執筆:Swooo編集部/監修:諸藤 哲耀(株式会社アイビス Swooo)|編集方針・監修体制
生成AIを使ったシステムやサービスの開発を外部に任せたいとき、まずは候補となる会社を一覧で把握しておくと比較が進みます。この記事で紹介する11社の早見表は次の通りです。
| 会社名 | 得意領域 | 上場区分 |
|---|---|---|
| Swooo(株式会社アイビス) | 新規事業のMVP〜業務システム、AI駆動開発 | 東証グロース上場 |
| 株式会社エクサウィザーズ | AIエージェント群、生成AI・DX支援 | 東証グロース上場 |
| PKSHA Technology株式会社 | 自然言語処理・機械学習、AI SaaS | 東証プライム上場 |
| 株式会社ブレインパッド | データ分析・需要予測、AIエージェント事業 | 富士通グループ傘下 |
| 株式会社ELYZA | 大手向けLLMシステム実装・企業特化LLM | ― |
| 株式会社AVILEN | AI・データ活用開発、AI人材育成 | 東証グロース上場 |
| 株式会社ヘッドウォータース | エンタープライズAIの本番運用支援 | 東証グロース上場 |
| JAPAN AI株式会社 | AIプラットフォーム群とAI受託開発 | 非上場 |
| 株式会社ギブリー | AX事業、法人向け生成AIプラットフォーム | 非上場 |
| 株式会社モンスターラボ | デジタルコンサルティング、AIエージェント | 東証上場 |
| 株式会社ABEJA | LLMのビジネス実装、AIガバナンス支援 | 東証グロース(5574) |
2026年のAI開発は、LLMのAPIを業務に組み込む実装、社内データを参照させるRAG、複数の業務を自動化するAIエージェントが主流になっています。モデルをゼロから学習させることが前提だった頃と比べ、必要な期間も費用の相場観も変わりました。発注先を選ぶときは、この変化を踏まえて「どの実装方式が自社の課題に合うか」を一緒に整理できる会社かどうかが判断材料になります。
この記事では、11社の比較と費用相場に加えて、技術や費用とは別の軸で審査が入る場面(情報セキュリティ体制、取引先審査、事業継続性、監査対応)で何を確認するかも整理しています。
AI受託開発会社の選び方(2026年版)
AIを使う開発は、作りたいものの輪郭が固まりきっていない状態で相談が始まることが多いため、進め方や得意領域を会社ごとに見極める必要があります。ここでは5つの観点を挙げます。
解きたい課題とフェーズ(PoC/本開発/運用)を先に決める
AIの受託開発は、技術検証だけを行うPoC(概念実証)、本番で使うシステムを作る本開発、運用しながら精度を改善していく段階で、必要な体制が変わります。
まず「いま何を確かめたいのか」をはっきりさせておくと、見積もりの精度が上がります。たとえば「自社データでLLMがどこまで使えるか試したい」段階と「業務に組み込んで毎日使うものを作りたい」段階では、依頼すべき内容も費用も別物です。PoCで筋の良さを確認してから本開発に進む、という二段構えを前提に相談に乗ってくれる会社は、無理のない進め方を提案できます。
実装方式(LLM API活用/RAG/独自モデル開発)の説明力を確認する

2026年現在、AI開発の実装方式は大きく3つに分かれます。
- LLM API活用:ChatGPTやClaudeなどのAPIを呼び出して、文書生成・要約・分類などを行う方式。多くの業務課題はここで解決できます。
- RAG(検索拡張生成):社内文書やデータベースをAIに参照させ、自社固有の情報にもとづいて回答させる構成。データの前処理と検索精度の調整が中心になります。
- 独自モデル開発:既製のAPIでは精度が出ない領域に限って、モデルを学習・調整する方式。費用も期間も大きくなります。
商談で「自社の課題にはどの方式が向いているか」を聞いたとき、3つの違いと使い分けの理由を具体的に説明できる会社を選ぶと、過剰な開発を避けられます。複数の業務をまたいで自動化する構成を検討している場合は、「AIエージェント開発」の記事も判断の材料になります。
AI駆動開発(AIコーディング)の体制があるか
AIを「作るもの」に組み込むだけでなく、「作る過程」にもAIを活用しているかは、2026年の新しい確認ポイントです。
AIコーディングツールの実用化で、開発会社の生産性には差が開きはじめています。設計書やコーディング規約を整備した上でAIにコードを生成させ、人間のエンジニアが設計判断と品質確認に集中する体制を持つ会社は、同じ予算でも実現できる範囲が広くなります。
