システム開発における生産性とは?生産性を定量化するための計算方法も紹介
日本は各国と比べても労働生産性が低いことは明確であるため、他国に負けないためにも業務の効率化が急務です。
そこで、今回の記事ではシステム開発における生産性を紹介するとともに、生産性を高めるための方法を5つ紹介します。
生産性を可視化するための計算式も紹介するので、自社における業務効率改善のためにも参考にしてみてください。
目次
そもそもシステム開発における生産性とは?
そもそもシステム開発における生産性とはどのようなものなのでしょうか?生産性とは以下2つの概念をもとに導き出されます。
- 付加価値生産性
- 物的生産性
付加価値生産性
付加価値生産性とは売上高から費用(減価償却費を含む)を差し引いた、売上総利益のことです。そもそもシステム開発とは、複数のエンジニアの労働力があってこそ成り立ちます。
エンジニアが働く際には給料が発生するので、働けば働くほどに費用が発生するということです。そのため、付加価値生産性を高めるためには、1人あたりの業務効率をできるだけ高めなければいけません。
物的生産性
人などを基準として考えるのが付加価値生産性であれば、定量的な数値をもとに生産性を考えるのが物的生産性です。どれだけの人数でシステム開発したのかを表します。
そのため、物的生産性を高めるためには、できるだけ少ない人数でシステム開発しなければいけません。
なぜシステム開発で生産性が求められるのか?
生産性の種類を把握したところで、なぜシステム開発において生産性が求められるのでしょうか?
ここでは、システム開発で生産性が求められる理由について紹介します。
- そもそもの労働人口の低下
- 深刻なエンジニア不足
- ライフワークバランスという考えが浸透
そもそもの労働人口の低下
システム開発の分野において生産性が求められる理由として、そもそも日本の労働人口が低下していることがあげられます。
総務省統計局が発表している「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の概要」によると、日本の労働人口は2020年から1年間で8万人も減少しました。「出典元:労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の概要」
労働人口が低下しているため、結果的にシステム開発における労働人口も減りやすいです。
また、人口に関しても減少の一途を辿っているので、労働生産性を高めることに注目している企業も少なくありません。特にIT分野は今後も発展していく分野なので、労働力の確保は急務です。
そこで、労働人口が低下することの対抗策として、生産性の高さを求めるようになりました。
深刻なエンジニア不足
システム開発をおこなう人間のことを一般的にエンジニアと呼びます。
しかし、エンジニアは将来的に不足するといわれていることを知っていますか?
経済産業省が発表している「IT 人材需給に関する調査 」では、IT需要が9〜3%ほど伸長すると、2030年には約79万人ものIT人材が足りなくなると予想されています。「引用元:IT人材需給に関する調査」
それほどIT需要が伸びないとしても、2030年には約16万人ものIT人材が足りません。いずれのシナリオを描いたとしてもIT人材は足りないとされているので、IT人材に関わるエンジニア不足も深刻な問題です。
特に以下の分野は今後エンジニア不足が予想されています。
- インフラ関係
- スマートフォン
- ブロックチェーン
- セキュリティ
エンジニア不足の解決策として、政府がプログラミングの授業を必修科目として取り入れていますが、短期的な目線で見ると解決策にはならない可能性もあるでしょう。
そこで、エンジニア不足を補う観点から政府は生産性の向上も視野に入れています。
「IT 人材需給に関する調査 」の資料内で2010年の時点では生産性上昇率が0.7%でした。
しかし、生産性上昇率が2.4%にも上昇すれば、IT人材が足りる予想も発表されています。やはり長期的な目線で見ても生産性を高めることが、エンジニア不足を補うだけの力を持っているのかもしれません。「出典元:IT人材需給に関する調査」
ワークライフバランスという考えが浸透
近年ではワークライフバランスという考えが浸透しつつあります。
特に近年では政府が働き方改革を推奨しているため、働き方そのものを見直す機会が続々と増えてきました。テレワークやフレックスタイム制度などを取り入れている企業も少なくありません。
そのため、労働時間を短くする、残業時間を短くするなど、労働時間が短くなる傾向があります。
たしかに労働時間が減れば人生にゆとりが出るので、自己実現がしやすい環境を得られるでしょう。
しかし、システム開発分野においては長時間の作業になることも珍しくないため、ワークライフバランスを実現するためには生産性を高める必要があります。
システム開発の生産性を向上させるためには?
