できないなどの問題が深刻化している場合
- ベテラン社員の暗黙知をシステム化したい:長年の経験で培われたノウハウや判断基準をシステムに組み込み、技術継承を実現したい場合
- 既存システムとの高度な連携が必要:基幹システムや会計システム、IoTデバイスなど、複数のシステムと密接に連携させる必要がある場合
特に、個別受注生産や多品種少量生産を行っている製造業では、案件ごとに仕様が異なるため、汎用的なパッケージでは対応しきれないケースが多く見られます。このような企業では、スクラッチ開発によって自社の業務に完全にフィットしたシステムを構築することで、大きな効率化が期待できます。
パッケージを選ぶべきケース
パッケージとは、すでに完成されたシステムを自社に導入する方法です。生産管理に必要な基本機能が標準で搭載されており、導入後すぐに運用を開始できる点が最大の特徴です。
パッケージ導入が向いている企業には、以下のような特徴があります。
- 業務フローが比較的標準的:受発注から生産、出荷までの流れが一般的な製造業の業務プロセスに近い場合
- 導入スピードを重視したい:できるだけ早くシステムを稼働させ、効果を得たい場合(スクラッチ開発と比較して導入期間を大幅に短縮可能)
- 初期コストを抑えたい:開発費用を最小限に抑え、月額利用料で運用したい場合
- IT人材が社内にいない:システムの運用・保守をベンダーに任せたい場合
特にクラウド型のパッケージシステムであれば、月額5万円程度から利用を開始でき、サーバーの構築や保守も不要です。「まずは生産管理のデジタル化を始めたい」という企業にとっては、手軽に導入できる選択肢と言えるでしょう。
ただし、パッケージにはカスタマイズの限界がある点に注意が必要です。自社の業務をシステムに合わせる必要が生じる場合もあり、導入前に「自社の業務フローとシステムの適合度」を十分に確認することが重要です。
パッケージ+カスタマイズという中間の選択肢もある
「パッケージの手軽さ」と「スクラッチの柔軟性」の両方を求める場合、パッケージをベースに一部機能をカスタマイズする方法が有効な選択肢となります。
この方法では、生産計画や在庫管理などの基本機能はパッケージの標準機能を活用しつつ、自社特有の工程管理や帳票出力など、どうしても必要な部分だけを追加開発します。
この中間的なアプローチには、以下のようなメリットがあります。
- コストと柔軟性のバランスが取れる:フルスクラッチと比較して開発費用を抑えながら、自社に合ったシステムを構築可能
- 導入期間を短縮できる:ゼロから開発するよりも早く稼働を開始できる
- パッケージのアップデートの恩恵を受けられる:基本機能については、ベンダーによる継続的な改善が期待できる
ただし、カスタマイズ範囲には制限があることを理解しておく必要があります。パッケージの根幹に関わる部分の変更は難しく、大幅なカスタマイズを行うとパッケージのバージョンアップに対応できなくなるリスクもあります。
また、カスタマイズ費用がパッケージ本体の費用を大きく上回る場合は、最初からスクラッチ開発を選択した方が費用対効果が高くなるケースもあります。見積もりの段階で、カスタマイズの範囲と費用を慎重に検討することが重要です。
生産管理システム開発の費用相場と開発期間の目安
生産管理システムの導入を検討する際、最も気になるのが「いくらかかるのか」「どのくらいの期間が必要か」という点でしょう。
ここでは、開発方法別の費用相場と開発期間の目安を詳しく解説します。
フルスクラッチ開発:500万〜2,000万円以上
フルスクラッチ開発とは、自社の要件に合わせてゼロからシステムを構築する方法です。費用相場は500万〜2,000万円以上と幅が広く、要件の複雑さや規模によって大きく変動します。
フルスクラッチ開発の費用は、主に以下の工程で構成されます。
| 工程 | 内容 | 費用目安(割合) |
|---|---|---|
| 要件定義 | 業務フローの整理、必要機能の洗い出し、システム仕様の決定 | 全体の15〜20% |
| 設計 | 画面設計、データベース設計、システム構成設計 | 全体の20〜25% |
| 開発 | プログラミング、機能実装 | 全体の30〜40% |
| テスト | 単体テスト、結合テスト、運用テスト | 全体の15〜20% |
| 導入・研修 | データ移行、操作研修、稼働支援 | 全体の5〜10% |
費用が変動する主な要因としては、以下の点が挙げられます。
- 機能数の多さ:生産計画、在庫管理、原価管理、品質管理など、実装する機能が多いほど費用は増加
- 連携システムの数:基幹システム、会計システム、IoTデバイスなど、連携先が多いほど開発工数が増加
- UI/UXの要件:現場作業者が使いやすいタブレット対応画面や、リアルタイム可視化ダッシュボードなど、高度なUI要件がある場合
- セキュリティ要件:多要素認証、アクセス権限管理、監査ログなど、厳格なセキュリティが求められる場合
なお、開発費用は「人月単価 × 開発人数 × 開発期間」で算出されるのが一般的です。エンジニアの人月単価は60万〜150万円程度が相場であり、要件の複雑さによって必要な人員と期間が決まります。
パッケージ+カスタマイズ:150万〜500万円
パッケージ製品をベースにカスタマイズを加える場合、費用相場は150万〜500万円程度となります。この費用は、パッケージ本体の費用とカスタマイズ費用の合計です。
費用の構成は以下のようになります。
| 項目 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| パッケージライセンス費用 | 50万〜300万円 | 買い切り型の場合。クラウド型は月額5万円程度〜 |
| カスタマイズ費用 | 50万〜300万円 | 追加機能の開発、帳票カスタマイズなど |
| 導入支援費用 | 30万〜100万円 | データ移行、初期設定、操作研修 |
| 年間保守費用 | ライセンス費用の15〜20% | 障害対応、バージョンアップなど |