ただし「AIを活用しています」という説明だけでは、実際の体制は判断できません。次の4点まで踏み込んで聞くと、体制の有無が見えてきます。
- どの工程で使っているか:要件整理、設計書の作成、実装、テストコードの生成、コードレビューのうち、どこにAIが入っているか。実装だけに使う場合と、設計から検証まで通して使う場合では、成果物の品質の作り方が変わります。
- ツール名と使い分け:使っているツールの名前(Claude Code、GitHub Copilot、Cursorなど)と、どの作業にどれを使うかを答えられるか。直近のプロジェクトでの具体例まで出てくるかを見ます。
- 運用ルール:AIに渡してよい情報の範囲(顧客データや認証情報を入力しない運用になっているか)、社外サービスへの送信可否、生成物の取り扱いを定めた社内規程の有無。開発工程のどこにレビューを必ず挟むかも含みます。
- 品質管理の方法:AIが生成したコードを誰がどの基準でレビューするか、テストの自動化がどこまで行われているか、生成物に対する責任の範囲が契約でどう定められているか。第三者ライセンス(OSS)の混入をどう確認しているかも聞いておく項目です。
この4点に具体的に答えられる会社は、AIの活用を個人の工夫ではなく組織の仕組みとして運用しています。進め方の実際は「AI駆動開発」「Claude Codeを使ったAI駆動開発」で解説しています。
データの扱い(学習利用の有無・セキュリティ)を即答できるか
AI開発では、自社のデータや顧客のデータをAIに渡す場面が出てきます。預けたデータがモデルの学習に使われないか、どこに保存されるか、アクセス権限はどう管理されるかを、最初の相談で即答できる会社は、セキュリティを設計の前提に置いていると判断できます。ISO/IEC 27001(ISMS)やプライバシーマークなどの認証を取得しているかも、確認の手がかりになります。
契約の形(準委任・請負)と検収条件を確認する
AI開発には「実際にやってみないと精度が分からない」という不確実性があります。このため、検証フェーズは準委任契約(作業量ベース)、要件が固まった本開発は請負契約(成果物ベース)と、フェーズで契約形態を使い分けるのが一般的です。
とくに確認したいのは検収条件です。AIの出力には誤りが一定割合で含まれるため、「どの水準なら合格とするか」(精度の測り方、テストデータ、判定基準)を契約前にすり合わせておかないと、納品段階で認識の食い違いが起きます。この論点を先回りして提示してくる会社は、AI案件の経験が豊富と判断できます。

AI受託開発会社おすすめ11選
掲載基準:公式サイトで事業内容・所在地等が確認できる会社のみ掲載しています。記載情報は2026年6月時点の各社公式サイトに基づきます。
まず11社の特徴を一覧で比較できるようにまとめました。詳細は各社の紹介をご覧ください。
| 会社名 | 上場・資本 | 得意領域 | 向いている発注 |
|---|---|---|---|
| Swooo(株式会社アイビス) | 東証グロース(9343) | 新規事業のMVP開発〜業務システム、AI駆動開発 | 新規事業のAIプロダクトを小さく早く検証したい |
| エクサウィザーズ | 東証グロース | AIエージェント群、生成AI・DX支援 | 全社規模のDX・エージェント導入 |
| PKSHA Technology | 東証プライム(3993) | 自然言語処理・機械学習ソリューション | 言語処理中心の大規模プロジェクト |
| ブレインパッド | 富士通グループ(2026年3月に非公開化) | データ分析・需要予測、AI活用 | データ分析主導のAI活用 |
| ELYZA | 非上場 | 大手向けLLMシステム実装・企業特化LLM | 企業特化LLMの研究開発込みの案件 |
| AVILEN | 東証グロース(5591) | AI・データ活用開発、DX/AI人材育成 | 開発と人材育成をセットで進めたい |
| ヘッドウォータース | 東証グロース(4011) | エンタープライズAI導入の本番運用支援 | エンタープライズでの本番運用まで見据えた導入 |
| JAPAN AI | 非上場(ジーニーの関連会社) | AIプラットフォーム群とAIコンサルティング | プラットフォーム活用で早く立ち上げたい |
| ギブリー | 非上場 | AX事業、法人向け生成AIプラットフォーム | 生成AIの業務浸透・活用定着 |
| モンスターラボ | 東証上場 | デジタルコンサルティング、AIエージェント開発・導入 | コンサルティング込みの大型案件 |
