【徹底解説】QCDSEとは?ITシステムにおける意味と優先順位、改善方法を解説!
ITシステムに携わっていると「QCDSE」という単語を耳にしたことがある人もいるはずです。あまり意味が分からず、ただうなずいているだけの人も少なくないでしょう。
しかし、ITシステムに携わるのであれば、QCDSEという考え方を知っておいて損はありません。QCDSEを知れば労働環境の改善だけでなく、納品物の品質も高められるでしょう。そこで、今回はそんなQCDSEの意味を解説するとともに、ITシステムで利用するメリットを紹介します。
目次
ITシステムのQCDSEとは?
ITシステムにおけるQCDSEとは、施工管理に欠かせない重要な5つの要素を並べた考え方です。製造業や建設業などで主に使われますが、ITシステムにおいても利用されています。
そこで、まずはITシステムにおけるQCDSEの考え方から紹介します。ここで紹介する内容は以下の通りです。
- QCDSEの語源について
- 製造業のQCDSEとの違いについて
QCDSEの語源は?
ITシステムにおけるQCDSEとは、施行管理で重要な以下5つの要素の頭文字をとった言葉です。
- Quality…品質
- Cost…コスト
- Delivery…工程
- Sefety…セキュリティの安全
- Environment…システム環境
製造業の管理でよく使われているフレームワークであるため、聞いたことがある人もいるかもしれません。QCDSEにおいては品質が最重要とされています。そのため、まずはQualityを先頭に並べています。
製造業のQCDSEとの違いは?
QCDSEのなかでも「QCD」に関しては、製造業とITシステムでそれほど意味が変わりません。しかし、残りの「SE」は業種によって使用する単語と意味が異なるので、それぞれ確認しましょう。
項目 | ITシステムでのSEの意味 | 製造業でのSEの意味 |
---|---|---|
Safety | セキュリティの安全 | 安全 |
Environment | システム環境 | 環境 |
ITシステムにおけるSafetyはセキュリティの安全性を表します。納品物が企業の秘匿性に関わるITシステムにおいて、セキュリティの安全性は大切です。一方で、製造業では安全を表す意味を採用していて、業務上の安全性を大切にしています。
また、製造業のEnvironmentでは近隣や周囲の環境に配慮する一方で、ITシステムではハードウェアやネットワークなどのシステム環境の管理を意味します。
ITシステムのQCDSEの意味
製造業とのQCDSEの違いを把握したところで、ITシステムにおけるQCDSEの意味を詳しく理解していきましょう。ITシステムにおけるQCDSEの意味は以下の通りです。
- Quality…品質
- Cost…コスト
- Delivery…工程
- Sefety…セキュリティの安全
- Environment…システム環境
Quality(品質)
プロジェクトを達成するために大切なのは、成果物の「Quality(品質)」です。そのため、成果物への品質マネジメントは必須といえるでしょう。プロジェクトの規模によって品質マネジメントの作業は異なりますが、小規模プロジェクトの場合は品質を確認するだけで十分とされています。
下記の品質マネジメント方法を知っておくと便利です。
品質マネジメント方法 | 特徴 |
---|---|
品質計画 | ・プロジェクトにおいて、品質を保証し改善していくための責任や計画、経営資源を明確にする ・品質マネジメント計画書に詳細を記載する |
品質保証 | 品質マネジメント計画書通りに進んでいるか検査する |
品質管理 | 品質マネジメント計画書に沿って問題点を洗い出し、解決へと導く |
Cost(コスト)
Quality(品質)の次はCost(コスト)です。プロジェクトの規模が大きいとコストも大幅にあがるので、正確なコストマネジメントが求められます。コストマネジメントは下記の流れでおこなうのが一般的です。
- 管理計画コスト…管理を重点においたコストマネジメント計画書を作成
- 見積もりや予算設定…プロジェクトにかかる予算を設定し、見積もりを精算
Delivery(工程)
ITシステムにおけるDelivery(工程)は、開発期間と利用期間の2点を意味します。開発期間とは主に納期のことを表し、特に納期設定がシビアなITシステム業界では大切なマネジメントです。