カスタマイズ範囲によって価格は大きく変動します。たとえば、帳票のレイアウト変更程度であれば数十万円で済むケースもありますが、独自の工程管理機能の追加や外部システムとの連携開発を行う場合は、数百万円規模になることもあります。
フルスクラッチ開発と比較すると、開発費用を1/2〜1/3程度に抑えられる可能性がある一方で、パッケージの標準機能に業務を合わせる必要が生じる場合もあります。導入前に「FIT&GAP分析」を行い、どの程度のカスタマイズが必要かを明確にすることが重要です。
自作(Excel・Access・ノーコード):0〜50万円
社内リソースを活用してシステムを自作する場合、ツール費用自体は0〜50万円程度で済みます。ただし、これはあくまでツールやライセンスの費用であり、実際には「見えないコスト」が発生することを理解しておく必要があります。
| 自作方法 | ツール費用 | 実質コスト(人件費含む) |
|---|---|---|
| Excel | 0円(既存ライセンス利用) | 担当者の工数×時給 |
| Access | 0〜2万円程度 | 担当者の工数×時給+学習コスト |
| ノーコードツール | 月額1万〜5万円 | 担当者の工数×時給+月額費用 |
自作の場合、担当者がシステム構築に費やす時間の人件費を考慮する必要があります。たとえば、時給3,000円の担当者が200時間かけてシステムを構築した場合、人件費だけで60万円のコストが発生します。
さらに、構築後のメンテナンスや機能追加、トラブル対応などにも継続的な工数がかかります。これらを総合的に考慮すると、「自作だから安い」とは一概に言えないケースも多いのが実情です。
自作が適しているのは、小規模な生産管理や、特定の業務に限定した簡易的なシステムを構築する場合です。本格的な生産管理システムが必要な場合は、次のH2で解説する「自作の限界」を踏まえた上で判断することをおすすめします。
開発期間は最短3ヶ月〜1年が目安
生産管理システムの開発期間は、規模や開発方法によって大きく異なります。以下に目安を示します。
| 開発方法 | 開発期間の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| パッケージ導入(カスタマイズなし) | 1〜3ヶ月 | クラウド型は最短2週間程度で稼働可能な場合も |
| パッケージ+カスタマイズ | 3〜6ヶ月 | カスタマイズ範囲により変動 |
| フルスクラッチ(小〜中規模) | 6ヶ月〜1年 | 機能数や連携先により変動 |
| フルスクラッチ(大規模) | 1年〜2年以上 | 複数工場対応、ERP連携など |
開発期間を左右する主な要因は以下の3点です。
- 要件の明確さ:導入前に業務フローや必要機能が明確になっていれば、要件定義の期間を短縮可能。逆に要件が曖昧なまま開発を始めると、手戻りが発生し期間が延びる
- 社内体制:意思決定者が明確で、迅速に判断できる体制があれば開発がスムーズに進む。承認プロセスが複雑だと、その分だけ期間が延びる
- 開発会社のリソース:開発会社側のエンジニア確保状況によっても期間は変動する。繁忙期には着手までに時間がかかる場合もある
開発期間を短縮したい場合は、後述するアジャイル開発の手法を取り入れ、最小限の機能から段階的にリリースする方法が有効です。まずは必要最低限の機能で運用を開始し、使いながら改善を加えていくアプローチは、多くの成功事例で採用されています。
生産管理システムを自作する方法と限界
「できるだけコストを抑えたい」「まずは小さく始めたい」という企業にとって、生産管理システムの自作は魅力的な選択肢に見えるかもしれません。
実際、Excel・Access・ノーコードツールなどを活用すれば、外注費をかけずにシステムを構築することは可能です。しかし、自作には明確な限界があり、それを理解せずに進めると後々大きな問題に発展するリスクがあります。
ここでは、各ツールの特徴と限界、そして外注に切り替えるべきタイミングについて解説します。
Excelで作る:小規模・簡易管理向け
Excelは多くの企業で既に導入されており、追加コストなしで生産管理に活用できる点が最大の魅力です。関数やマクロ(VBA)を活用すれば、在庫表や簡易的な工程管理表を作成することができます。
Excelで実現できる主な機能
- 製品別・ロット別の在庫管理表
- ガントチャートによる簡易的な工程管理
- 入出庫履歴の記録
- 発注点管理による発注アラート
- 生産実績の集計・グラフ化
Excelのメリットは、なんといっても「コストゼロですぐに始められる」点です。操作に慣れている社員が多く、特別な研修なしで利用を開始できます。テンプレートも豊富に公開されているため、ゼロから作る必要がない場合も多いでしょう。
しかし、Excelには以下のような明確なデメリットがあります。
| デメリット | 具体的な問題 |
|---|---|
| 同時編集ができない | 複数人が同じファイルを開けず、入力待ちが発生。データの上書きリスクも高い |
| データ量の限界 | 行数が増えると処理速度が著しく低下。数万行を超えると実用に耐えない |
| 属人化リスク | 複雑なマクロを組んだ担当者しかメンテナンスできない。退職時に運用不能になることも |
| データ整合性の担保が困難 | 入力ミスのチェック機能が弱く、誤ったデータが蓄積されやすい |
| リアルタイム性がない | ファイルを開かないと最新状況がわからない。現場との情報共有にタイムラグが発生 |
Excelによる生産管理は、従業員10名以下の小規模事業者や、特定の業務に限定した簡易管理には適しています。しかし、事業の成長とともに限界が顕在化するため、あくまで「暫定的な手段」と位置づけることをおすすめします。
Accessで作る:中規模・複数人利用向け
Microsoft Accessは、Excelよりも本格的なデータベース管理システムを構築できるツールです。リレーショナルデータベースの仕組みを持ち、複数のテーブルを関連付けて効率的にデータを管理することができます。
AccessとExcelの主な違い
| 項目 | Excel | Access |
|---|---|---|
| データ構造 | 表形式(フラット) | リレーショナルDB(複数テーブルの関連付け可能) |