| ABEJA | 東証グロース(5574) | LLMのビジネス実装、AIガバナンス支援 | ガバナンス要件が重い企業のLLM実装 |
Swooo(株式会社アイビス)
| 所在地 | 東京都中央区八丁堀一丁目5番1号 |
| 上場 | 東証グロース上場(証券コード9343) |
| 得意領域 | 新規事業のMVP開発〜業務システム、AI駆動開発 |
Swoooは、ibisPaint(世界累計5億ダウンロード超)を運営する東証グロース上場の株式会社アイビスが提供する開発サービスです。新規事業のMVP開発から業務システムまで、ノーコード(Bubble公式Goldパートナー・日本1位)・AI駆動開発・通常開発を要件に応じて使い分けます。
累計50件以上の開発支援を行っており、要件が絞れている案件では最短2週間でMVPを納品しています。リリース前には37項目のチェックリストで動作・セキュリティ・運用面を確認してから引き渡します。
開発工程では、要件管理から設計書作成、実装、自動レビューまでをAI前提で体系化した開発基盤を自社で構築・運用しています。本記事の選定基準に挙げた4点で言えば、ツールはClaude Codeを中心としたAIコーディング環境を使い、運用ルールは命名規則・ブランチ運用などを定めた社内開発規約で統一し、品質管理はリリース前37項目のチェックリストで確認しています。AIライティングツール「AI Writer」など自社AIプロダクトの開発・運用経験をもとに、AI機能の組み込みを要件定義の段階から設計します。
AI駆動開発の進め方については、別記事「Claude Codeを使ったAI駆動開発」でも解説しています。
株式会社エクサウィザーズ
| 所在地 | 東京都港区芝浦4-2-8 |
| 設立 | 2016年2月 |
| 上場 | 東証グロース上場 |
| 得意領域 | AIエージェント群、生成AI・DX支援 |
AIエージェント群「exaBase」を中心に、生成AIの導入やDX支援を提供しています。取引先としてアサヒグループホールディングス、アステラス製薬、JAXA、NTTドコモなどを公表しており、大手企業・公的機関向けの実装に強みがあります。
PKSHA Technology株式会社
| 設立 | 2012年10月(旧社名AppReSearch、2014年8月に商号変更) |
| 上場 | 東証プライム上場(証券コード3993) |
| 得意領域 | 自然言語処理・機械学習、AI SaaS |
東京大学発のテクノロジー企業で、自然言語処理・機械学習のアルゴリズムソリューションを提供しています。大規模言語モデルを扱う「PKSHA LLMS」やAI SaaSも展開しています。
株式会社ブレインパッド
| 所在地 | 東京都港区六本木3-1-1 |
| 設立 | 2004年3月 |
| 上場 | 2026年3月に株式非公開化し富士通グループ傘下 |
| 得意領域 | データ分析・需要予測、AIエージェント事業 |
データ分析・需要予測を長く手がけてきた会社です。2026年3月に株式を非公開化し富士通グループの傘下に入りました。子会社のBrainPad AAAが2025年3月よりAIエージェント事業を展開しています。
株式会社ELYZA
| 所在地 | 東京都文京区本郷3-15-9 |
| 設立 | 2018年9月 |
| 得意領域 | 大手向けLLMシステム実装・企業特化LLM研究開発 |
大手企業向けのLLMシステム実装と、企業特化LLMの研究開発を行っています。東京大学の松尾豊教授が特別顧問を務めます。公表実績として、交通インフラの通話要約で最大54%の効率化、金融の応対文面作成で50%の省力化などを挙げています。
株式会社AVILEN
| 所在地 | 東京都中央区日本橋馬喰町2-3-3 |
| 上場 | 東証グロース上場(証券コード5591) |
| 得意領域 | AI・データ活用開発、DX/AI人材育成 |
AI・データ活用の開発と、DX/AI人材の育成を提供しています。ISO/IEC 27001とプライバシーマークを取得しており、データの扱いに関する体制を整えています。
株式会社ヘッドウォータース
| 所在地 | 東京都新宿区西新宿6-5-1 |
| 上場 | 東証グロース上場(証券コード4011、2020年9月上場) |
| 得意領域 | エンタープライズAI導入の本番運用支援 |
エンタープライズ向けのAI導入を本番運用まで支援しています。Microsoftエコシステムの活用、AI駆動開発、AIエージェント開発を手がけています。
