顧客管理システム開発について。費用相場や失敗敗しないベンダー選定の3条件【2025年版】
顧客管理システムの開発について
- 失敗しないベンダー選定の条件
- SaaSではなく「開発」を選ぶべき企業の特徴
- 費用相場と見積もりの見方
- 経営層を説得するROIの証明方法
- 現場を巻き込む開発の進め方
など、顧客管理システム開発を成功させるための知識を網羅的にご紹介します。
このような方はぜひご一読ください
・SaaSのCRMを導入したが、自社の業務に合わず失敗した経験がある
・顧客管理システムの開発を検討しているが、ベンダー選びで失敗したくない
・開発費用の相場が分からず、稟議資料の作成に困っている
・経営層にシステム投資の効果を数字で説明する方法を知りたい
・システムを導入しても現場に定着するか不安がある
「Salesforceを検討したけど、カスタマイズ費用が膨らみすぎて断念した」「Excel管理の限界を感じているが、SaaSでは自社の商流に合わない」——このようなお悩みをお持ちではありませんか?
顧客管理システムの開発は、正しい進め方をすれば、SaaSでは実現できない「自社の業務に完全にフィットしたシステム」を構築できます。しかし、開発会社選びを誤ると「高い費用をかけて作ったのに、誰も使わないシステム」になるリスクも存在します。
本記事では、顧客管理システム開発で失敗しないためのベンダー選定のポイントから、稟議を通すための費用対効果の示し方、現場の反発を味方に変える開発の進め方まで、実務で役立つ情報を徹底解説します。
当社Swoooは、国内最多規模の実績を誇るノーコード開発会社です。
国内で初めてBubble公式認定開発者の資格を獲得し、日本で3社しかないBubble開発のSilver Agencyとして多くの企業様の開発支援を行ってまいりました。顧客管理システムをはじめとする業務システム開発においても、豊富な実績がございます。

顧客管理システムの開発を検討されている方は、ぜひ一度Swoooへ無料相談をお申し込みください。
▼ 2分で完了する、無料見積もりツールも提供しております。
目次
【注意】顧客管理システム開発で「結局使わない」を避けるベンダー選定の3条件
顧客管理システムの開発を外注する際、最も避けたいのは「高い費用をかけて作ったのに、現場で誰も使わない」という事態です。
実際、システム開発の失敗事例として最も多いのが「要件通りに作ったはずなのに、現場から『使いにくい』と反発される」というパターン。これは技術力の問題ではなく、開発会社が自社の業務を正しく理解していなかったことが原因であるケースがほとんどです。
ここでは、顧客管理システム開発で失敗しないためのベンダー選定の3つの条件を解説します。
技術力より「業務理解」で開発会社を見極める
開発会社を選ぶ際、多くの企業が「技術力の高さ」を重視しがちです。しかし、技術力が高くても、自社の業務フローを理解していなければ「使えないシステム」になるリスクが非常に高いのが現実です。
優れた開発会社かどうかを見極めるポイントは、初回の打ち合わせで確認できます。具体的には、以下のような質問をしてくる会社は信頼できる可能性が高いでしょう。
- 「御社の業務フローを詳しく教えてください」
- 「現在、顧客情報はどのように管理されていますか?」
- 「システム化したい業務の中で、特に困っている点はどこですか?」
一方で、専門用語ばかり並べて提案してくる会社や、いきなり機能の話から始める会社は要注意です。このような会社は、技術的な実装には長けていても、御社の業務課題を本質的に理解しようとする姿勢に欠けている可能性があります。
また、開発会社選定の際には、同業種・同規模の開発実績があるかどうかも重要な判断材料となります。業界特有の商習慣や業務フローを理解している会社であれば、要件定義の段階から的確な提案を受けられる可能性が高まります。
開発会社に確認すべき質問例としては、「同業種の開発経験はありますか?」「要件定義にどれくらいの時間をかけますか?」などが挙げられます。要件定義に十分な時間を割く会社は、それだけ業務理解を重視している証拠です。
「作って終わり」ではない保守・伴走体制の確認ポイント
顧客管理システムは、開発が完了してからが本番です。ビジネス環境の変化に合わせて機能追加や修正が必要になることは避けられません。そのため、開発後の保守・運用体制を事前に確認しておくことが極めて重要です。
保守体制を確認する際にチェックすべき項目は以下の通りです。
- 保守契約の有無と内容:月額固定なのか、対応ごとの従量課金なのか
- 対応スピード:障害発生時に何時間以内に対応してもらえるか
- 担当者の継続性:開発時の担当者が保守も担当するのか、別チームになるのか
