「QCDの概念は理解したけれど、QCDSやQCDE、QCDSEとは何が違うの?」
「QCDの優先順位はどう付ければいいの?」
システム開発やプロジェクト管理に携わっていると、QCDやその派生語を耳にする機会は多いはずです。QCDとはプロジェクトを進めていくうえで欠かせない概念で、システム開発を成功させるためには、QCDの要素を取り入れることが不可欠です。
この記事では、QCD(品質・コスト・納期)の基本から、QCDS・QCDE・QCDF・QCDSEといった関連語・派生語の意味と違い、優先順位の付け方とメリット・デメリット、改善の手順、QCD向上のために改善すべき課題15選、QCDフレームワークの使い方までまとめて解説します。
執筆:Swooo編集部/監修:諸藤 哲耀(株式会社アイビス Swooo)
そもそもQCDとは?

QCDとは「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」のことです。それぞれの頭文字を取ってQCDと言います。
QCDは品質やコスト、納期を徹底管理しなければならない製造業の分野において、もともとは使われていました。昨今では製造業に限らずIT業界やすべての業界で不可欠な概念で、ビジネス用語として目にする機会が増えています。
この3つの要素のうちの一つでも欠けたり問題があったりした場合は、プロジェクトやビジネスにおいて成功するのは難しくなると言われています。
QCDは相互に影響し合う関係
QCDの概念を知るうえで重要なのは、3つそれぞれの要素がバラバラではなく、相互に影響しあう関係だということです。「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」の3つの要素について、バランスよくすべて向上するように改善していくことが重要です。
しかし3つの要素をバランスよく向上するのは難しく、一つの要素を向上させようとすると、他の要素が悪くなってしまうことがあります。例えば以下のような例が挙げられます。
- 商品開発において「品質」を重要視したところ、それだけ「コスト」が増大してしまう
- 「コスト」を抑えたところ、「品質」が下がってしまう
- 「納期」を重視するためにスピードを上げて開発したが「品質」が下がってしまった
このように品質、コスト、納期とQCDの3つの要素は常に影響しあう関係になっており、すべての要素をいかにバランスよく向上させていくかが、QCDを活用するポイントとなっています。
Quality「品質」は最優先させる事項
QCDは並んでいる順番に重要度が高くなっています。一番に重要視されるのは「Quality(品質)」で、その次に「Cost(コスト)」、最後に「Delivery(納期)」の順番で続きます。
顧客の満足度を最も高めてくれるのは、品質が良い製品です。そのため、システム開発においてのQCDは、「顧客が望んだ製品ができたか」を最優先に置きましょう。

どんなにコストが安くても、納期がきっちり守られたとしても、品質が劣っていたらすべて台無しです。
顧客が求めている品質を提供できなければ、顧客は離れていってしまうでしょう。
満足できる品質を開発できない場合は、他の業者との競争にも敗れてしまうというリスクも発生します。また品質が不良だとコストと納期にも悪影響を及ぼします。システム開発の場合、バグが発生してばかりのシステムを納品したら、低品質な製品を開発したとして自社にも顧客にも多大な不利益を被ります。
このように品質は最重要なので、実際の開発においてはまず品質を高めることを最優先するようにしましょう。
Cost「コスト」を抑えるためには
システム開発をする際にQCDにおいての「Cost(コスト)」とは、「どうやって費用を適正価格に抑えて、プロジェクトを進めていくか」ということに留意します。システム開発はもちろん、モノづくりの現場では必ず考慮されなければならない項目です。
システム開発の現場でコストが上昇する大きな原因となるのが、開発中に追加で発生する作業や修正の業務です。作業する工程が増えれば増えるほど人件費やシステム管理費などの費用もかさみます。予定していた金額より大幅に費用が掛かってしまった、という事態にも陥りかねません。
コストを抑えるためには、開発に入る前にクライアントとの意思の疎通を徹底し、プロジェクトに対してのお互いの認識をしっかり確認しましょう。途中で機能の追加や修正が入ると、どんどん価格が高騰していきます。最悪の場合は、開発の途中で最初からやり直しという事例もありますので、それを避けることで価格の上昇を抑えることが可能になります。