JAPAN AI株式会社
| 所在地 | 東京都新宿区西新宿6-8-1 |
| 設立 | 2023年4月 |
| 上場 | 非上場(株式会社ジーニーの持分法適用関連会社) |
| 得意領域 | AIプラットフォーム群とAIコンサル・受託開発 |
「CHAT」「AGENT」「MARKETING」などのAIプラットフォーム群を提供し、あわせてAIコンサルティングと受託開発を行っています。株式会社ジーニーの持分法適用関連会社です。
株式会社ギブリー
| 所在地 | 東京都渋谷区南平台町15-13 |
| 設立 | 2009年4月 |
| 上場 | 非上場 |
| 得意領域 | AX事業、法人向け生成AIプラットフォーム |
AX(AIトランスフォーメーション)事業として、法人向け生成AIプラットフォーム「法人GAI」を提供しています。ISO27001・ISO27017・プライバシーマークを取得しています。
株式会社モンスターラボ
| 所在地 | 東京都渋谷区広尾1-1-39 |
| 設立 | 2006年2月 |
| 上場 | 東証上場 |
| 得意領域 | デジタルコンサルティング、AIエージェント開発・導入 |
デジタルコンサルティングを軸に、AIエージェントの開発・導入を提供しています。世界20の国と地域で事業を展開しています。
株式会社ABEJA
| 設立 | 2012年9月 |
| 得意領域 | LLMのビジネス実装、AIガバナンス支援 |
「ABEJA Platform」や「ABEJA LLM Series」を通じて、LLMのビジネス実装を支援しています。AIガバナンスの支援も提供しています。
AI受託開発の費用相場
実装方式で見る費用の目安
AI開発の費用は、どの実装方式を選ぶかで大きく変わります。発注先を比較する前に、相場観を持っておくと見積もりの妥当性を判断しやすくなります。2026年時点の目安は次の通りです。
| 開発内容 | 費用目安 |
|---|---|
| LLM API活用の小規模開発 | 50万〜300万円 |
| RAG構築を含む開発 | 100万〜1,000万円 |
| 事業に組み込む本格開発・AIエージェント | 500万〜3,000万円 |
| 独自モデル開発を含む大規模開発 | 1,000万円〜 |
同じ「AI開発」でも、API活用の小規模なものとRAGや独自モデルを含むものでは桁が変わります。「AI開発は数千万円かかる」という情報と「数十万円でできる」という情報が混在するのは、この方式の違いが説明されないまま金額だけが語られるためです。見積もりを比較する際は、総額ではなく内訳(要件定義・AI機能の実装・アプリ本体・運用)を確認し、「なぜその実装方式なのか」の説明を求めることをおすすめします。
時間軸で見る費用の読み方(小さく検証→本格導入→運用)
方式ごとの相場を把握しても、「うちはいくらから始められるのか」はまだ決まりません。同じ方式でも、小さく検証する段階と業務に本格導入する段階では、作る範囲が違うためです。
ここで押さえておきたいのは、上のレンジが段階ごとに積み上がる別料金ではなく、同じレンジの中でどこに位置するかが変わるという点です。方式軸と時間軸を交差させると、次のような読み方になります。なお、独自モデル開発を含む大規模開発は個別要件による幅が大きいため、この表では扱っていません。
| 段階 | LLM API活用(50万〜300万円) | RAG構築を含む(100万〜1,000万円) | 事業プロダクト・AIエージェント(500万〜3,000万円) |
|---|---|---|---|
| 小さく検証する | レンジの下限側。用途をひとつに絞った試作 | レンジの下限側。対象データを一部門・一文書群に限定した検証 | この段階では左の2列で検証し、レンジには入らないのが一般的 |
| 本格導入する | レンジの上限側。既存業務への組み込みと権限設計を含む | レンジの中〜上限側。データ整備、検索精度の調整、業務フローへの反映 | レンジ全体。複数業務の連携、UI、権限、監視まで含む |
| 運用・改善する | API利用料と応答品質の監視 | 参照データの更新と検索精度の再調整 | 機能追加、対象業務の拡張、エージェントの追加 |
この読み方に慣れると、見積もりの妥当性を2つの質問で確かめられます。ひとつは「この金額はどの方式のどの段階を前提にしているか」、もうひとつは「次の段階に進むとき、作り直しになる部分はどこか」です。検証段階の成果物をそのまま本番に育てられる設計になっているか、それとも作り直す前提かで、通算の費用は変わります。