| データ容量 | 100万行程度が限界 | 2GBまで対応(より大量のデータを扱える) |
| 入力制御 | 弱い(自由入力) | 強い(データ型の指定、入力規則の設定可能) |
| 複数人利用 | 困難 | 可能(ただし同時編集には制限あり) |
| フォーム作成 | 不可 | 可能(入力画面を作成できる) |
Accessの最大の強みは、入力フォームやレポートを作成できる点です。現場の担当者が直感的に操作できる入力画面を用意すれば、Excelのように「どのセルに入力すればいいかわからない」という問題を解消できます。
また、クエリ機能を使えば、「在庫が発注点を下回った製品の一覧」「今月の生産実績の集計」などを自動で抽出・計算することも可能です。
ただし、Accessにも以下のような課題があります。
- 専門知識が必要:テーブル設計、リレーションシップの設定、クエリの作成など、Excel以上の知識が求められる
- 保守の属人化:設計・開発した担当者しかシステムを理解できず、メンテナンスが困難になりがち
- 同時編集時のパフォーマンス低下:複数人が同時にアクセスすると処理速度が遅くなる
- Web対応が困難:基本的にWindowsのデスクトップアプリであり、スマホやタブレットからのアクセスには別途対応が必要
Accessは、従業員20〜50名程度の中規模事業者で、IT担当者がいる場合には有効な選択肢です。しかし、将来的な拡張性やWeb対応を考慮すると、本格的な生産管理には物足りない場面が出てくるでしょう。
ノーコード・ローコードツールで作る
近年注目を集めているのが、プログラミング不要でシステムを構築できるノーコード・ローコードツールです。ドラッグ&ドロップの直感的な操作で、Webアプリケーションを作成することができます。
生産管理に活用できる代表的なツール
| ツール名 | 月額費用目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| kintone | 1,500円〜/ユーザー | 業務アプリを簡単に作成可能。国内実績が豊富 |
| Pleiades | 要問い合わせ | 製造業向けの機能が充実 |
| Airtable | $20〜/ユーザー | Excelライクな操作感でDBを構築可能 |
| AppSheet | $5〜/ユーザー | Googleスプレッドシートと連携しやすい |
ノーコードツールのメリットは、非エンジニアでもシステムを構築でき、開発スピードが速い点です。また、クラウドベースのため、PCやスマホから場所を問わずアクセスでき、複数人での同時利用も問題ありません。
一方で、以下のようなデメリットも存在します。
- 複雑な処理には限界がある:高度な計算ロジックや複雑な条件分岐は実装が難しい
- 月額コストが継続的に発生:ユーザー数が増えると費用も増加し、長期的には高額になる可能性がある
- 外部システムとの連携に制限がある:既存の基幹システムとのデータ連携が困難な場合がある
- プラットフォーム依存:ツール提供元のサービス終了や仕様変更の影響を受ける
ノーコードツールは、「まずはデジタル化を始めたい」「Excelからの脱却を図りたい」という企業にとって、有効なステップアップ手段です。ただし、事業が拡大し要件が複雑化した際には、より本格的なシステムへの移行を検討する必要があります。
自作の限界と外注に切り替えるタイミング
Excel・Access・ノーコードツールによる自作は、初期コストを抑えられる反面、企業の成長とともに限界が顕在化します。以下のようなサインが見られたら、外注による本格的なシステム開発を検討すべきタイミングです。
外注に切り替えるべきサイン
- データ量の増大で処理が遅くなった:ファイルを開くのに数分かかる、検索や集計が終わらないなどの症状が出始めた場合
- 複数拠点・複数部門での情報共有が必要になった:工場、営業、経理など、部門をまたいでリアルタイムにデータを共有する必要が生じた場合
- 外部システムとの連携ニーズが発生した:基幹システム、会計システム、ECサイトなどとデータを自動連携したい場合
- セキュリティ要件が厳しくなった:取引先からのセキュリティ監査対応や、アクセス権限の細かい管理が求められる場合
- 担当者への依存度が高すぎる:特定の担当者が退職・異動すると運用が止まるリスクがある場合
- 改修・メンテナンスに多大な時間がかかるようになった:仕様変更のたびに膨大な工数が発生し、本業に支障が出ている場合
特に「担当者への属人化」は、多くの企業で見落とされがちなリスクです。システムを作った本人しか仕組みを理解しておらず、その人が不在になると業務が回らなくなるケースは珍しくありません。
自作システムから外注への移行は、「限界が来てから」ではなく「限界が見え始めた段階」で検討を開始することをおすすめします。切羽詰まってから動き出すと、十分な検討時間が取れず、結果的に失敗するリスクが高まります。
生産管理システムの開発会社を選ぶ5つのチェックポイント
生産管理システムの開発を外注する際、開発会社の選定は成功を左右する最も重要な要素の一つです。
製造業のシステム開発には、一般的なWebシステムやアプリ開発とは異なる専門性が求められます。単に「開発実績が多い」「価格が安い」だけで選んでしまうと、現場で使われないシステムが出来上がってしまうリスクがあります。
ここでは、生産管理システムの開発会社を選ぶ際にチェックすべき5つのポイントを解説します。
製造業の現場を理解しているか(工場見学に来るか)
生産管理システムは、実際に工場で働く人たちが日々使うシステムです。そのため、開発会社が製造業の現場を深く理解しているかどうかは、システムの使いやすさや実用性に直結します。
現場理解の有無を見極める最もシンプルな方法は、「工場見学を打診してくるかどうか」です。
優れた開発会社は、ヒアリングの早い段階で「実際の現場を見せてください」と依頼してきます。これは、以下の理由から非常に重要な姿勢です。
- 言葉だけでは伝わらない業務の流れを理解できる:現場の動線、作業者の手の動き、情報の伝達方法など、文書やヒアリングだけでは把握しきれない情報を得られる