Delivery「納期」は計画どおりを目指す
QCDにおいての「納期」は、「計画していたとおりに製品ができたか」を目指します。QCDを念頭にシステム開発を進めていくと、品質を重視するあまりに開発がどんどん延びてしまい、納期が遅れてしまうという事態におちいることがあります。
また納期を重視するため、エンジニアを増やして納期を短くしようというケースがありますが、エンジニアが増えたからと言って納期が短くなるとはかぎりません。スキルが伴わないエンジニアの場合、そのフォローに時間とコストがかかりすぎて、思うようにプロジェクトが進まない場合もあります。納期を短縮したい場合は、エンジニアを増やすよりも、スキルの高いエンジニアを始めからアサインすべきでしょう。

納期は早ければ早い方が良いというわけではなく、早すぎる納品は欠陥部分があるのではないか、工程を手抜きしたのではないかと疑われることもありえます。
納期はあくまでも予定したとおりに納品した方が良いでしょう。
コストと納期は顧客の条件によって柔軟に対応する
QCDでは品質が最も優先されますが、コストと納期については顧客の要望や条件によって柔軟に対応しましょう。
何よりも品質確保を最優先し、コストと納期については顧客と綿密に打ち合わせをし、QCDが顧客にとって最も良い形で発揮されるように調整していくことが大切です。
QCDの関連語・派生語一覧
開発やプロジェクトの現場では、業界ごとの環境や業務に合わせて作業を進める必要があります。そのため、QCDの3つの要素、品質・コスト・納期だけでは問題をカバーできない場合に対応し、QCDSやQCDEなどの派生語ができました。
例えば安全や環境が最優先される建設業界では、QCDにSafety(安全)とEnvironment(環境)を付け足したQCDSEという派生語が生まれています。またサービス業ではQCDにFlexibility(柔軟性)をつけ足したQCDFなど、いろいろな派生語や関連語ができました。代表的な派生語と関連語を以下の表にまとめました。
| 名称 | 追加要素 | 主な意味・使われる場面 |
|---|---|---|
| QCDS | S:Service(サービス) | 品質・コスト・納期に加え、顧客へのサービスがきちんとされているかという視点を加えたもの |
| QCDE | E:Environment(環境) | 施工現場や職場の環境を考慮し、作業員が働きやすい環境を整える視点。環境への社会的責任にも対応する |
| QCDF | F:Flexibility(柔軟性) | 製造業やサービス業で、製品やサービスの移り変わりが激しい業界において柔軟な対応を重視する |
| QCDSE | S:Safety/E:Environment | 建設業界など、作業員の安全確保と環境への配慮が重要な場面。ITシステムではセキュリティとシステム環境を指す |
| QCDSM | S:Safety/M:Moral(やる気) | 従業員のやる気をいかに引き出すかに着目し、経営管理に使われることが多い |
ここからは、QCDに関係のある派生語と関連語について一つずつ解説していきます。
QCDSとは
QCDSとは品質、コスト、納期の3要素に「Service(サービス)」を付け加えたものです。品質が良いか、価格は適正な価格か、納期は守られているかということに、顧客へのサービスがきちんとされているかという視点が入ります。
QCDSも品質、コスト、納期とサービスの4つの要素をバランスよく向上させて、製品の開発を進めていくことが大切になってきます。サービスと言っても漠然としていますが、顧客の要望を汲み取って、何が相手に喜ばれるのかを考慮していくことが必要でしょう。例えばすぐに修理ができるように体制を整えたり、問い合わせができるようにコールセンターを設置したりといった具合です。
QCDEとは
QCDEとは品質、コスト、納期の3要素に「Environment(環境)」を加えたものです。特に施工管理の場面で使われることが多く、施工現場の環境を考慮することで、作業員が働きやすくなる環境を作ります。職場環境を整えることで、よりスムーズな作業が可能になります。
具体的な例をあげると、地球温暖化対策として製造設備の省エネ化を図ったり、製造工程において改革をしたり、クリーンエネルギーを使用したりという事例です。時代のニーズをとらえて、それを自社の活動に取り入れていくことは、他社との差別化を図るうえでこれからますます不可欠になっていくでしょう。
環境活動に配慮する姿勢は、顧客からの信頼性の獲得にもつながります。QCDをすでに取り入れているが、自社ならではの強みを生かしたい場合にQCDEの要素を取り入れた活動を意識してみましょう。