- 機能追加・改修の費用体系:追加開発の見積もり方法は明確か
保守費用の相場としては、年間5万〜30万円程度が一般的です。ただし、システムの規模や複雑さ、対応範囲によって大きく変動するため、複数社から見積もりを取って比較することをおすすめします。
さらに見落としがちなのが、「現場への定着支援」の有無です。システムを導入しても、現場の社員が使いこなせなければ意味がありません。マニュアル作成や研修対応、導入後のフォローアップまでサポートしてくれる会社を選ぶことで、システムの定着率は大きく向上します。
下請け構造を見抜く質問と危険なサインとは
システム開発業界では、下請け・孫請けへの丸投げが珍しくありません。この場合、予算の大半が中間マージンとして消えてしまい、実際の開発に充てられる費用が少なくなるという問題が発生します。
実際、6次請け・7次請けまで下請けに出されるケースも存在し、そうなると当初の予算の1割程度しか実際の開発費用に回らないこともあります。また、発注元から実際に作業する下請け先まで長い伝言ゲームが発生するため、コミュニケーションコストが膨大になり、品質低下や納期遅延の原因となります。
下請け構造を見抜くための質問例としては、以下が有効です。
- 「実際に開発するのは御社のエンジニアですか?」
- 「打ち合わせに開発担当者は同席しますか?」
- 「開発体制とリソース確保はどのように行っていますか?」
また、以下のような危険なサインが見られた場合は、その会社への発注は慎重に検討すべきです。
- 見積もりが他社と比べて極端に安い(中間マージンを取った上で下請けに丸投げする可能性)
- 担当者がコロコロ変わる
- 質問への回答が遅い、または曖昧
- 「できない」と言わず、何でも「できます」と答える
基本的には2次受け以上の下請けを利用する会社への依頼は避けることをおすすめします。直接開発を行う会社、または1次下請けまでで完結する会社を選ぶことで、コミュニケーションコストを抑え、品質を担保しやすくなります。
顧客管理システムの開発を依頼するべき企業の特徴とは?
「SaaSのCRMを導入したけど、結局使われなかった」「Salesforceを検討したが、カスタマイズ費用が膨らみすぎて断念した」——このような経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
SaaS型のCRMは導入のハードルが低く、多くの企業にとって有効な選択肢です。しかし、すべての企業にSaaSが最適というわけではありません。業務フローの独自性が高い企業にとっては、独自開発(スクラッチ開発)の方が結果的にコストパフォーマンスが高くなるケースも少なくないのです。
ここでは、顧客管理システムの「開発」を選ぶべき企業の特徴と、SaaSとの判断基準について解説します。
「ウチの商流に合わない」が起きるSaaSの限界点
SaaS型のCRMは、多くの企業で共通して使われる機能を標準化して提供することで、低コスト・短期間での導入を実現しています。しかし、その「汎用性」こそが、独自の商流や業務フローを持つ企業にとっては大きな制約となることがあります。
SaaSの限界が顕著に表れるのは、以下のようなケースです。
- 独自の承認フロー:複数の部門や役職をまたぐ複雑な承認プロセスがある
- 複雑な取引条件:顧客ごとに異なる価格体系、割引ルール、契約条件がある
- 業界特有の帳票形式:法令や業界慣習で定められた独自フォーマットが必要
- 既存システムとの連携:基幹システムや独自の販売管理システムとのデータ連携が必須
こうした要件を持つ企業がSaaSを導入すると、現場から「今までのやり方と違う」「入力項目が多すぎる」「必要な情報が一画面で見られない」といった反発が起きやすくなります。結果として、高い月額費用を払い続けながら、Excelでの管理に逆戻りするという本末転倒な事態に陥るケースも少なくありません。
また、SaaSは「業務をシステムに合わせる」ことが前提となるため、現場の業務プロセスを大幅に変更する必要が生じることもあります。業務変更に対する現場の抵抗が大きい場合や、業務プロセス自体が競争優位の源泉となっている場合は、SaaSではなく独自開発を検討すべきでしょう。
過去にSalesforceやHubSpotなどの導入を検討して頓挫した経験がある企業は、「開発」という選択肢を改めて検討する価値があります。
独自開発が向いている業務フローの3パターン
では、具体的にどのような業務フローを持つ企業が独自開発に向いているのでしょうか。ここでは代表的な3つのパターンをご紹介します。
【パターン①】取引先ごとに異なる価格体系・契約条件がある