- 現場の制約条件を把握できる:「手袋をしたままタッチ操作が必要」「騒音が大きく音声通知は使えない」など、現場特有の制約を理解できる
- 隠れた課題を発見できる:発注者自身が気づいていない非効率や改善ポイントを、第三者の目で発見できることがある
逆に、工場見学を行わず、オンラインミーティングと資料だけで要件を固めようとする開発会社には注意が必要です。現場を見ずに作られたシステムは、「理論上は正しいが現場では使えない」というものになりがちです。
開発会社を選ぶ際は、「現場を見に来てくれますか?」と質問してみてください。その反応で、その会社が製造業の開発に真剣に取り組む姿勢があるかどうかを判断できます。
「要件ヒアリング」ではなく「業務整理」から伴走してくれるか
システム開発において、「要件が明確に定まっている」企業は実は少数派です。多くの場合、「なんとなく困っている」「もっと効率化したい」という漠然とした課題感はあるものの、それをシステム要件として言語化できていないのが実情です。
このような状況で、開発会社が「要件を教えてください」とだけ言ってくる場合、発注者側に大きな負担がかかります。要件定義は専門的なスキルを要する工程であり、システム開発の経験がない企業が自力で行うのは困難です。
優れた開発会社は、「要件ヒアリング」ではなく「業務整理」から伴走してくれます。具体的には、以下のような支援を行います。
- 現状の業務フローを一緒に可視化する:どの部門が、どのタイミングで、何をしているかを図式化
- 課題を整理し優先順位をつける:すべての課題を解決しようとするのではなく、費用対効果の高いものから着手
- システム化すべき範囲を提案する:「ここはシステム化の効果が高い」「ここは運用でカバーした方が良い」など、専門的な視点でアドバイス
- 将来の拡張性を考慮した設計を提案する:現時点の要件だけでなく、事業成長を見据えた提案
「要件は発注者側で決めてください」という姿勢の開発会社は、言われたものを作るだけの「御用聞き」になりがちです。特に初めてシステム開発を外注する企業は、業務整理から一緒に取り組んでくれるパートナーを選ぶことをおすすめします。
自社と同じ生産方式(個別受注・ロット・見込み)の実績があるか
製造業の生産方式は多様であり、生産方式によって必要なシステム機能は大きく異なります。開発会社を選ぶ際は、自社と同じ生産方式での開発実績があるかを必ず確認しましょう。
主な生産方式と、それぞれに求められる機能の違いは以下の通りです。
| 生産方式 | 特徴 | 必要な機能の例 |
|---|---|---|
| 個別受注生産 | 顧客の仕様に合わせて一品ごとに製造 | 案件別の原価管理、仕様変更への対応、個別見積機能 |
| ロット生産 | 同一製品をまとめて一定数量製造 | ロット追跡、段取り替え管理、ロット別品質管理 |
| 見込み生産 | 需要予測に基づき計画的に製造 | 需要予測連携、安全在庫管理、中長期生産計画 |
| 連続生産 | 同一製品を継続的に大量製造 | ライン稼働管理、設備保全連携、リアルタイム監視 |
生産方式への理解がない開発会社に依頼すると、「一般的な生産管理」の機能は揃っているが、自社の業務にはフィットしないシステムが出来上がるリスクがあります。
開発会社との打ち合わせでは、以下のような質問を投げかけてみてください。
- 「当社と同じ〇〇生産方式での開発実績はありますか?」
- 「その案件では、どのような課題をどう解決しましたか?」
- 「当社の業種(金属加工、食品製造など)での実績はありますか?」
具体的な事例を交えて説明できる開発会社であれば、製造業の開発ノウハウを持っていると判断できます。逆に、抽象的な回答しか返ってこない場合は、製造業への知見が浅い可能性があります。
UIのカスタマイズ自由度(老眼でも見やすいボタンサイズなど)
生産管理システムは、オフィスで座って使うシステムとは異なり、工場の現場で立ったまま、あるいは作業の合間に使われるシステムです。そのため、UI(ユーザーインターフェース)の設計が現場の実態に合っているかどうかは、システムの定着率に大きく影響します。
現場で使われるシステムには、以下のようなUI要件が求められます。
- ボタンや文字が大きく見やすい:ベテラン作業者には老眼の方も多く、小さな文字やボタンは操作ミスの原因になる
- 手袋をしたまま操作できる:タッチパネルの場合、手袋対応の設計が必要
- 少ないタップ数で操作が完了する:何度も画面を遷移させる設計は、忙しい現場では敬遠される
- 色で状態を直感的に判別できる:正常は緑、異常は赤など、一目で状況を把握できる
- オフライン環境でも動作する:通信環境が不安定な現場もあるため、一時的にオフラインになっても操作継続できると望ましい
開発会社を選ぶ際は、「UIのカスタマイズはどこまで可能ですか?」と確認してみてください。パッケージベースの場合、UIの変更が制限されているケースもあります。
また、可能であれば、実際に現場で使う担当者にデモ画面を触ってもらう機会を設けることをおすすめします。ITに詳しくない現場作業者の反応こそが、本当の使いやすさを判断する材料になります。
導入後の保守・改修体制は整っているか
生産管理システムは、導入して終わりではなく、導入後の運用・保守こそが本番です。製造業の現場では、製品の追加、工程の変更、取引先からの新たな要求など、日々変化が発生します。それに合わせてシステムも改修・拡張していく必要があります。
開発会社を選ぶ際は、導入後のサポート体制について以下の点を確認しましょう。
| 確認項目 | 質問例 |
|---|---|
| 障害対応 | システム障害時の連絡先は?対応時間は?復旧目標時間は? |
| 問い合わせ対応 | 操作方法の問い合わせはどこに連絡すれば良い?電話対応は可能? |
| バージョンアップ | 機能追加やセキュリティアップデートの頻度は?費用は含まれる? |
| 改修対応 | 小規模な改修はどのような流れで依頼できる?費用の目安は? |
| 担当者の継続性 | 導入時の担当者が保守も担当する?引き継ぎ体制は? |