なお、後述するQCDSEの「E」も同じEnvironmentですが、ITシステムの文脈ではハードウェアやネットワークなどの「システム環境」を指す点が異なります。詳しくはITシステムのQCDSEの意味で解説します。
QCDFとは
QCDFとはQCDの3つの要素に「Flexibility(柔軟性)」を加えたものです。製造業やサービス業で主に使われていますが、それらの業界では製品やサービスの移り変わりが激しいことから、「Flexibility(柔軟性)」という視点が加えられ、柔軟に対応できるようにしています。
システム開発においても、グローバル化やITの進化で、技術の移り変わりが激しい分野であることから、QCDFの要素は必要不可欠となるでしょう。例をあげると顧客のニーズに柔軟に対応できるようにする、また企業の組織などに柔軟性を持たせるなど、その時々の状況を汲んで臨機応変に動けることが大切です。
顧客ファーストを考慮した場合、柔軟性は避けては通れない要素でしょう。品質、コスト、納期を考慮しつつ、柔軟性を加えることでグローバル化にも対応していくことができます。
QC7つ道具
QC7つ道具とは、QCDを実際の業務に落とし込むために必要な7つのツールのことです。具体的には、仕事を通して得た品質特性データを解析し、そこから問題解決を図ります。
システム開発や業務を成功させるためにQCDの概念は重要ですが、どうやって成功するのかという工程の部分まではカバーしていません。よってQC7つ道具を使うことにより、実際の業務が明確化されます。QC7つ道具は次の7つを指します。
- パレート図
- 特性要因図
- グラフ(管理図を含む)
- チェックシート
- ヒストグラム
- 散布図
- 層別
PMBOK
PMBOKはQCDにおいて、実際に成果を出すために知っておくべき知識がまとめられた参考書です。PMBOKは、プロジェクトマネジメントの知識において世界標準となっており、4年ごとに改定版が出版されています。プロジェクトにおける知識を10のエリアに分け、また5つのプロセスに分けて考え方や心構えを説いています。
プロジェクトを初めて手掛ける方や、実際の業務において問題や分からないことが出てきた時には、参考にしたい1冊ですので、手元に置いておくとよいでしょう。
ITシステムのQCDSEとは?
ITシステムにおけるQCDSEとは、施工管理に欠かせない重要な5つの要素を並べた考え方です。製造業や建設業などで主に使われますが、ITシステムにおいても利用されています。
QCDSEの語源は?
ITシステムにおけるQCDSEとは、施工管理で重要な以下5つの要素の頭文字をとった言葉です。
- Quality…品質
- Cost…コスト
- Delivery…工程
- Safety…セキュリティの安全
- Environment…システム環境
製造業の管理でよく使われているフレームワークであるため、聞いたことがある人もいるかもしれません。QCDSEにおいては品質が最重要とされています。そのため、まずはQualityを先頭に並べています。
製造業のQCDSEとの違いは?
QCDSEのなかでも「QCD」に関しては、製造業とITシステムでそれほど意味が変わりません。しかし、残りの「SE」は業種によって使用する単語と意味が異なるので、それぞれ確認しましょう。
| 項目 | ITシステムでのSEの意味 | 製造業でのSEの意味 |
|---|---|---|
| Safety | セキュリティの安全 | 安全 |
| Environment | システム環境 | 環境 |
ITシステムにおけるSafetyはセキュリティの安全性を表します。納品物が企業の秘匿性に関わるITシステムにおいて、セキュリティの安全性は大切です。一方で、製造業では安全を表す意味を採用していて、業務上の安全性を大切にしています。
また、製造業のEnvironmentでは近隣や周囲の環境に配慮する一方で、ITシステムではハードウェアやネットワークなどのシステム環境の管理を意味します。
ITシステムのQCDSEの意味

製造業とのQCDSEの違いを把握したところで、ITシステムにおけるQCDSEの意味を詳しく理解していきましょう。ITシステムにおけるQCDSEの意味は以下の通りです。
Quality(品質)
プロジェクトを達成するために大切なのは、成果物の「Quality(品質)」です。そのため、成果物への品質マネジメントは必須といえるでしょう。プロジェクトの規模によって品質マネジメントの作業は異なりますが、小規模プロジェクトの場合は品質を確認するだけで十分とされています。