BtoB企業に多いケースですが、取引先ごとに個別の価格テーブルや支払い条件、納品ルールが設定されている場合、SaaSの標準機能では対応しきれないことがほとんどです。特に、長年の取引関係の中で形成された複雑な取引条件は、簡単にシステムに合わせて変更することができません。このような場合、取引条件をそのままシステム化できる独自開発が適しています。
【パターン②】複数部門をまたぐ複雑な承認フローがある
営業部門から経理部門、法務部門など、複数の部署が関与する承認プロセスがある場合も独自開発向きです。SaaSでは承認フローのカスタマイズに限界があり、結局はシステム外でのやり取りが発生してしまいます。業務フローの根幹に関わる部分をシステム化したい場合は、最初から自社の承認フローに合わせた設計ができる独自開発の方が効率的です。
【パターン③】既存の基幹システムとの連携が必須
すでに販売管理システムや在庫管理システム、会計システムなどの基幹システムが稼働している企業では、顧客管理システムとのデータ連携が不可欠です。SaaSでもAPI連携は可能ですが、連携の自由度や処理速度に制約があることが多く、リアルタイム連携や複雑なデータ変換が必要な場合は対応できないケースもあります。基幹システムとの密な連携が求められる場合は、独自開発で柔軟に設計する方が長期的なメリットが大きいでしょう。
上記のパターンに1つでも該当する企業は、SaaSの「カスタマイズ」ではなく、「開発」を積極的に検討することをおすすめします。
SaaS+カスタマイズと完全スクラッチの判断基準
「独自開発が必要そうだが、本当にフルスクラッチで作るべきなのか」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。実際には、SaaSをベースにカスタマイズを加える方法と、完全にゼロから開発する方法の2つの選択肢があります。それぞれの特徴と判断基準を整理します。
【SaaS+カスタマイズが向いているケース】
- 基本機能はSaaSで十分対応できる
- カスタマイズが必要な範囲が全体の20〜30%以下
- 早期にシステムを稼働させたい
- 社内にシステム運用のリソースが限られている
【完全スクラッチ(独自開発)が向いているケース】
- 業務フローの根幹から独自性が高い
- カスタマイズ範囲が全体の30%を超える
- 将来的な拡張性を重視したい
- SaaSのランニングコスト(月額課金)を長期的に抑えたい
一つの目安として、カスタマイズ範囲が全体の30%を超える場合は、完全スクラッチを検討すべきです。SaaSに大幅なカスタマイズを加えると、初期費用が膨らむだけでなく、SaaSのバージョンアップ時にカスタマイズ部分が動作しなくなるリスクもあります。また、カスタマイズを重ねるほど保守が複雑になり、結果的にランニングコストも高騰しがちです。
最終的な判断は、費用・開発期間・保守性のバランスで行うことになります。複数の開発会社から提案を受け、SaaS+カスタマイズと完全スクラッチの両方の見積もりを比較検討することで、自社にとって最適な選択が見えてくるでしょう。
| 比較項目 | SaaS+カスタマイズ | 完全スクラッチ |
|---|---|---|
| 初期費用 | 比較的安価 (カスタマイズ量による) | 高額 (100万〜数千万円) |
| ランニングコスト | 月額課金が継続 (ユーザー数に比例) | 保守費用のみ (年間5〜30万円程度) |
| 導入期間 | 短期 (1〜3ヶ月程度) | 中〜長期 (3〜12ヶ月程度) |
| カスタマイズ性 | 制約あり | 自由度が高い |
| 将来の拡張性 | SaaSの機能範囲に依存 | 自由に拡張可能 |
顧客管理システム開発の費用相場|稟議を通すための見積もりの見方
顧客管理システムの開発を検討する際、最大の関門となるのが「稟議」です。経営層を説得するためには、費用の妥当性を示す具体的な数字と、投資対効果を明確にした資料が不可欠です。
しかし、システム開発の見積もりは「一式○○万円」といった形式で提示されることも多く、その内訳や妥当性を判断するのは容易ではありません。ここでは、顧客管理システム開発の費用相場と、稟議を通すために押さえておくべき見積もりの見方を解説します。
開発規模別の費用目安と内訳(100万〜数千万円)
顧客管理システムの開発費用は、システムの規模や機能の複雑さによって大きく変動します。以下に、開発規模別の費用目安をまとめました。
| 開発規模 | 費用目安 | 主な機能・特徴 |
|---|---|---|
| 小規模 | 100万〜300万円 | 基本的な顧客情報管理 シンプルな検索・一覧機能 CSV出力 |
| 中規模 | 300万〜1,000万円 | 複数機能の実装 外部システム連携 帳票出力・レポート機能 |