保守費用の相場は、初期開発費用の15〜20%程度が年間費用の目安です。たとえば、1,000万円で開発したシステムであれば、年間150〜200万円程度の保守費用が発生します。
保守契約の内容は開発会社によって大きく異なるため、契約前に詳細を確認することが重要です。「保守費用に含まれる範囲」「追加費用が発生する条件」などを明確にしておかないと、後から想定外の費用が発生することになりかねません。
また、開発会社の事業継続性も重要なチェックポイントです。規模の小さい開発会社の場合、事業撤退や倒産のリスクがあります。万が一の場合に備えて、ソースコードや設計書の引き渡しについても契約時に取り決めておくことをおすすめします。
生産管理システムの開発を成功させる進め方
生産管理システムの開発プロジェクトは、適切な進め方をしなければ失敗するリスクが高い取り組みです。実際、「導入したが現場で使われない」「想定していた効果が出ない」というケースは珍しくありません。
成功するプロジェクトには共通点があります。ここでは、生産管理システムの開発を成功に導くための4つのステップを解説します。
STEP1:現場の「困りごと」を5W1Hで書き出す
システム開発の第一歩は、「なぜシステムが必要なのか」を明確にすることです。漠然と「効率化したい」「デジタル化したい」という状態では、何を作るべきかが定まらず、プロジェクトが迷走する原因になります。
現場の課題を整理する際は、5W1Hのフレームワークを活用すると効果的です。
| 項目 | 質問 | 具体例 |
|---|---|---|
| Who(誰が) | 誰が困っているのか? | 生産管理課の担当者、製造現場の班長、営業部門 |
| What(何に) | 何に困っているのか? | 在庫数の把握、納期回答、進捗確認 |
| When(いつ) | いつ困っているのか? | 月末の棚卸時、急な問い合わせ時、朝礼での報告時 |
| Where(どこで) | どの工程・場所で困っているのか? | 倉庫での入出庫時、加工工程の段取り替え時 |
| Why(なぜ) | なぜ困っているのか? | 情報が分散している、リアルタイムで把握できない |
| How(どのように) | 現状どう対処しているのか? | Excelで手入力、電話で確認、現場に見に行く |
この工程を省略すると、「作ったシステムが課題解決に繋がらない」という事態を招きます。開発会社に丸投げするのではなく、まずは自社内で課題を言語化する努力をしましょう。
課題の洗い出しは、経営層や管理部門だけで行うのではなく、実際に現場で作業している人の声を集めることが重要です。管理者が認識している課題と、現場作業者が感じている課題にはギャップがあることが多いためです。
具体的な方法としては、現場へのヒアリング、アンケート調査、業務観察(現場に張り付いて作業を観察する)などがあります。時間はかかりますが、この工程に手を抜くと後々のやり直しコストの方が大きくなります。
STEP2:最低限必要な機能を「3つ」に絞る
課題が洗い出せたら、次は「何をシステム化するか」を決める段階です。ここで多くの企業が陥りがちなのが、「あれもこれも」と機能を盛り込みすぎてしまう失敗です。
最初に導入する機能は、「3つ」に絞ることをおすすめします。これは、以下の理由からです。
- 開発コストを抑えられる:機能が増えれば増えるほど、開発費用は膨らむ。最小限の機能でスタートすれば、初期投資を抑えられる
- 開発期間を短縮できる:機能を絞れば、早期にシステムを稼働させ、効果を実感できる
- 現場への定着率が上がる:覚えることが少なければ、現場の抵抗感も小さい。複雑なシステムは使われなくなるリスクが高い
- 軌道修正がしやすい:小さく始めれば、使いながら「本当に必要な機能」が見えてくる。最初から大きく作ると、方向修正が困難
機能の優先順位をつける際は、以下の基準で評価してみてください。
| 評価基準 | 高い優先度の例 | 低い優先度の例 |
|---|---|---|
| 課題の深刻度 | 毎日発生する問題、損失に直結する課題 | たまにしか発生しない、影響が小さい |
| 利用頻度 | 毎日・毎時間使う機能 | 月に数回しか使わない機能 |
| 利用者数 | 多くの担当者が使う機能 | 特定の人しか使わない機能 |
| 費用対効果 | 実装コストに対して効果が大きい | 実装に手間がかかる割に効果が小さい |
「あったら便利」な機能は、最初のリリースでは後回しにするという判断が重要です。本当に必要かどうかは、実際にシステムを使い始めてから判断しても遅くありません。
STEP3:現場の班長クラスを開発プロジェクトに入れる
生産管理システムの開発プロジェクトで見落とされがちなのが、「誰がプロジェクトに参加するか」という点です。情報システム部門や経営企画部門だけでプロジェクトを進めてしまうと、現場の実態から乖離したシステムが出来上がるリスクがあります。
成功するプロジェクトには、必ず「現場のキーマン」が参加しています。特に、製造現場の班長クラスや、ベテランの作業者をプロジェクトメンバーに加えることを強くおすすめします。
現場キーマンをプロジェクトに巻き込むメリットは以下の通りです。
- 現場の実態を反映した要件定義ができる:実際に作業している人だからこそ知っている「本当の課題」や「暗黙のルール」を要件に反映できる
- 現場への展開がスムーズになる:「現場の〇〇さんも一緒に作ったシステムだ」という事実が、他の作業者の受け入れを促進する
- 使いやすいUIが実現できる:ITに詳しくない作業者の目線で画面設計をチェックできる
- 導入後のサポート役になる:システムの使い方を他の作業者に教えるトレーナー役を担ってもらえる
現場キーマンをプロジェクトに巻き込む際の具体的な方法としては、以下のようなものがあります。
- プロジェクトメンバーとして正式にアサインする:通常業務との兼務でも良いので、役割を明確にする
- 定例ミーティングに参加してもらう:週1回程度、進捗確認と要件確認の場に参加してもらう
- 画面デザインのレビューを依頼する:設計段階で実際の画面イメージを見てもらい、フィードバックを得る