| 品質マネジメント方法 | 特徴 |
|---|---|
| 品質計画 | 品質を保証し改善していくための責任や計画、経営資源を明確にする/品質マネジメント計画書に詳細を記載する |
| 品質保証 | 品質マネジメント計画書通りに進んでいるか検査する |
| 品質管理 | 品質マネジメント計画書に沿って問題点を洗い出し、解決へと導く |
Cost(コスト)
Quality(品質)の次はCost(コスト)です。プロジェクトの規模が大きいとコストも大幅にあがるので、正確なコストマネジメントが求められます。コストマネジメントは下記の流れでおこなうのが一般的です。
- 管理計画コスト…管理を重点においたコストマネジメント計画書を作成
- 見積もりや予算設定…プロジェクトにかかる予算を設定し、見積もりを精算
Delivery(工程)
ITシステムにおけるDelivery(工程)は、開発期間と利用期間の2点を意味します。開発期間とは主に納期のことを表し、特に納期設定がシビアなITシステム業界では大切なマネジメントです。
また、ITシステムの利用期間中に小さい改良が追加される可能性があるため、システムリリース後の管理も大切といわれています。ユーザー目線で見るとシステムの寿命管理に加えて、端末データの管理やアップデートも大切です。
Safety(セキュリティの安全)
ITシステムにおけるSafetyは「セキュリティの安全性」を意味します。一般的なコンピューターセキュリティだけでなく、クラウドならネットワークセキュリティも大切です。セキュリティ対策を実施しなければ秘匿性の高い情報が流出してしまい、企業としての信頼を失いかねません。
また、ITシステムは目に見えないサービスでもあるため、セキュリティの安全性を確保する視点は大切といわれています。
Environment(システム環境)
ITシステムにおけるEnvironmentは「システム環境」という意味です。システムを構築するハードウェアやネットワークなどの土台部分に該当します。システム環境は数年単位から数ヶ月単位での更新が必要なため、定期的な更新作業が必要です。
メモリの追加で部分的な拡張に対応していて、クラウドを利用すれば設定画面から本体の強化も可能です。
ITシステムのQCDSEの優先順位
QCDSEで最も大切な項目はQuality(品質)です。企業ごとに優先順位が異なるものの、一般的には「品質」を優先することは覚えておきましょう。
最優先はQuality(品質)
ITシステムにおけるQCDSEで最も重視されるのは「Quality(品質)」です。いくら価格が安くて納品対応が速くても、顧客が望む品質でなければ意味がありません。
逆に、高価格かつ納品が遅くても、高品質であれば顧客の選択肢に加わる可能性があります。また、品質が良くないとそもそも購入の検討段階にたどり着かないため、成果物の品質には細心の注意を払ってください。
その他を優先すべき状況は?
ITシステムにおけるQCDSEでは「Quality(品質)」が最優先ですが、状況によってはその他の要素を優先すべきです。それぞれの優先すべき状況を紹介します。
- Cost(コスト)
顧客の資金が乏しい場合。支払う資金が存在しなければ利益が生まれないため、コストを優先してもらう - Delivery(納期)
導入を急いでいる顧客。ある程度の品質を保証したうえで成果物を納品する - Safety(安全性)
企業秘密や秘匿文書を管理するシステム。ウイルス対策・Webセキュリティ診断・パスワードやログの管理・物理的なバックアップなどの対策を施す - Environment(環境)
企業の体制が旧式である場合。ハードウェアやインターネット環境が古いと最新のITシステムに対応できないため、閑散期のタイミングで環境を切り替える
QCDの優先順位の付け方とメリット・デメリット
QCD(品質・コスト・納期)の優先順位は、企業の状況や市場環境により変わることがあります。一度決めた優先順位は常に一定ではなく、市場環境や顧客のニーズ、企業の戦略などによって変動するものです。そのため、自社の状況を正確に把握し、適切な優先順位を設定する必要があります。
優先順位の付け方とトレードオフ
優先順位をつける際には、以下のように1つ1つの項目を比較して検討することが大切です。
- CよりQを優先する考え方
品質を高めるために開発コストを上げても良い - DよりCを優先する場合
人件費を抑えるために納期をやや緩く設定しても良い - DよりQを優先する考え方