| 大規模 | 1,000万〜数千万円 | フルスクラッチ開発 基幹システム連携 高度なセキュリティ要件 |
開発費用の大半は「人件費」です。システム開発はエンジニアの労働集約型の仕事であり、どれだけの人員がどれだけの期間稼働するかによって費用が決まります。つまり、機能が複雑になるほど開発工数が増え、費用も比例して上昇する構造です。
費用の内訳としては、一般的に以下の工程に分かれます。
- 要件定義:業務フローの整理、必要機能の洗い出し(全体の約15〜20%)
- 設計:画面設計、データベース設計、システム構成設計(全体の約15〜20%)
- 開発(実装):プログラミング、機能構築(全体の約40〜50%)
- テスト:動作確認、バグ修正、品質保証(全体の約15〜20%)
- 導入支援:データ移行、マニュアル作成、研修(全体の約5〜10%)
稟議資料を作成する際は、この内訳を理解した上で、各工程にどれだけの費用が配分されているかを確認することが重要です。
見積書で確認すべき「人件費の内訳」と工数の妥当性
開発会社から提示された見積書を確認する際、「一式」とだけ書かれている場合は、必ず詳細な内訳を求めてください。内訳が不明確な見積もりは、追加費用が発生するリスクが高く、稟議で承認を得ることも難しくなります。
見積書で確認すべきポイントは以下の通りです。
【確認ポイント①】エンジニアの単価
エンジニア単価の相場は、1人月あたり50万〜100万円程度が一般的です。ただし、エンジニアのスキルレベルや経験年数、担当する工程によって単価は変動します。例えば、要件定義や設計を担当する上流工程のエンジニア(SE)は単価が高く、実装を担当するプログラマーは比較的単価が低い傾向にあります。
【確認ポイント②】工数(人月)
工数は「人月」という単位で表されます。1人月とは、1人のエンジニアが1ヶ月(約20営業日)稼働することを意味します。例えば「3人月」であれば、1人が3ヶ月、または3人が1ヶ月で完了する作業量という計算になります。
【確認ポイント③】各工程の内訳
要件定義、設計、開発、テストなど、各工程にどれだけの工数が割り当てられているかを確認します。要件定義や設計の工数が極端に少ない見積もりは要注意です。上流工程を軽視すると、開発後に「想定と違う」という事態が発生しやすくなります。
工数の妥当性を判断するためのざっくりした計算方法として、以下の目安が参考になります。
- シンプルな機能(顧客一覧表示、検索など):0.5〜1人月程度
- 中程度の機能(帳票出力、CSV取込など):1〜2人月程度
- 複雑な機能(外部API連携、複雑な計算ロジックなど):2〜5人月程度
見積もりの妥当性を正確に判断するためには、必ず複数社から見積もりを取って比較することをおすすめします。3社程度から見積もりを取れば、相場感が把握でき、極端に高い・安い見積もりを見分けることができます。
ランニングコストを含めたトータルコストの試算方法
稟議を通す際に見落としがちなのが、ランニングコストです。初期の開発費用だけでなく、運用開始後に継続的に発生する費用も含めたトータルコストで投資判断を行う必要があります。
ランニングコストとして発生する主な費用は以下の通りです。
- 保守費用:障害対応、バグ修正、軽微な改修(年間5〜30万円程度)
- サーバー費用:クラウドサーバーの利用料(月額1〜10万円程度)
- ライセンス費用:利用するソフトウェアやツールのライセンス料
- 機能追加・改修費用:事業成長に伴う機能拡張(都度見積もり)
稟議資料では、初期費用だけでなく「5年間のトータルコスト」で比較することをおすすめします。これにより、SaaSの月額課金と独自開発の損益分岐点を明確に示すことができます。
例えば、以下のような比較が可能です。
| 項目 | SaaS(月額5万円の場合) | 独自開発(初期500万円の場合) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 0〜50万円 | 500万円 |
| 1年目 | 60万円 | 520万円 (保守20万円含む) |
| 3年目累計 | 180万円 | 560万円 |
| 5年目累計 | 300万円 | 600万円 |
| 7年目累計 | 420万円 | 640万円 |
| 10年目累計 | 600万円 | 700万円 |
※上記は一例であり、実際の費用は要件や開発会社によって異なります
このように長期視点で比較すると、SaaSは初期費用を抑えられる反面、長期利用ではコストが膨らむ傾向があります。一方、独自開発は初期投資が大きいものの、長期的にはコストが安定します。
稟議資料に記載すべき「トータルコスト試算表」の項目例は以下の通りです。
- 初期開発費用