- テストに協力してもらう:開発したシステムを実際に操作してもらい、問題点を洗い出す
現場の担当者は日々の業務で忙しいため、「プロジェクトに参加する時間がない」と言われることもあるでしょう。しかし、現場不在で進めたプロジェクトが失敗したときのコストの方が遥かに大きいことを経営層に理解してもらい、現場キーマンの参加を確保してください。
STEP4:小さく作って早く使い、改善を回す
従来のシステム開発では、要件定義→設計→開発→テスト→リリースという流れで、すべての機能を作り込んでから一気に導入する「ウォーターフォール型」が主流でした。しかし、この方法は「作ってみたら想像と違った」「要件が変わった」というリスクに弱いという問題があります。
近年は、「小さく作って早く使い、改善を回す」というアジャイル的なアプローチが推奨されています。これは、以下のような進め方です。
- MVP(Minimum Viable Product:最小実用製品)でリリースする:必要最低限の機能だけを実装し、まずは使い始める
- 実際に使いながらフィードバックを収集する:現場から「ここが使いにくい」「この機能が欲しい」という声を集める
- 短いサイクルで改善・機能追加を行う:2〜4週間程度のサイクルで、優先度の高い改善を反映していく
- 1〜3を繰り返す:継続的にシステムを進化させる
このアプローチのメリットは以下の通りです。
- 早期に効果を実感できる:開発開始から数ヶ月でシステムが稼働し、業務改善が始まる
- リスクを最小化できる:「全部作ってから失敗に気づく」という最悪のシナリオを回避できる
- 本当に必要な機能が見えてくる:使う前に想定していた要件と、実際に使ってみて分かる要件は異なることが多い
- 現場の納得感が高まる:自分たちの意見が反映されていくプロセスを体感することで、システムへの愛着が生まれる
完璧を目指さず、まずは60〜70点のシステムで運用を開始する。この発想の転換が、生産管理システム開発を成功に導く重要なポイントです。
生産管理システムの開発で失敗する企業の共通点
ここまで、生産管理システムの開発を成功させるためのポイントを解説してきました。一方で、失敗するプロジェクトにも共通点があります。
他社の失敗事例から学ぶことで、同じ轍を踏まないようにしましょう。以下では、生産管理システムの開発で失敗する企業に共通する4つのパターンを紹介します。
現場を巻き込まず情シス主導で進めてしまう
最も多い失敗パターンの一つが、情報システム部門や経営企画部門だけでプロジェクトを進め、現場を巻き込まないケースです。
このパターンで起こりがちな問題は以下の通りです。
- 現場の実態と乖離したシステムが出来上がる:机上で考えた「あるべき業務フロー」と、現場の「実際の業務フロー」には大きなギャップがあることが多い
- 使いにくいUIになる:IT部門の視点では問題ないUIでも、ITに不慣れな現場作業者には使いこなせないことがある
- 現場の反発を招く:「上から押し付けられたシステム」という認識が広がり、積極的に使おうとしない
- 導入後に大量の改修要求が発生する:リリース後に「これでは仕事にならない」という声が噴出し、追加開発コストが膨らむ
具体的な失敗事例として、ある製造業では、情シス部門が主導して生産管理システムを導入したものの、現場から「入力項目が多すぎる」「画面遷移が複雑」という不満が続出。結局、現場ではシステムを使わずに従来のExcel管理に戻ってしまい、数百万円の投資が無駄になったケースがあります。
このような失敗を防ぐためには、前述の通り、プロジェクトの初期段階から現場のキーマンを巻き込むことが不可欠です。「現場が忙しいから」という理由で参加を見送ると、後になってより大きなコストを払うことになります。
「あれもこれも」と機能を盛り込みすぎる
二つ目の失敗パターンは、「せっかく作るなら」と機能を盛り込みすぎてしまうケースです。
システム開発の検討段階では、各部門から様々な要望が上がってきます。「在庫管理もしたい」「原価計算も自動化したい」「営業が外出先から納期確認できるようにしたい」「経営ダッシュボードも欲しい」…。これらすべてを実現しようとすると、以下のような問題が発生します。
- 開発費用が膨張する:機能が増えれば増えるほど、開発工数は増加。当初500万円の予算が1,500万円に膨らむことも珍しくない
- 開発期間が延びる:半年で導入予定だったものが、1年、1年半と伸びていく。その間、業務改善は進まない
- システムが複雑化する:機能が多いほど操作は複雑になり、現場での定着が困難になる
- 保守コストが増大する:機能が多ければ、それだけ不具合のリスクも増え、メンテナンスコストも上がる
この失敗パターンに陥りやすい心理として、「一度に作った方が安くなるのでは」という考えがあります。しかし、実際には逆です。最初から大きく作ると、「結局使わない機能」にも開発費用を払うことになり、かえって費用対効果が悪化します。
また、「せっかくの機会だから」という発想も危険です。システム開発は一度作ったら終わりではなく、継続的に改善・拡張していくものです。最初のリリースで完璧を目指す必要はありません。
機能を絞る勇気を持つこと。これが、プロジェクトを成功に導く重要なマインドセットです。
開発会社に丸投げし、業務フローの言語化を怠る
三つ目の失敗パターンは、「専門家に任せれば何とかなるだろう」と開発会社に丸投げしてしまうケースです。
確かに、システム開発の技術的な部分は開発会社の専門領域です。しかし、「自社の業務をどうシステム化するか」を決めるのは、発注者側の責任です。開発会社は製造業の専門家ではないため、自社の業務内容を詳細に伝えなければ、期待通りのシステムは作れません。
丸投げによって起こりがちな問題は以下の通りです。
- 認識のズレが生じる:「こういうものを作ってくれると思っていた」「言われた通りに作った」という双方の主張が食い違う
- 手戻りが発生する:完成間近になって「これでは使えない」と気づき、大幅な作り直しが必要になる
- 追加費用が発生する:当初の見積もりに含まれていない要件が後から発覚し、追加開発費用を請求される
