ノーコード開発にデメリットはある?導入前に知っておくべき落とし穴
「ノーコード開発のメリットはよく聞くけど、デメリットもあるのでは?」と不安に感じられる方もいらっしゃると思います。プログラミング知識がなくてもシステムを作れる反面、思わぬ落とし穴があるリスクも慎重に把握しておきたいですよね。
本記事ではプラットフォーム依存など代表的な欠点を解説し、業務で活用する際のリスクを具体例を交えながら紹介します。開発するアプリ別のデメリットも説明しているため、ぜひノーコード開発導入の参考にしてください。

目次
ノーコード開発の最大のデメリットは「プラットフォームへの依存」
ノーコード開発の最大のデメリットは、プラットフォームが終了すると移行ができなくなり、最悪の場合に業務が停止してしまうリスクがあることです。この状態を「ベンダーロックイン」と呼びます。
資産をロックインしてしまうと乗り換え時にシステム移行に膨大なコストがかかります。更新ポリシーやエクスポート機能を事前に確認し、会社方針に合ったサポート体制を持つ製品を選ぶことでダウンタイムを最小化することが可能です。

長期運用を想定するなら契約前にサービス提供年数や運営企業の安定性を確認しましょう。
独自APIや複雑な技術要件を抱えている場合は、ソースを取得しやすいローコードへ移管するなど柔軟な対応が必要です。複数プラットフォームの併用で不都合を補い、将来拡張できるように担保する方法もあります。
ただし、併用する際は権限が分散しやすいため、業務フローの統合が求められます。社内ルールを早めに整備し属人化を防ぐことで、メリットを最大化しつつリスクを抑えられるでしょう。

プライベートクラウドにエクスポートできるサービスを選べば万一の移行も安心です。
ノーコード開発のデメリット【7つの落とし穴】
この章ではノーコード開発の代表的なデメリットを挙げ、開発フェーズで注意すべきポイントを提示します。後工程での手戻りを防ぐ指針として活用してください。

導入前にチェックリストを作成し全項目を可視化すると失敗を防げます。
1. カスタマイズ性に限界がある
ノーコード開発はテンプレート中心の画面設計のため、UIの微調整や独自コードの追加に制限があります。業務要件が固まっていない段階で選定すると、後から機能拡張が難しくなるのがデメリットです。
プログラム生成機能があるツールでも内部コードがブラックボックス化し、修正工数が増えがちです。要件定義の段階で、将来的に大幅な機能拡張を求めないことを社内合意しておくことが欠かせません。

ガントチャートやチャット連携など高度UIが必須ならローコード併用を検討しましょう。
2. パフォーマンスが劣ることがある
ノーコード開発は便利ですが、アクセスが集中すると応答速度が低下する危険性があることがデメリットです。ユーザー体験を損なうと企業イメージに直結します。
キャッシュ戦略やプラグイン整理を行い、必要に応じて有料プランへグレードアップするなど性能を保つチューニングが不可欠です。

レスポンスタイム目標を事前設定して負荷テストを実施しましょう。
3. サービス停止リスクがある
SaaS基盤を使ったノーコード開発ツールは、メンテナンスや障害でダウンタイムが発生する点にも注意が必要です。業務システムの場合、サポートSLAや復旧フローを確認せず採用すると高いビジネス損失を招きます。
BCPの観点から冗長化や自動バックアップ機能があるかを比較検討し、障害発生時の通報スピードも指標にすると良いでしょう。

障害履歴を公開しているサービスは透明性が高く信頼できます。
4. セキュリティ要件を満たせない場合も
ノーコード開発プラットフォームは共通基盤を共有するため、セキュリティ対策が限定的なことがあります。ISO27001など厳格な規格を求める業界では、権限制限などの追加ガードが必要です。
ログの暗号化方式やIP制限機能を検証し、コンプライアンス担当と連携して脆弱性診断などを定期的に実施すれば安全性を高められます。

フォーム入力や決済を扱う場合はOWASP対策プラグインを必ず導入しましょう。
5. データ連携や拡張性に難あり
ノーコード開発はデータ連携や機能拡張が制限されるケースが多いです。追加プラグインの開発に時間がかかり、結果的にコスト増加となることもあるため慎重に選ぶ必要があります。
連携件数が多いシステムはデータ抽出や変換、格納などのETLプロセスをノーコードとは別のクラウドに分離し、負荷を分散させる手法が効果的です。