- 年間保守費用
- サーバー・インフラ費用(年間)
- ライセンス費用(年間)
- 想定される機能追加費用(3年・5年)
- 5年間トータルコスト
- SaaSとの比較(損益分岐点)
これらの項目を整理して提示することで、経営層も投資判断がしやすくなり、稟議の承認率が高まります。
顧客管理システム開発でROIを証明する「経営層を説得する数字の作り方」
「AIで何かやれ」「DXを推進しろ」——経営層からこうした抽象的な指示を受けながら、具体的な成果を求められて困っている方も多いのではないでしょうか。
顧客管理システムの導入を稟議で通すためには、「このシステムを導入すると、いくらの効果があるのか」を数字で示すことが不可欠です。感覚的な「便利になる」「効率化できる」では、経営層の承認は得られません。
ここでは、顧客管理システム開発のROI(投資対効果)を証明するための具体的な方法を解説します。
開発前に設定すべきKPIの具体例
システム導入の効果を測定するためには、導入前に「何をもって成功とするか」を定義しておくことが重要です。これがKPI(重要業績評価指標)です。KPIを設定せずに導入を進めると、導入後に「効果があったのかどうか分からない」という状況に陥ります。
顧客管理システムにおけるKPIは、大きく「売上貢献系」「業務効率系」「定性系」の3つに分類できます。
【売上貢献系KPI】
- 顧客対応件数:1日・1週間あたりの対応可能件数
- 成約率:商談から成約に至る割合
- クロスセル率・アップセル率:既存顧客への追加販売の成功率
- 顧客単価:顧客1社あたりの平均売上
- リピート率:再購入・継続取引の割合
【業務効率系KPI】
- データ入力時間:顧客情報の登録・更新にかかる時間
- 集計作業時間:月次・週次レポート作成にかかる時間
- 情報検索時間:必要な顧客情報を見つけるまでの時間
- 会議準備時間:営業会議や報告資料の準備時間
- 引継ぎ時間:担当者変更時の情報引継ぎにかかる時間
【定性系KPI】
- 現場の満足度:システム利用者のアンケート評価
- 情報共有のスムーズさ:部門間連携の円滑さに関する評価
- 顧客対応品質:顧客からのクレーム件数、満足度調査の結果
最も重要なのは、導入前に「現状値」を計測しておくことです。現状値がなければ、導入後にどれだけ改善したかを示すことができません。稟議を通す段階で、「現状はこの数値であり、導入後にこの数値まで改善する見込み」という形で提示できれば、説得力が大きく増します。
「Excelバケツリレー工数」を金額換算する方法
経営層を説得する上で最も効果的なのは、現在発生している「見えないコスト」を金額に換算して可視化することです。
例えば、「月末の3日間が集計作業で潰れる」という状況を考えてみましょう。これは多くの企業で見られる光景ですが、この作業コストを金額に換算すると、想像以上の損失が発生していることが分かります。
計算式は以下の通りです。
年間コスト = 作業時間 × 人数 × 時給 × 12ヶ月
具体例で計算してみましょう。
計算例:月末集計作業のコスト
前提条件
・月末3日間(24時間)× 営業担当10人が集計作業に従事
・営業担当の平均時給:3,000円(年収約600万円相当)
計算
24時間 × 10人 × 3,000円 × 12ヶ月 = 年間864万円
この計算によれば、月末の集計作業だけで年間864万円ものコストが発生していることになります。さらに、この時間が本来の営業活動に充てられていれば、売上への貢献も期待できたはずです。
同様の方法で、以下のような「見えないコスト」も金額換算できます。
| 作業内容 | 時間/月 | 人数 | 年間コスト |
|---|---|---|---|
| 顧客情報の手入力・転記 | 10時間 | 5人 | 180万円 |
| Excelファイルの統合・整理 | 8時間 | 3人 | 86万円 |
| 過去の対応履歴の検索 | 5時間 | 10人 | 180万円 |
| 担当者間の情報共有・確認 | 4時間 | 10人 | 144万円 |
これらの数字を稟議資料に入れることで、「このコストを削減するための投資」という文脈でシステム開発を位置づけることができます。例えば、年間500万円の非効率コストを、300万円のシステム投資で解消できるなら、投資対効果は明確です。
導入1年後に報告すべき効果測定レポートの項目
システム導入後、経営層への報告で求められるのは「投資に見合う効果が出ているか」という点です。導入前に設定したKPIに基づいて、定期的に効果測定を行い、レポートとして報告する必要があります。
効果測定レポートに含めるべき項目は以下の通りです。
【定量データ】