より良い品質の製品・サービスを提供するために、納期を少し遅らせても良い
QCDの各要素は互いにトレードオフの関係にあります。一つの要素を極端に高めようとすると、他の要素が悪化する可能性があります。例えば、品質を追求しすぎるとコストが増大したり納期が遅れたりします。逆に、コストを極端に抑えようとすると品質が落ちたり納期が遅れたりします。このトレードオフの関係を理解し、極端に一方に偏らないようにバランスを取ることが重要です。
Q(品質)を優先するメリット・デメリット
品質を優先する最大のメリットは「ブランディングを保てること」です。品質を重視することで、企業の信頼感向上に繋がるだけでなく、他社との差別化を図れるでしょう。取引先が求めているのは「ニーズにあった商品・サービスかどうか」であり、品質が最低限担保された状態が取引先にとっての最低限のラインです。
一方、品質を優先する際のデメリットは「会社の経営状況に影響すること」です。品質を追い求めるあまり収支のバランスを取れなくなってしまっては、会社の存続すら危うくなってしまいます。最優先すべき事項が品質であったとしても、コストと納期との兼ね合い、つまりはバランスを取ることが何よりも大切です。
C(コスト)を優先するメリット・デメリット
コストを優先する最大のメリットは「失敗した時の損失が抑えられる点」です。コストをかけて製品やサービスを開発しても、想定した売り上げとならないケースもあります。コストを抑えて開発した場合、万が一失敗した場合の損失が最小限になることがメリットです。
一方、コストを優先する際のデメリットは「大きなチャレンジができないこと」です。コストをかければかけるほど、良いリソースが集まりやすくなり、会社の利益が増加する確率も上がります。常にコストを優先するのではなく、会社の経営状況によって優先順位を変えていきましょう。
D(納期)を優先するメリット・デメリット
納期を優先する最大のメリットは「検証を早められる点」です。開発のスピードを早くすることで検証の時間を多く割け、結果として商品・サービスの問題点や改善点を早く見つけられ、品質の向上につながります。
一方、納期を優先する際のデメリットは「コストや人材を圧迫してしまうこと」です。計画に対してあまりにも短期である不適切な納期に間に合わせようとすると、想定以上の人材を投入するか外注を活用するなどの対応が必要となり、人件費や外注費などのコストがかさんでしまいます。
QCDの目標例
QCDの目標設定は、プロジェクトや業務の性質により大きく変わる可能性があります。一般的な目標の例を以下に示します。
| 要素 | 目標の例 |
|---|---|
| 品質目標 | バグやエラーの数を特定の数値以下に抑える/顧客満足度を特定のパーセンテージ以上にする/返品やクレームの数を特定の数値以下に抑える |
| コスト目標 | 材料費や人件費などの直接費用を特定の数値以下に抑える/設備の維持費や管理費などの間接費用を特定の数値以下に抑える/利益率を特定のパーセンテージ以上にする |
| 納期目標 | 製品の製造時間を特定の時間以下にする/サービスの提供時間を特定の時間以下にする/注文から配送までの時間を特定の時間以下にする |
これらの目標は互いに影響を及ぼすため、バランスを考えながら設定することが重要です。
QCDを達成するための管理ポイント

QCDについての意味や概念が分かったところで、実際にそれらを仕事で活かせることが大切です。概念だけ知っていても業績を上げることはできません。QCDを達成するためには、作業や工程に合わせて作業や業務を管理することが必要になります。また開発やプロジェクトの目標が曖昧だとQCDの手法が生かされなくなります。ここからは、QCDを達成するために欠かせない管理について解説していきます。
成果物のスコープを管理する
成果物スコープとは、プロジェクトを始める前に成果物を設定し、管理していく手法です。開発において「何」を作るのかという点を明確にし、管理していきます。例をあげると基本設計をする場合、最終目的である成果物は「設計書」という具合です。
このような形で管理をしていくと、成果物として実際に目に見える形でプロジェクトを確認しやすいため、プロジェクト全体の達成度合いが分かりやすい点があげられます。また目標を明確に決めていくので、モチベーションを維持するのに役立ちます。
作業スコープを実施する
作業スコープは「プロジェクトスコープ」とも呼ばれています。作業スコープは、プロジェクトで行うべき作業範囲を明確にして、作業を進めていく手法です。