複数基幹システムと接続する際はAPI仕様を一覧化し互換性を確認しましょう。
6. 開発者によって品質にばらつきが出る
スクラッチ開発と異なりノーコード開発はドラッグ&ドロップなどにより直感的に開発できます。画面だけを更新し、ドキュメントを残さなくなってしまうことで属人化しがちです。
レビュー手法を標準化したりQAチェックシートを併用したりして、チーム全体の品質を均一化できるように社内ルールを設けましょう。

ルールブックを共有フォルダに置き、更新履歴を定期確認すると効果的です。
7. 内製化しても属人化しやすい
少人数開発でドキュメントを残さないと、キーマンが退職した場合に運用が停滞します。万が一のエラー発生時には調査を長引かせ、信用を失い、サポートコストまで押し上げてしまうのです。
要件定義をドキュメント化し社内ポータルに保管するなど、継続的な知識共有が不可欠です。ツールベンダーのサポート範囲も事前に確認しましょう。

オンボーディング用テンプレートを作ると新人も短時間で戦力化できます。
【開発別】ノーコード開発のデメリット
用途ごとにノーコード開発の注意点は異なります。開発目的を整理し、最適なプラットフォームを選ぶ指標としてください。

要件定義シートで優先度を数値化すると判断がスムーズです。
ノーコードでWebサイトを開発するデメリット→SEOに強い設計やUIの微調整が難しい
ノーコード開発は設定項目が画一化されているため、SEOやUIへの細かい対応は困難です。例えば、メタタグの自動生成が不完全なままでは検索順位が伸びませんが、任意で修正できないテンプレートも存在します。
カスタムコードが許可されているノーコード開発プラットフォームを選ぶことで、SEOやUIの微調整に対応できる可能性があります。事前にツールベンダーに確認しておくのが賢明です。

サイト規模が大きい場合は静的書き出し機能があるサービスを推奨します。
ノーコードで業務アプリを開発するデメリット→企業規模や用途によってはノーコードを使わない方がいい場合がある
大企業ではワークフローが複雑で権限も部署ごとに細分化されているため、ノーコード開発ではカバーしきれない場合があります。開発ツールの条件分岐が足りず、運用を手作業で補うと逆に非効率です。
設計時に必須機能を棚卸しし、ローコードの併用やスクラッチ開発とのハイブリッドで効率とコストを両立できます。ノーコード偏重にならないように使い分けるのがおすすめです。

月間アクティブユーザー数と拡張計画を照合し最適な料金プランを選びましょう。
ノーコードでECサイトを開発するデメリット→汎用型ノーコードを使うとかえってコストが大きくなりやすい
特殊業務に特化したシステムを汎用型ノーコードで開発してしまうと、痒いところに手が届かなくなります。例えば、決済連携や在庫同期などEC特有機能はカスタム実装が多く、追加アプリ課金が重なりがちです。
EC特化型のノーコードプラットフォームを採用するか、API連携できる基盤を利用して拡張コストを抑えるのが得策です。一つの開発ツールに固執せず、選択肢を広げるために幅広く情報収集しましょう。

複数店舗展開予定ならマルチテナント対応か要確認です。
【弊社の事例】ノーコードで開発して感じたデメリット
この章では、実際に現場で直面した課題やトラブルを共有し、回避策と学びを紹介します。ノーコード開発の導入を検討している企業は同じ轍を踏まぬよう参考にしてください。

社内プロジェクトの振り返りは第三者視点で評価すると改善点が見えやすいです。
Bubbleで社内管理ツールを開発→複雑なデータ構造に限界を感じた

Bubbleで社内管理ツールを開発した際、業務フローが増えるたびにフィールド追加が必要になり、データ結合をビジュアルエディタだけで維持するのが困難でした。リレーションが深くなると表示速度も低下するのが想定外でした。
最終的に一部機能をREST API経由で外部DBへ移行し、Bubble側はフロントとしてUIを保持する構成に変更して課題を解消しました。

データ量が多い場合は最初から外部DB連携を前提に設計しましょう。
Adaloでモバイルアプリを構築→動作が重くユーザー離脱が増えた

Adaloでモバイルアプリを開発した際、モバイル固有のUX最適化が難しく、リスト表示でスクロールがカクつく問題が発生しました。画像キャッシュの最適化設定も限定的で通信量が増大しました。
その後、UIコンポーネントを削減し、静的画像をWebPへ変換するなどの軽量化チューニングを行うことで離脱率を15%改善しています。