- KPI改善率:導入前と導入後の数値比較(例:集計時間が24時間→4時間に短縮=83%削減)
- 削減工数:月間・年間で削減できた作業時間の合計
- コスト削減額:削減工数を金額換算した値
- 売上貢献額:成約率向上や顧客対応件数増加による売上増加分
【定性データ】
- 現場の声:利用者からのフィードバック、満足度アンケート結果
- 顧客対応品質の変化:対応スピードの向上、クレーム件数の減少など
- 情報共有の改善:部門間連携のスムーズさに関する評価
経営層が最も知りたいのは、「売上への貢献」と「投資回収の見通し」の2点です。レポートでは、この2点を明確に示すことを意識してください。
レポートのフォーマットとしては、Before/After比較形式が分かりやすくおすすめです。
効果測定レポート例
■ 業務効率化効果
・月末集計作業:24時間 → 4時間(83%削減)
・顧客情報検索:平均5分 → 平均30秒(90%削減)
・年間削減コスト:約650万円
■ 売上貢献効果
・顧客対応件数:月間200件 → 280件(40%増加)
・成約率:15% → 18%(3ポイント改善)
・推定売上増加額:年間約800万円
■ 投資回収見通し
・初期投資額:500万円
・年間効果額:約1,450万円
・投資回収期間:約4ヶ月
このように具体的な数字で効果を示すことで、システム導入の成功を経営層に理解してもらうことができます。また、次のシステム投資への布石にもなります。
顧客管理システム開発の流れ→現場を巻き込む進め方で定着率を上げる
顧客管理システム開発でよくある失敗が、「システムは完成したのに、現場が使ってくれない」というパターンです。これは技術的な問題ではなく、開発プロセスに現場を巻き込めなかったことが原因であるケースがほとんどです。
「現場は今のままでいい」「新しいシステムなんて面倒」——こうした抵抗感を持つ社員は少なくありません。しかし、開発の進め方を工夫することで、この抵抗を「自分たちのシステム」という当事者意識に変えることができます。
ここでは、現場を巻き込みながらシステムの定着率を高める開発の進め方を解説します。
要件定義で「現場の声」を吸い上げる具体的な手順
システム開発の成否を分ける最も重要な工程が「要件定義」です。ここで現場の声を十分に吸い上げられるかどうかで、完成後のシステムの使い勝手が大きく変わります。
最も避けるべきは、いきなり開発会社に丸投げすることです。開発会社は技術のプロですが、御社の業務のプロではありません。現場の実態を知らないまま要件定義を進めると、「技術的には正しいが、業務には使えない」システムが出来上がってしまいます。
開発会社に相談する前に、まず社内で以下の手順を踏むことをおすすめします。
【手順①】現場ヒアリングの実施
実際にシステムを使う現場担当者へのヒアリングを行います。ヒアリングで確認すべき項目は以下の通りです。
- 現状の困りごと:今の業務で最も時間がかかっている作業、ストレスを感じている点
- 理想の業務フロー:「こうなったら楽になる」という具体的なイメージ
- 絶対に必要な機能:これがないと業務が回らないという必須要件
- あったら嬉しい機能:優先度は低いが、あれば便利な機能
- 現行システム・ツールへの不満:既存のExcel管理やSaaSで困っている点
【手順②】キーパーソンを早期に味方につける
現場には必ず「影響力のあるキーパーソン」が存在します。ベテラン社員や、チームリーダー、発言力のある社員などです。このキーパーソンを早期に味方につけることが、システム定着の鍵となります。
キーパーソンには、ヒアリング段階から積極的に関与してもらい、「自分の意見が反映されている」という実感を持ってもらいましょう。キーパーソンが味方になれば、他の社員への浸透もスムーズに進みます。逆に、キーパーソンが反発すると、システム導入自体が頓挫するリスクが高まります。
【手順③】業務フローの可視化
ヒアリング結果をもとに、現状の業務フローを図や表で可視化します。この資料があることで、開発会社との打ち合わせがスムーズになり、認識のズレを防ぐことができます。また、業務フローを可視化する過程で、無駄な工程や重複作業が見つかることも少なくありません。
プロトタイプ検証で反発を味方に変えるコツ
要件定義が完了したら、いきなり本開発に入るのではなく、プロトタイプ(試作版)を作成して現場に検証してもらうステップを挟むことを強くおすすめします。
プロトタイプ検証のメリットは以下の通りです。
- 完成前に問題点を発見・修正できるため、手戻りコストを削減できる
- 現場が実際に触ることで、具体的なフィードバックが得られる
- 「自分たちの意見が反映された」という当事者意識が生まれる