また、ITシステムの利用期間中に小さい改良が追加される可能性があるため、システムリリース後の管理も大切といわれています。ユーザー目線で見るとシステムの寿命管理に加えて、端末データの管理やアップデートも大切です。
Sefety(セキュリティの安全)
ITシステムにおけるSefetyは「セキュリティの安全性」を意味します。一般的なコンピュータセキュリティだけでなく、クラウドならネットワークセキュリティも大切です。セキュリティ対策を実施しなければ秘匿性の高い情報が流出してしまい、企業としての信頼を失いかねません。
また、ITシステムは目に見えないサービスでもあるため、セキュリティの安全性を確保する視点は大切といわれています。
Environment(システム環境)
ITシステムにおけるEnvironmentは「システム環境」という意味です。システムを構築するハードウェアやネットワークなどの土台部分に該当します。システム環境は数年単位から数ヶ月単位での更新が必要なため、定期的な更新作業が必要です。
メモリの追加で部分的な拡張に対応していて、クラウドを利用すれば設定画面から本体の強化も可能です。
ITシステムのQCDSEの優先順位
QCDSEで最も大切な項目はQuality(品質)です。企業ごとに優先順位が異なるものの、一般的には「品質」を優先することは覚えておきましょう。
最優先はQuality(品質)
ITシステムにおけるQCDSEで最も重視されるのは「Quality(品質)」です。いくら価格が安くて納品対応が速くても、顧客が望む品質でなければ意味がありません。
逆に、高価格&納品が遅くても、高品質であれば顧客の選択肢に加わる可能性があります。
また、品質が良くないとそもそも購入の検討段階にたどり着かないため、成果物の品質には細心の注意を払ってください。
その他を優先すべき状況は?
ITシステムにおけるQCDSEでは「Quality(品質)」が最優先ですが、状況によってはその他の要素を優先すべきです。そこで、それぞれの優先すべき状況を紹介します。
Cost(コスト)が優先される状況
ITシステムを導入する際に、顧客の資金が乏しい場合はCost(コスト)を優先すべきです。そもそも支払う資金が存在しなければ、いくら高品質な成果物を納品しても利益が生まれません。
そのため、従来のプランよりも価格が安いITシステムの導入を促し、コストを優先してもらうようにしましょう。
Delivery(納期)が優先される状況
ITシステムの導入を急いでいる顧客には「Delivery(納期)」を優先してください。システムを利用できれば問題ない場合が多いので、ある程度の品質を保証したうえで成果物を納品しましょう。
Safety(安全性)が優先される状況
企業秘密や秘匿文書を管理するITシステムの導入を検討している企業は、何よりもSafety(安全性)を優先する場合が多いです。そのため、最低でも以下の対策をしているITシステムを納品してください。
- ウイルス対策
- Webセキュリティ診断
- パスワードやログの管理
- 物理的なシステムのバックアップ
Environment(環境)が優先される状況
企業の体制が旧式である場合はEnvironment(環境)を優先してください。ハードウェアやインターネット環境が古いと、最新のITシステムに対応していない場合があります。
また、環境を一新するとなるとそれなりに時間がかかるため、閑散期のタイミングでシステム環境を切り替えるのが一般的です。
ITシステムのQCDSEを改善する3ステップ
今回はとある企業で顧客データなどの情報管理システムを開発していると仮定して、システム開発のQCDSEの改善方法を解説します。ITシステムのQCDSEを改善するためには、以下の3ステップが大切です。
- 現状把握
- 施策立案
- 施策実行・検証
①現状把握
現状の計画とQCDSEの課題を把握しておき、議論で話せるようにしましょう。過去に施策をおこなっている場合はヒアリングを実施し、できる範囲を確認しておくのが大切です。
例えば、情報管理システムを開発する場合は以下の課題が考えられます。
QCDSEの各項目 | 課題例 |
---|---|
Quality(品質) | UIが複雑で使いにくい |
Cost(コスト) | 値段が高い |
Delivery(納期) | 施工レベルに対して作業期間が短い |
Safety(安全性) | セキュリティが脆弱でウイルス感染を許している |