この手法を取ると、どこまで開発すればよいのかが明確に示されるため、QCDにおいてはコストを適切な価格でコントロールしやすい、また納期を予測しやすいといった利点があります。例をあげると、基本設計をする場合、「データベースの設計の洗い出し」という作業を明確にしてからプロジェクトを進めていきます。
各工程では最初にどんな作業をするのかを明確にしておくことが大切です。この部分があいまいだと作業が進まなくなります。
チーム、コミュニケーション、リスクの管理をする
チーム管理は、チームを結成して管理していくやり方です。この手法はメンバーのモチベーションを上げて現場の士気を高める効果があります。チーム結成においてメンバーのスキルや適性をしっかり把握することが求められます。
コミュニケーション管理とはプロジェクトに関する様々な情報を的確に把握し、共有、伝達をしていくことです。コミュニケーション管理をすることで、メンバーのモチベーションやスキルアップ、業務の円滑化を図ることができます。
リスク管理も重要な項目の一つです。プロジェクトにおけるリスクを想定し、予防に努めることでQCDの向上につながります。リスクが起きた場合にどのようなリスクが発生するのか、その規模や解決策をあらかじめシミュレーションすることはプロジェクトの成功に欠かせません。
QCDSEを改善する手順とコツ
ここでは、ある企業で顧客データなどの情報管理システムを開発していると仮定して、QCDSE・QCDの改善方法を解説します。QCDを担保するにあたって最も重要なのは「バランスを取ること」です。以下の手順とコツを押さえて改善を進めましょう。
①現状把握・問題把握
まずは現状の計画とQCDSEの課題を把握しておき、議論で話せるようにしましょう。過去に施策をおこなっている場合はヒアリングを実施し、できる範囲を確認しておくのが大切です。情報管理システムを開発する場合は、以下のような課題が考えられます。
| QCDSEの各項目 | 課題例 |
|---|---|
| Quality(品質) | UIが複雑で使いにくい |
| Cost(コスト) | 値段が高い |
| Delivery(納期) | 求められる品質レベルに対して作業期間が短い |
| Safety(安全性) | セキュリティが脆弱でウイルス感染を許している |
| Environment(環境) | ハードウェアやインターネット環境が古い |
問題を把握する上で重要なのが、メンバーでその情報を共有し合うことです。仕事は1人ですべてを賄うのではなく、チームで行っていくものだからです。個人単位で問題点を把握できたとしても、チーム全体で対策しなければその効果は発揮されません。
②方向性の確認
情報共有を行なったとしても、個々人の解釈の仕方に差異が生じる可能性があるため、指針となる方向性を決めましょう。方向性を決める際のポイントは2つあります。1つ目は方向性をシンプルにすること、2つ目はできるだけ全員が納得した方向性にすることです。少なくとも半数以上の合意があると、メンバーのモチベーションを保ちやすくなります。
③具体的な計画の策定・施策立案
QCDSEの課題が浮き彫りになったら、決定した方向性を軸により具体的な計画へと落とし込んでいきます。計画を立てる目的はやるべきタスクに集中することです。あらかじめ道筋を立て、後はその道を進むだけにしましょう。計画を立てる際のポイントは次の3つです。
- 具体的であること
何を、いつ、どこで、誰が、どのようにしてタスクを実行するのか決める - 計測可能な目標を作る
今ゴールに対してどのくらいの位置にいるのか、予定より遅れているのか早いのか判断できるようにする - 期限が明確であること
納期以外にも各タスクに期限を設け、時間の無駄遣いを防ぐ
先ほどの情報管理システムのQCDSEの課題を例とすると、以下のような対応策が考えられます。
| QCDSEの各項目 | 対応策 |
|---|---|
| Quality(品質) | ヒアリングをもとにUIの改善 |
| Cost(コスト) | 市場調査をもとにプライスラインを設定し、価格を選択 |
| Delivery(納期) | 設定したプライスラインをもとに、価格に合わせた納期を設定 |
| Safety(安全性) | 総務省が掲げる「国民のための情報セキュリティサイト」を参考に、セキュリティ対策を実施 |
| Environment(環境) | ハードウェアやインターネット環境を最新版に反映 |
④施策実行・計画の実行
立案した施策をそれぞれ実行しましょう。考えることと実行することを同時に行なっていると作業効率が悪くなります。あらかじめ道筋を立てた計画に沿って、決めたとおりに実行していくことが大切です。