- プロジェクトが長期化する:要件が固まらないまま開発が進み、何度も仕様変更が発生してスケジュールが遅延する
発注者側でやるべき準備として、最低限以下の情報を言語化しておくことをおすすめします。
- 現状の業務フロー:どの部門が、どのタイミングで、何をしているか
- 課題と優先順位:何が問題で、どれが最も解決したい課題か
- システムに期待する効果:導入後にどうなっていたいか
- 既存システムとの関係:連携が必要なシステム、置き換えるシステムは何か
- 利用者と利用シーン:誰が、いつ、どこで、どんな状況で使うか
これらの情報が整理されていれば、開発会社とのコミュニケーションがスムーズになり、認識のズレを最小限に抑えることができます。開発会社は「作る専門家」、発注者は「業務の専門家」として、それぞれの役割を果たすことが成功の鍵です。
導入後の運用体制を決めていない
四つ目の失敗パターンは、システムの開発・導入にばかり意識が向き、「導入後の運用体制」を決めていないケースです。
生産管理システムは、導入して終わりではありません。日々のデータ入力、マスタ管理、不具合への対応、機能改善の要望取りまとめなど、継続的な運用業務が発生します。この運用体制が曖昧なままだと、以下のような問題が起こります。
- 「誰がメンテナンスするのか」が不明確:マスタデータの更新、新製品の登録など、誰が責任を持つのか決まっていない
- 改善要望が放置される:現場から「ここを直してほしい」という声が上がっても、対応する担当者がいない
- トラブル時に混乱する:システム障害が発生したとき、誰が開発会社に連絡し、現場に状況を伝えるのか決まっていない
- データの品質が劣化する:入力ルールが徹底されず、誤ったデータや不完全なデータが蓄積されていく
導入前に決めておくべき運用体制の項目は以下の通りです。
| 項目 | 決めておくべき内容 |
|---|---|
| システム管理者 | 誰がシステム全体の管理責任を持つか(通常は情シス部門または生産管理部門) |
| マスタ管理担当 | 製品マスタ、工程マスタなどの登録・更新は誰が行うか |
| ヘルプデスク | 現場からの問い合わせは誰が対応するか |
| 改善要望の窓口 | 機能追加や改修の要望は誰が取りまとめるか |
| 開発会社との窓口 | 保守契約に基づく問い合わせは誰が行うか |
| 定期的な振り返り | 運用状況を確認し、改善点を洗い出す会議体をどう設けるか |
特に中小企業では、専任のシステム担当者を置くことが難しい場合もあるでしょう。その場合でも、「誰が責任を持つか」だけは明確にしておくことが重要です。責任者が不在のまま運用を始めると、システムは徐々に放置され、いつの間にか使われなくなってしまいます。
また、開発会社の保守サービスをどこまで活用するかも事前に検討しておきましょう。社内リソースが限られている場合は、保守サービスを手厚くすることで、運用負荷を軽減できます。
生産管理システム開発に関するよくある質問
最後に、生産管理システムの開発に関して、よくいただく質問とその回答をまとめました。導入を検討する際の参考にしてください。
Q1. 生産管理システムの開発費用を抑える方法はありますか?
生産管理システムの開発費用を抑えるためには、いくつかの有効なアプローチがあります。
①機能を絞り込む
最も効果的な方法は、最初に実装する機能を必要最低限に絞ることです。「あれもこれも」と欲張らず、本当に解決すべき課題に対応する機能だけを優先的に開発しましょう。前述の通り、最初は3つ程度の機能に絞ることをおすすめします。「あったら便利」な機能は、運用開始後に本当に必要かどうかを見極めてから追加しても遅くありません。
②段階的に開発する
一度にすべてを開発するのではなく、フェーズを分けて段階的に開発・リリースする方法も有効です。第1フェーズで最重要機能を導入し、効果を確認しながら第2フェーズ、第3フェーズと拡張していきます。この方法であれば、初期投資を抑えながら、投資対効果を確認しつつ進めることができます。
③パッケージ+カスタマイズを検討する
フルスクラッチ開発にこだわらず、既存のパッケージ製品をベースにカスタマイズする方法も検討しましょう。パッケージの標準機能で対応できる部分は活用し、自社固有の要件だけを追加開発することで、開発費用を1/2〜1/3程度に抑えられる可能性があります。
④補助金・助成金を活用する
IT導入補助金をはじめとする各種補助金・助成金を活用することで、実質的な負担を軽減できます。IT導入補助金では、条件によって導入費用の1/2〜3/4が補助される場合があります。申請には一定の準備期間が必要なため、早めに情報収集を始めることをおすすめします。
Q2. 生産管理システムの開発期間を短くするコツは?
開発期間を短縮するためには、以下の3つのポイントが重要です。
①要件を事前に明確化する
開発期間が延びる最大の原因は、「要件が固まらない」「途中で要件が変わる」ことです。開発を始める前に、現状の業務フロー、課題、必要な機能を可能な限り言語化しておきましょう。開発会社との打ち合わせもスムーズに進み、手戻りを最小限に抑えられます。本記事で紹介した5W1Hのフレームワークを活用して、課題を整理することをおすすめします。
②意思決定者を明確にする
開発プロジェクトでは、画面デザインの承認、機能の優先順位の決定、予算の調整など、様々な意思決定が必要になります。「誰が最終的な判断を下すのか」が曖昧だと、承認待ちで開発が止まってしまうことがあります。プロジェクト開始時に、意思決定者と承認プロセスを明確にしておきましょう。理想的には、プロジェクトオーナーとして経営層や部門長クラスが関与し、迅速な意思決定ができる体制を整えることが重要です。
③アジャイル開発を採用する
前述の通り、すべての機能を作り込んでからリリースするのではなく、最小限の機能で早期にリリースし、使いながら改善していくアジャイル的なアプローチを採用しましょう。この方法であれば、開発開始から3〜4ヶ月程度で最初のリリースを迎えることも可能です。完璧を目指さず、「まず使える状態にする」ことを優先する発想が、開発期間短縮の鍵となります。
Q3. 生産管理システムの開発はどこに相談すればいいですか?