ユーザー計測ツールでファーストビューの表示速度を定点監視しましょう。
STUDIOでコーポレートサイト制作→SEOの柔軟な対応が難しかった

STUDIOでコーポレートサイトを開発した際、パンくずリストのマークアップ制御ができず構造化データエラーが発生しました。ヘッダータグも自動挿入のみで細かい調整ができませんでした。
一部コードを埋め込むカスタムスクリプト機能で追加対応したものの、保守コストが上昇してしまいました。SEO優先のサイトは要件定義の段階で、タグ制御の可否を確認すべきことを学びました。

検索流入重視ならHTMLエクスポート機能の有無を重視しましょう。
ノーコード開発に関するよくある質問
ノーコード開発ツールの選定に際して、よく聞かれる疑問に回答します。導入に悩まれている場合は、最終判断にぜひお役立てください。

疑問点は早めに洗い出し、担当ベンダーへ直接ヒアリングすると確実です。
Q.ノーコード開発って結局どんな人・企業に向いているんですか?
ノーコード開発は要件が明確で工数を抑えたい中小企業や、PoCを短期間で立ち上げたい新規事業部に向いています。社内にプログラミング知識が少ない場合でも導入効果が大きいです。
一方、独自アルゴリズムを実装したい企業や既存システムと統合する大規模開発には制約が多いため、単体での導入は向きません。ローコードやスクラッチと組み合わせることをおすすめします。

最初は限定した機能だけをノーコードで構築し、段階的に範囲を広げるとリスクが低減します。
Q.ノーコードでもセキュリティ対策はできますか?
主要なノーコードツールにはTLS暗号化や2段階認証が備わっているため、安心して開発・運用できます。
ただし、脆弱性診断や監査ログの内容はサービスにより異なるため、確認が必要です。業界ガイドラインに準拠した設定テンプレートがあるか確認し、不足分は外部製品での補完を検討しましょう。

利用規約だけでなく、技術仕様書を取得し内部統制担当とレビューしましょう。
Q.ノーコード開発で後悔しないためにはどうすればいい?
ノーコード開発での失敗を未然に防ぐために、要件定義の段階で下記の項目を明らかにし、チーム全体で合意を取っておきましょう。
- 今後3年間の拡張計画
- 変更頻度
- UIの微調整要否
- SEO対策の重要度
- 特殊要件の有無
当てはまる項目が多いほどノーコード開発では対応できなくなる可能性が高まります。
無料トライアルを活用して、実務さながらの開発を体験しておくことも重要です。パフォーマンス測定を行い、投資効果を検証することで失敗を最小限に抑えることができます。

無料版で測定した指標を本契約後のSLAに盛り込むと安心です。
Q.ノーコードで開発したあと、将来的に拡張できますか?
プラグインマーケットが充実しているノーコード開発ツールであれば後から機能追加できる可能性があります。しかし、複雑なロジックは制限される場合があるため、エクスポート機能があるか事前確認が必須です。
設計段階で拡張ポイントをモジュール化し、外部に処理を連携できる構成にしておくと大幅な改修を避けられます。導入を後悔しないためにも、長期的な開発・運用プランが必須です。

更新予定の機能リストを公開しているサービスは長期的に拡張しやすいです。
Q.ノーコードとローコードの違いは何ですか?
項目 | ノーコード | ローコード |
---|---|---|
開発手法 | GUI操作のみで画面・機能を組み立てる | GUI中心だが、必要に応じてコードを追記し自由に拡張可能 |
主な利用者 | プログラミング不要のビジネス担当者・非エンジニア | 最低限のコーディング知識を持つIT担当者・エンジニア |
拡張性 | 標準機能の範囲内で、細かな要件には制限がある | テンプレート外の機能や外部連携もコードで実装可能 |
開発速度 | ドラッグ&ドロップのみで最速 | GUI+必要な箇所だけコードを書くため高速 |
導入コスト | 低い(数時間〜数日で習得、無料プランあり) | 中程度(GUI学習+基礎コーディング学習が必要、有料プラン多) |
適した用途 | 簡易なWebサイト、LP、社内向け小規模アプリ | 複雑な業務システムやカスタム機能が多いアプリ |
メンテナンス性 | プラットフォーム更新に依存、バージョン管理は不可 | Git等によるコード管理で差分追跡やバージョン管理が容易 |
ベンダーロックイン | 強い(他サービスへの移行に大規模工数が必要) | コード資産を一部持ち出せる場合があり、移行負荷が緩和可能 |
ノーコードはコードを書かずにGUI操作のみで開発します。ローコードはテンプレートに加えて部分的にコードを記述し柔軟性を確保する手法です。
自由度と学習コストのバランスを見極め、要件に応じて使い分けることが賢明です。

複雑ロジックを最小限に抑えられる設計ならノーコードで十分です。