⑤評価・検証
計画を実行することによって、問題点は解決できたのか、解決できた場合は何が良かったのか、悪かったのか、またどうすればより改善できるのか判断します。ここでの評価が正確であればあるほど、QCDを担保できます。作業を担当した本人だけでなく、第三者にも評価してもらいましょう。
改善するときの注意点3つ
- 改善は定期的に行う
長期的な業務ほどゴールに対して真っ直ぐ進んでいるか分からなくなりやすい。改善とまではいかなくとも、現状の把握は定期的に実施する - QCDの優先順位を変える際は慎重に
優先順位を変更した際にどのようなリスクがあるのか考える。リスクが許容範囲を超えていれば、他の要素を削りバランスを取る - 納期が短い場合は問題把握と対策の実行に注力する
納期が短い場合は5ステップすべての実施が難しい。考える時間を増やすよりも手を動かした方が効率的なケースもあるが、問題把握とその対策の実行は必ず行う
QCD向上のために改善すべき課題15選
QCDを向上させるにあたって、課題を解決する観点はとても重要です。なぜなら、QCDは深く関連し合っているため、一項目が伸びていたとしても、他の項目のバランスが取れなくなってしまうからです。良い項目を伸ばすよりも課題から解決した方が効果的なので、ここでは品質・コスト・納期それぞれの観点で改善すべき課題を15個紹介します。
品質向上へ向けて解決すべき課題5選
- 指標が可視化されていない
指標が明確化されていなければ品質が良いのか悪いのかすら判断がつかない。チェックシートなどで品質を測れる物差しを決める。ただしチェック項目が多くなりすぎないよう注意する - 課題を洗い出す工程を行なっていない
品質を低下させている要因を特定できなければ対処のしようがない。根本的な原因を特定できなければ品質の低下は再発し続ける - 実践に移せていない
対策を立てても実行に移さなければ意味がない。実行に移せない主な原因は不適切な納期設定にある - 品質を担保する重要性を理解できていない
品質向上は次の受注につなげるために重要。期待に応えるだけでなく、それを超えていくことで競合との差別化が図れる - 全体像を把握できていない
システム開発はチームで実施するもの。自分のタスクだけでなく周りのメンバーのタスクを観察し、繋がりを理解して協力する
コスト管理向上へ向けて解決すべき課題5選
- 現状のコストを把握できていない
今手元にいくら残っているのかによって今後の計画は変わる。何にいくら使ったのかを把握する - コスト構成を把握できていない
自分の工程以外でいくらコストがかかっているのか確認する。余裕をもたせられる部分がないか把握できる - 目標値に対する具体的な計画が立てられていない
適切なコスト管理には目標設定とそれを達成するための具体的な計画が必要 - コスト削減のメリットを理解できていない
コスト削減は会社の価値向上につながる。金銭的な余裕は新しい技術や設備への投資の原資になる - 管理方法がバラバラ
管理方法が異なるとデータの一元管理がしにくい。テンプレートを用意して共通化を図る
納期管理向上へ向けて解決すべき課題5選
- 可視化できていない
目に見えない時間を明確化する。残り時間や各工程の所要時間を把握しやすくなる - 自分の納期しか把握できていない
時間というリソースをメンバー間で上手く利用する必要がある。ゴールから逆算して時間配分を考える - 不適切な納期設定
長すぎる納期は無駄なコスト(主に人件費)を生み、短すぎる納期は品質低下を招く - 各リードタイムを把握できていない
リードタイム(所要時間)はリソースの最適な配分の指標となる - 予備期間を設けていない
システム開発は不確定な要素が多い。エラー修正などに備えて予備期間を確保する
QCDフレームワークの使い方
QCDフレームワークとは、製造業の生産管理における業務改善に対して開発された、「品質」「コスト」「納期」の3項目を重視する考え方です。うまく利用することで品質の向上やコスト削減につながります。ここでは活用するメリット、使い方、効果を高めるコツを紹介します。
QCDフレームワークを活用するメリット4つ

- 品質が向上する
QCDフレームワークでは品質を最優先に考えるため、これに則って開発すれば品質が向上する - コスト削減できる
品質管理を徹底すると追加や修正の依頼を減らせる。過剰に高品質にする必要はなく、必要に応じてコストを削減できる - 業務の無駄が省ける
業務改善の一環のため、業務における無駄が省け、従業員の生産性が向上する - 労働環境が改善される