Environment(環境) | ハードウェアやインターネット環境が古い |
②施策立案
QCDSEの課題が浮き彫りになったら、それぞれ対応策を考えましょう。施策を考える際は、QCDSEへの影響も考えたうえで決定しましょう。先ほど記載した情報管理システムのQCDSEの課題を例とすると、以下の対応策が考えられます。
QCDSEの各項目 | 対応策 |
---|---|
Quality(品質) | ヒアリングをもとにUIの改善 |
Cost(コスト) | 市場調査をもとにプライスラインを設定し、価格を選択 |
Delivery(納期) | 設定したプライスラインをもとに、価格に合わせた納期を設定 |
Safety(安全性) | 総務省が掲げる「国民のための情報セキュリティサイト」を参考に、セキュリティ対策を実施 |
Environment(環境) | ハードウェアやインターネット環境を最新版に反映 |
③施策実行・検証
立案した施策をそれぞれ実行しましょう。施策を実行した際に忘れてはいけないのが、必ず検証までおこなうことです。ただ施策を実行していては効果を実感できません。そのため、事前に改善の評価基準を設定しておきましょう。
例えば、情報管理システムにおける「Cost(コスト)」の評価基準を設定する場合は「改善前と後での利用者数の増減」を一つの指標にしてもよいでしょう。利用者が増えていれば改善成功、減っていれば失敗と判断できます。改善に失敗してしまった場合は再び改善点を考えて、施策に取り組まなければいけません。
ITシステムのQCDSEを改善するメリット5つ
ITシステムのQCDSEを改善すると以下5つのメリットが発生します。
- 品質を高められる
- コストを削減できる
- 生産性を高め、納期を短縮できる
- 開発時のトラブルを減らせる
- 労働環境を改善できる
品質を高められる
ITシステムの成果物は品質の良さで成り立っています。そのため、品質が低ければ顧客の満足度を下げてしまうかもしれません。さらに、顧客のロイヤリティもさがる可能性があるため、売上まで減少してしまうでしょう。
しかし、QCDSEにおける「Quality(品質)」を高めることで、成果物の満足度が高まります。すると、結果的に売上の増加にまでつながる可能性が高いです。
コストを削減できる
ITシステムのQCDSEを改善することで、コストの削減につながるでしょう。コストが削減できれば粗利が最大化されるため、企業としての利益をあげやすい環境が整います。
生産性を高め、納期を短縮できる
ITシステムのQCDSEを改善するといらない作業工程が浮き彫りになるので、作業にかかる時間を短縮できます。特に作業の効率化はIT企業のなかでも急務です。経済産業省が発表している「IT 人材需給に関する調査」によると、2030年のIT分野の人材は最大で約79万人も不足することが予想されています。
そのため、労働生産性を高めながら業務に取り組む姿勢がますます重要視されています。システム開発における生産性を改善する方法を知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。具体的な改善ポイントとともに、生産性を可視化する計算方法まで記載しています。
開発時のトラブルを減らせる
ITシステムの開発ともなると部門間を横断した作業になる可能性が高いため、何かとトラブルが発生するものです。例えば、改善課題が伝達しきっておらずに、予想と違った成果物ができてしまう可能性もゼロではありません。
しかし、QCDSEの改善に取り組むと課題が明確になるため、開発時のトラブルを最小限に抑えられます。
労働環境を改善できる
QCDSEの改善に取り組むと労働環境も改善できます。労働環境が改善されて生産性が向上すれば、従業員が作業にかける時間も短縮されるでしょう。そのため、時間を短縮して発生した業務のリソースを他の業務に充てたり、新しい事業に充てたりすることができます。
QCDSEとは?ITシステムにおける意味と優先順位、改善方法を解説! まとめ
製造業とITシステムの分野では、QCDSEが持つ意味が異なります。それぞれの分野でのQCDSEの意味を把握したうえで業務に取り組めば、納品物の品質向上はもちろんのこと、作業効率の改善も期待できるでしょう。
ITシステムの分野では欠かせない考え方なので、この機会にQCDSEを実践的に利用してみましょう。