ここからは、システム開発における生産性を向上させるための方法を紹介します。
システム開発の生産性を向上させる方法は以下の5つです。
- エンジニアのスキルアップ
- 外国人エンジニアを受け入れる
- フリーランスの採用
- 業務内容を可視化する
- 仕事を作業化しない
エンジニアのスキルアップ
システム開発における生産性を高める方法の代表は、エンジニアのスキルアップです。限られた時間でシステム開発を終わらせるためには、一人ひとりがスキルアップする必要があります。
特に近年はIT技術における進化が激しいため、1年前の知識では古いということも珍しくありません。そのため、スキルアップだけでなく、知識のアップデートも必要です。
しかし、普段の業務に加えてスキルアップを目指すと、億劫に感じる人も多いでしょう。
億劫な人に向けて、簡単に取り組めるエンジニアのスキルアップ方法を5つ紹介します。企業の生産性を高めるためや、自分の年収を高めるためにも実践してみましょう。
- 新聞やメディアなどで情報を入手する
- 基本情報技術者試験や応用情報技術者試験などの資格をとる
- C/C++やJavaScript、Pythonなどの人気言語を覚える
- 同業種のセミナーや勉強会に参加する
- コミュニティに参加する
外国人エンジニアを受け入れる
システム開発における生産性を高めるためには、外国人エンジニアを受け入れるのも1つの手段です。外国人からすれば日本の生活環境を羨む人も少なくありません。
自分たち日本人が気づいていないだけで、外国人からすれば以下のような魅力が日本にはあります。
- 治安が良い
- 交通ネットワーク
- 食文化
- 水道水が飲める
以上の文化を築いてきた日本を魅力的に思う外国人も多いことから、外国人エンジニアから訪ねてくることもあります。しかし、外国人では技術力が不安だと思う人もいるかもしれませんが、比較的諸外国のIT教育は発展傾向にあります。
そのため、外国人エンジニアだからといって戦力にならないことはありません。以下の記事を参考に、メリットとデメリットを把握したうえで外国人エンジニアを雇うようにしてください。
フリーランスの採用
システム開発の生産性を高めるためには、フリーランスを採用するのもよいでしょう。
特にフリーランスの市場は拡大していて、ランサーズ株式会社が調査した内容によると2021年10月時点でフリーランス人口は約1577万人を記録。さらに、2015年からの6年間で約640万人も増加しています。「出典元:新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」
もちろん新卒採用による新人教育をしていくと、長期的な目線で労働力の確保にはつながるでしょう。
しかし、短期的な解決策としてフリーランスを採用するというのも1つの手段です。
また、経済産業省が発表している「労働市場の構造変化の現状と課題について」によると、情報・通信業の企業でフリーランスを活用している割合は40.6%にものぼります。
さらに、今後フリーランスの活用を検討している企業も21.9%にも及ぶので、フリーランスを雇う企業が大半を占める未来があるかもしれません。「出典元:労働市場の構造変化の現状と課題について」
システム開発における生産性を高める短期的な施策として、フリーランスを活用することも検討してください。
業務内容を可視化する
仕事の生産性を高めるためには、業務内容を洗い出すことが大切です。
もし業務内容を可視化していないと、以下のデメリットが発生します。
- 業務の生産性が低下して、残業が増える可能性がある
- 残業が増えることで経費が増える
- 作業が属人化しやすく、分担ができなくなる
特にシステム開発においてはいくつかの作業工程に分かれているはずなので、それぞれの作業内容を明確に把握する必要があります。
また、業務全体の工程を可視化することで、あらめて問題点が見つかるかもしれません。
システム開発のリスクを最低限にとどめるためにも、業務内容を可視化するようにしましょう。
仕事を作業化しない
基本的なことではありますが、仕事を作業化しないことも大切です。
仕事を作業化してしまうと、業務内容にメリハリがなくなるので、長時間労働の原因になります。長時間労働ともなると、生産性の低下は免れません。
そのため、仕事を作業化しないためにも以下のように取り組むようにしましょう。
- 時間によって仕事を分ける
- 作業内容に優先順位を決める
- 一度に複数の仕事をしない
以上の3点を気をつけるだけでも、仕事に集中しやすくなります。
仕事に集中できるようになれば、生産性も高まるでしょう。
システム開発における生産性の計算方法
システム開発における生産性は計算式によって求められます。
可視化することで生産性を把握しやすくなるので、業務にあたる前に計算してみてください。
- 付加価値生産性の計算方法
- 物的生産性の計算方法
付加価値生産性の計算方法
付加価値生産性は以下の計算式で求められます。
付加価値生産性=付加価値/労働ソース
例えば、10人のチームでシステム開発に取り組んでいたとしましょう。
付加価値は売上総利益に該当するので、今回はシステム開発における売上総利益を1,000万円とします。
以上のことを踏まえると、付加価値生産性を求める計算式は以下の通りです。
付加価値生産性(100万円/1人)=付加価値(1,000万円)/労働ソース(10人)
そのため、1人あたりが100万円もの付加価値を生み出していることになります。
また、付加価値生産性を高めるためには以下のいずれかの方法しかありません。
- 売上総利益を高める
- 労働ソースを抑える
よほど狙った市場でシステム開発しない限り、売上総利益を高めるのは難しいので、労働者の質を高めて労働リソースを抑えるのが得策でしょう。
物的生産性の計算方法
物的生産性は以下の計算式で求められます。
物的生産性=生産量/労働リソース
例えば、5人のチームで10個のプログラムを完成させたとしましょう。すると、物的生産性を求める計算式は以下のようになります。
物的生産性(2個/1人)=生産量(10個)/労働リソース(5人)
労働者1人に対して、生産物が2個生産できることが求められます。以上の計算式を各部門に当てはめると、会社内の労働に関わる生産性を把握しやすくなるでしょう。
まとめ
生産性を高めることはシステム開発の分野に限らず、現代の企業においては急務です。労働人口が不足していくなかで、人的資源の確保は難しいかもしれません。
しかし、企業独自の福利厚生やワークライフバランスを提唱していけば、優秀な人材が集まり、結果的に人材を確保できるでしょう。