1つの業務にかける時間が減り、残業を減らせる。日頃の働きぶりが良くなる
QCDフレームワークの使い方3つ
- 優先順位をつける
QCDフレームワークを使うことで、顧客に適切な優先順位を決定できる。適切なサービスの提供につながり、成果を上げやすくなる - 組織課題を明確にし業務を改善する
Q・C・Dそれぞれの課題を洗い出すと、質・費用・納期というシンプルな3つに課題が分けられ、意見が出しやすくなる - 部門を横断した共通の目標を立てる
部門ごとに異なる目標を持っていても、QCDフレームワークを用いることで互いの認識を擦り合わせやすくなる
QCDフレームワークの効果を高めるコツ2つ
1つ目は目標設定を明確にすることです。どの目標を達成するためにQCDフレームワークを用いるのかを決めておかないと、あまり効果は期待できません。決めた目標に対しての優先事項を決めたり業務改善がなされたりするため、目標設定を明確にすることは非常に大切です。
2つ目は「PMBOK」「QC7つ道具」と一緒に使うことです。QCDフレームワークはツールであり、目標を達成するためのプロセスがわかりません。プロセスに重きを置いたPMBOK(プロジェクトマネジメントのノウハウをまとめた知識)を併用すると、目標設定だけでなくそのプロセスにまで目を向けられます。PMBOKで壁にぶつかった際は、QC7つ道具を使って「問題の発見」「問題の原因の把握」「問題が解決したかの確認」を明確にできます。
システム開発の発注とQCD管理
QCDは開発する側だけの概念ではありません。システム開発を発注する側にとっても、品質・コスト・納期のどれを優先するかを開発会社と擦り合わせておくことが、プロジェクト成功の土台になります。開発に入る前にお互いの認識を確認しておくことで、途中の仕様変更によるコスト増や納期遅延を防ぎやすくなります。
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システム開発にかかる費用感を知りたい方は「アプリ開発の費用相場」もあわせてご覧ください。
QCDに関するよくある質問
QCDEとは何ですか?
QCDEとは、品質・コスト・納期のQCDに「Environment(環境)」を加えた派生語です。特に施工管理の場面で使われることが多く、作業員が働きやすい環境づくりや、企業の環境への配慮を重視する考え方です。なお、ITシステムのQCDSEにおけるEnvironmentは、ハードウェアやネットワークなどの「システム環境」を指します。詳しくは「QCDEとは」で解説しています。
QCDとQCDSEの違いは何ですか?
QCDSEは、QCD(品質・コスト・納期)にSafetyとEnvironmentの2要素を加えたものです。建設業界では作業員の安全と周囲の環境への配慮を、ITシステムではセキュリティの安全性とシステム環境の管理を意味します。
QCDSとQCDSEはどう違いますか?
QCDSの「S」はService(サービス)で、顧客へのサービスがきちんとされているかという視点を加えたものです。一方、QCDSEの「S」はSafety(安全)を指し、さらにEnvironment(環境)が加わります。同じ「S」でも指す内容が異なる点に注意しましょう。
QCDの優先順位で最も重視すべきなのはどれですか?
一般的にはQuality(品質)が最優先です。どんなにコストが安く納期が守られても、顧客が望む品質でなければ意味がないためです。ただし、予算が固定されている場合はコストを、導入を急ぐ場合は納期を優先するなど、顧客の状況によって柔軟に調整します。詳しくは「QCDの優先順位の付け方とメリット・デメリット」をご覧ください。
QCDSMとは何ですか?
QCDSMとは、QCDにSafety(安全)とMoral(やる気)を加えた派生語です。従業員のやる気をいかに引き出すかに着目した考え方で、経営管理に使われることが多い言葉です。
まとめ:QCDは目的ではなく、手段である

QCD・QCDSEとは、システム開発やプロジェクトを成功させるための概念です。QCDは目的ではなく手段であり、QCDの概念である「高品質でコストがかからず納期に遅れない」ということを念頭に、開発を進めていくことが大切です。
業界や現場に応じてQCDS・QCDE・QCDF・QCDSEなどの派生語を使い分け、優先順位のトレードオフを理解したうえでバランスを取ることが、QCDを活用する最大のポイントです。
システム開発に限らず、すべてのモノづくりの現場で適用されるQCDの考え方を自社のプロジェクトに取り込むことで、より良い開発を目指すことができます。