プロトタイプ検証で重要なのは、「使いにくい」という声を歓迎する姿勢です。現場からの批判的な意見は、システムを改善するための貴重な情報源です。批判を封じ込めるのではなく、積極的に吸い上げて改善に反映することで、現場の信頼を獲得できます。
プロトタイプ検証の進め方としては、以下のステップが効果的です。
【ステップ①】限定メンバーでの初回検証
まずは、要件定義に関与したキーパーソンや、ITリテラシーの高い社員に限定してプロトタイプを触ってもらいます。この段階で大きな問題点を洗い出し、修正します。
【ステップ②】対象範囲を広げた2回目検証
修正を反映したプロトタイプを、より多くの現場メンバーに触ってもらいます。初回検証では見つからなかった問題点や、異なる視点からのフィードバックが得られます。
【ステップ③】最終確認の3回目検証
本開発に入る前の最終確認として、実際の業務データを使った検証を行います。この段階で「これなら使える」という合意が得られれば、本開発に進みます。
プロトタイプ検証を2〜3回繰り返すことで、完成後の「想定と違う」というリスクを大幅に低減できます。開発期間は若干長くなりますが、手戻りによるコスト増や、導入後に使われないリスクを考えれば、十分に元が取れる投資です。
運用テスト〜本番公開で失敗しないスケジュール設計
開発が完了したら、いよいよ本番公開に向けた準備に入ります。ここでのスケジュール設計を誤ると、せっかく作ったシステムが現場に定着しないまま終わってしまう可能性があります。
本番公開までのスケジュールで押さえるべきポイントは以下の通りです。
【ポイント①】運用テスト期間は最低1ヶ月確保する
開発完了後、すぐに本番公開するのは危険です。運用テスト期間として最低1ヶ月は確保し、実際の業務に近い形でシステムを稼働させてみましょう。この期間で発見されたバグや使い勝手の問題を修正してから、本番公開に臨みます。
【ポイント②】並行運用期間を設けてリスクヘッジする
本番公開後も、一定期間は旧システム(Excel管理など)と新システムを並行運用することをおすすめします。万が一、新システムに重大な問題が発生した場合でも、旧システムにフォールバックできる体制を整えておくことで、業務への影響を最小限に抑えられます。並行運用期間の目安は2週間〜1ヶ月程度です。
【ポイント③】公開後のサポート体制を事前に準備する
本番公開後は、現場から多くの問い合わせが発生します。この問い合わせに迅速に対応できる体制を事前に準備しておくことが重要です。具体的には以下の準備が必要です。
- 問い合わせ窓口の設置:社内の担当者、または開発会社の連絡先を明確にする
- マニュアルの整備:基本操作、よくある質問、トラブルシューティングを網羅
- 研修の実施:本番公開前に、全ユーザーを対象とした操作研修を行う
- FAQ の作成:想定される質問と回答を事前にまとめておく
【ポイント④】繁忙期を避けた公開タイミングの設定
新システムへの移行は、現場に一定の負荷がかかります。繁忙期に本番公開すると、現場の反発を招きやすく、定着に失敗するリスクが高まります。決算期、年末年始、大型連休前などの繁忙期は避け、比較的余裕のある時期に公開タイミングを設定しましょう。
以下に、本番公開までの理想的なスケジュール例を示します。
| フェーズ | 期間目安 | 主な作業内容 |
|---|---|---|
| 開発完了 | – | 開発会社からの納品 |
| 運用テスト | 1ヶ月 | 実データでの動作確認 バグ修正・改善 |
| 研修・準備 | 2週間 | ユーザー研修 マニュアル配布 |
| 本番公開 | – | 新システム稼働開始 |
| 並行運用 | 2週間〜1ヶ月 | 旧システムとの並行稼働 問題対応 |
| 完全移行 | – | 旧システム停止 新システム一本化 |
このように段階を踏んで移行することで、現場の混乱を最小限に抑え、システムの定着率を高めることができます。
顧客管理システムの開発は「Swooo」にお任せください

当社Swoooは、ノーコード開発において国内最多規模の実績を誇る開発会社です。
顧客管理システムの開発においても、「業務理解」を最も重視したヒアリングと要件定義を行い、御社の商流・業務フローに最適化したシステムをご提案いたします。開発後の保守運用はもちろん、現場への定着支援や稟議資料作成のサポートまで、一気通貫で伴走いたします。
「SaaSでは自社の業務に合わない」「開発会社選びに失敗したくない」とお悩みの方は、ぜひ一度Swoooへ無料相談をお申し込みください。
▼ 2分で完了する、無料見積もりツールも提供しております。
顧客管理システムの開発に関するよくある質問
最後に、顧客管理システム開発に関してよくいただく質問にお答えします。
顧客管理システム開発の期間はどのくらいかかる?