生産管理システムの開発を相談する先としては、以下のような選択肢があります。
①システム開発会社マッチングサービス
自社に合った開発会社を探す最も効率的な方法は、マッチングサービスを活用することです。「発注ナビ」「システム幹事」「レディクル」などのサービスでは、要件を伝えると、条件に合った開発会社を紹介してもらえます。複数社から見積もりを取得することで、相場感の把握や比較検討がしやすくなります。相談自体は無料のサービスが多いため、まずは気軽に問い合わせてみることをおすすめします。
②製造業向けパッケージベンダー
製造業向けの生産管理パッケージを提供しているベンダーに直接相談する方法もあります。「TECHS」「FUSE」「鉄人くん」など、製造業に特化したパッケージ製品は、業界特有の要件を理解した上で設計されています。パッケージの機能で自社の要件をどこまでカバーできるか、カスタマイズの可能性と費用などを確認することで、開発方針を決める材料になります。
③地域の産業支援機関・商工会議所
中小企業の場合、地域の産業支援機関や商工会議所に相談するのも一つの選択肢です。IT導入の支援を行う専門家を紹介してもらえたり、補助金の情報を得られたりすることがあります。また、同じ地域の製造業がどのようなシステムを導入しているか、事例を紹介してもらえる場合もあります。無料で相談できる窓口が多いため、開発会社に連絡する前の情報収集として活用するのも良いでしょう。
▼生産管理システムの開発についてのご相談はこちら
Q4. パッケージから開発に切り替える判断基準は?
すでにパッケージ製品を利用している企業が、スクラッチ開発への切り替えを検討すべきタイミングには、いくつかの明確なサインがあります。
①カスタマイズ費用がパッケージ費用を大きく超えている
パッケージ製品に対するカスタマイズ要望が増え、カスタマイズ費用の総額がパッケージ本体の費用を超えている場合は、スクラッチ開発を検討すべきサインです。この状態は、パッケージの標準機能と自社の業務が大きく乖離していることを意味します。無理にパッケージに合わせ続けるよりも、自社専用のシステムを開発した方が長期的にはコスト効率が良くなる可能性があります。
②業務をパッケージに合わせるストレスが大きい
パッケージの標準機能に合わせるために、本来不要な作業が発生していたり、非効率な運用を強いられていたりする場合も注意が必要です。「システムのために余計な手間が増えた」という状況は、本来の導入目的である業務効率化に反しています。現場の不満が蓄積すると、システムが使われなくなるリスクも高まります。
③将来の拡張に対応できない
事業の成長に伴い、新たな機能や他システムとの連携が必要になったとき、パッケージでは対応できない、または対応に膨大な費用がかかる場合も、切り替えを検討するタイミングです。特に、基幹システム(ERP)や会計システムとの高度な連携、IoTデバイスからのデータ収集など、パッケージの想定範囲を超える要件が出てきた場合は、スクラッチ開発の方が柔軟に対応できます。
④ベンダーのサポートに不安がある
パッケージベンダーのサポート対応が遅い、機能改善の要望が反映されない、将来的なサービス継続に不安があるなどの場合も、自社でコントロールできるスクラッチ開発への移行を検討する理由になります。
ただし、切り替えにはデータ移行や再学習のコストが発生するため、「今すぐ切り替えるべきか」「もう少しパッケージで運用を続けるべきか」は慎重に判断する必要があります。複数の開発会社に相談し、費用対効果を比較検討した上で決定することをおすすめします。
Q5. 自作と外注、どちらを選ぶべきですか?
自作(Excel・Access・ノーコードツール)と外注(開発会社への委託)のどちらを選ぶべきかは、企業の規模、予算、社内リソース、求める機能レベルによって異なります。以下のフローチャートを参考に判断してください。
【自作が向いているケース】
- 従業員数が20名以下の小規模事業
- 予算が50万円以下
- 必要な機能が限定的(在庫管理のみ、工程管理のみなど)
- ExcelやAccessに詳しい担当者が社内にいる
- 外部システムとの連携が不要
- まずは試しにデジタル化を始めてみたい
【外注が向いているケース】
- 従業員数が50名以上、または複数拠点がある
- 予算が200万円以上確保できる
- 複数の機能を連携させた本格的な生産管理が必要
- 基幹システムや会計システムとの連携が必要
- セキュリティ要件が厳しい(取引先からの監査対応など)
- 社内にシステム開発の知見を持つ人材がいない
迷った場合は、まずは開発会社に相談だけしてみることをおすすめします。多くの開発会社は初回相談を無料で受け付けており、自社の状況を伝えれば、自作で十分か外注すべきかのアドバイスをもらえます。見積もりを取得することで、外注した場合の費用感も把握できます。
「相談したら断りにくい」と考える必要はありません。複数社に相談して比較検討することは、発注者として当然の行動です。むしろ、1社だけで決めてしまう方がリスクが高いと言えます。
また、最初は自作で始めて、事業の成長に合わせて外注に切り替えるという段階的なアプローチも有効です。自作で運用した経験があれば、「何が必要で何が不要か」が明確になり、外注時の要件定義もスムーズに進みます。
まとめ:”現場に合った”生産管理システムを開発することが成功の鍵
生産管理システムの開発は、製造業の業務効率化と競争力強化において非常に重要な取り組みです。しかし、「システムを導入すれば自動的に効率化できる」わけではありません。
成功の鍵は、「現場に合ったシステムを作ること」に尽きます。
そのためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 開発とパッケージ、自社に合った選択をする
- 費用相場を理解し、適切な予算を確保する
- 自作の限界を理解し、必要に応じて外注を検討する
- 開発会社は「製造業を理解しているか」で選ぶ
- 現場を巻き込み、小さく始めて改善を回す
- 失敗パターンを理解し、同じ轍を踏まない
本記事が、生産管理システムの開発を検討されている皆様の参考になれば幸いです。
当社Swoooは、ノーコード開発のリーディングカンパニーとして、製造業を含む様々な業界のシステム開発を支援してまいりました。生産管理システムの開発についても、ノーコード・ローコード技術を活用することで、従来の1/2〜1/3のコストと期間での開発が可能です。
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