顧客管理システムの開発期間は、システムの規模や機能の複雑さによって大きく異なります。一般的な目安は以下の通りです。
- 小規模(基本機能のみ):2〜3ヶ月
- 中規模(複数機能・外部連携あり):3〜6ヶ月
- 大規模(フルスクラッチ・基幹連携):6ヶ月〜1年以上
開発期間を左右する主な要素としては、要件の複雑さ、既存システムとの連携の有無、現場ヒアリングやプロトタイプ検証の回数などが挙げられます。特に要件定義に時間をかけることで、開発フェーズでの手戻りを減らし、結果的にトータルの期間を短縮できるケースも多くあります。
スケジュールが延びるリスク要因としては、「要件の追加・変更が頻発する」「承認プロセスに時間がかかる」「現場からのフィードバック対応が長引く」などがあります。これらを防ぐためには、プロジェクト開始前に要件をできる限り明確化し、意思決定者を明確にしておくことが重要です。
顧客管理システムを開発する際に補助金は使える?
はい、顧客管理システムの開発には各種補助金を活用できる可能性があります。代表的な補助金制度は以下の通りです。
【IT導入補助金】
中小企業・小規模事業者を対象に、ITツール導入費用の一部を補助する制度です。顧客管理システム(CRM)も補助対象となっており、2025年度の通常枠では補助率1/2以内、最大450万円までの補助が受けられます。ただし、事前に登録された「IT導入支援事業者」が提供するツールに限られる点に注意が必要です。
【ものづくり補助金】
革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善に取り組む中小企業を支援する制度です。顧客管理システムを「営業プロセスの再構築」や「新サービス開発」の一環として位置づけることで、補助対象となる可能性があります。補助率は中小企業1/2、小規模事業者2/3で、最大3,000万円までの補助が受けられます。
補助金の採択には事業計画書などの申請準備が必要であり、審査もあるため、必ず採択されるとは限りません。開発会社によっては補助金申請のサポートを行っているところもありますので、検討段階で相談してみることをおすすめします。最新の補助金情報は、中小企業庁や経済産業省の公式サイトで確認してください。
顧客管理システム開発で失敗しない開発会社の探し方は?
顧客管理システム開発で失敗しないためには、開発会社選びが極めて重要です。以下の3つのステップで進めることをおすすめします。
【ステップ①】複数社から見積もりを取って比較する
最低でも3社程度から見積もりを取り、費用・期間・提案内容を比較しましょう。見積もりの金額だけでなく、内訳の詳細さや、提案書の質もチェックポイントです。極端に安い見積もりは、下請けへの丸投げや、後から追加費用が発生するリスクがあるため注意が必要です。
【ステップ②】実績・得意分野・保守体制を確認する
自社と同業種・同規模の開発実績があるかを確認しましょう。実績があれば、業界特有の商習慣や業務フローを理解している可能性が高く、要件定義がスムーズに進みます。また、開発後の保守体制(対応スピード、費用体系、担当者の継続性)も必ず確認してください。
【ステップ③】初回相談で「業務理解」の姿勢があるかを見極める
初回の打ち合わせで、開発会社が「御社の業務を理解しよう」という姿勢を持っているかを観察しましょう。技術的な話ばかりで、業務フローや課題についての質問がない会社は要注意です。逆に、「現在どのように顧客管理をされていますか?」「一番困っていることは何ですか?」といった質問をしてくる会社は、業務理解を重視している証拠です。
開発会社探しに時間をかけられない場合や、どの会社に相談すべきか分からない場合は、当社Swoooのような複数の開発手法に対応できる会社に相談することで、自社に最適な開発方法を提案してもらうことができます。
▼顧客管理システム開発のご相談はこちら
まとめ:顧客管理システム開発は「ベンダー選定」と「現場巻き込み」が成功の鍵
本記事では、顧客管理システム開発について、ベンダー選定のポイントから費用相場、ROIの証明方法、開発の進め方まで幅広く解説してきました。
顧客管理システム開発で成功するためのポイントをまとめると、以下の通りです。
- ベンダー選定では「技術力」より「業務理解」を重視する
- SaaSか開発かは、業務フローの独自性で判断する
- 稟議を通すには「見えないコスト」を金額換算してROIを示す
- 現場を早期から巻き込み、「自分たちのシステム」という意識を醸成する
- プロトタイプ検証と段階的な移行で、定着率を高める
顧客管理システムは、導入して終わりではなく、現場で活用されてこそ価値を発揮します。そのためには、開発会社選びの段階から「使われるシステム」を意識した取り組みが必要です。
本記事が、顧客管理システム開発を検討されている皆様のお役に立てれば幸いです。