また、開発費とは別に継続的にかかるコストがあります。生成AIのAPI利用料(処理量に応じた従量課金)、RAGの参照データの整備・更新、応答品質の監視といった運用コストです。初期見積もりだけで判断せず、リリース後の月額コストの試算も依頼することをおすすめします。
費用の内訳や方式別の詳しい相場は、別記事で解説しています。
AIアプリ開発の費用相場はいくら?方式別の料金と内訳【2026年版】
大手企業・上場企業が発注先に確認する体制面の項目
発注元の規模が大きくなると、技術力や費用とは別の軸で発注先を確認する工程が入ります。事業部門の判断だけでは進まず、情報システム部門・購買部門・法務部門が加わって書類のやり取りが発生するためです。この工程を見込んでいないと、開発の中身が決まっているのに着手が数週間から数ヶ月単位でずれることがあります。
ここでは、その場面で確認される4つの項目と、相談の初期段階で聞いておくとよいことを整理します。
情報セキュリティ体制は「認証の有無」より「適用範囲」で見る
ISO/IEC 27001(ISMS)やプライバシーマークは有力な手がかりですが、取得しているかどうかだけでは判断材料になりません。認証には適用範囲があり、全社が対象か特定部門だけか、受託開発業務が範囲に含まれているかで意味が変わります。認証書に記載された適用範囲を見せてもらうのが確実です。
認証と並行して確認したいのは、日々の運用です。
- 開発環境と本番環境が分離されているか、本番データを開発環境に持ち出さない運用になっているか
- アクセス権限の付与と削除の手順(担当者が離任したときにいつ権限が消えるか)
- 作業端末の管理(貸与端末か持ち込みか、暗号化とマルウェア対策の状況)
- 脆弱性診断の実施範囲と頻度、指摘事項の修正フロー
- インシデント発生時の連絡経路と報告までの時間の目安
- 再委託先がある場合の管理方法(同等の水準を課しているか)
AI開発ではここに生成AI固有の論点が加わります。入力したデータがモデルの学習に使われない契約になっているか、データの処理と保存がどの国・リージョンで行われるか、プロンプトや応答のログをどこに何日保持するか、社内に生成AIの利用規程があるか。設計書や仕様にも顧客情報が入る前提で、開発側がどこまでルール化しているかを見ます。
実務的な見極め方として、情報セキュリティ質問票(チェックシート)への回答経験を聞くのが早いです。数十〜数百項目の質問票に回答した経験がある会社は、社内の規程と証跡が揃っているため回答が早く、審査の往復回数が減ります。
取引先審査(与信・反社チェック)に出せる情報があるか
新規の取引を始めるとき、購買・管理部門が取引先の信用調査と、反社会的勢力に該当しないことの確認を行うのが一般的です。開発会社側に求められるのは、登記事項証明書、会社概要と役員情報、直近の決算に関する情報、反社会的勢力ではないことの表明保証条項への同意などです。
上場企業の場合は、有価証券報告書や決算短信で財務情報が継続的に開示されているため、調査する側が参照できる資料が最初から揃っています。非上場の会社に依頼する場合は、決算情報の開示に応じられるか、信用調査会社のデータベースに情報が登録されているかを、早い段階で確認しておくと手続きの見通しが立ちます。
設立から数年の会社や、取引実績のない会社が候補に入るときは、審査に時間がかかる前提でスケジュールを組みます。相談の初期に「取引開始までに必要な書類と、提出にかかる期間」を聞いておくと、開発の着手時期を現実的に置けます。
事業継続性(BCP)と担当体制の継続性
AIを使ったシステムは、リリースしてからが本番です。API提供元のモデル更新、参照データの変化、業務側の運用変更に合わせて手を入れ続ける前提になるため、数年単位で開発側が存続し、担当が引き継がれるかどうかが実務に影響します。
確認したいのは次の点です。
- 担当体制:主要な担当者が離脱した場合に引き継げる人が社内にいるか。設計内容が一人の頭の中だけにある状態になっていないか
- 資産の所在:ソースコード、設計書、インフラの設定、認証情報が発注者側のアカウントやリポジトリに置けるか。契約が終わったときに引き渡される範囲が明記されているか
- 障害時の体制:連絡経路、一次対応の時間帯、復旧の目標時間。運用保守を別契約にする場合はその条件
- 会社の基盤:資本の状況、上場区分、受託以外の事業を持っているか。単一の取引に依存していない体制は、長期運用を任せる判断材料になります
監査に耐える契約と文書化
会計監査や内部監査では、支払いの根拠となる書類の整合性が確認されます。契約書、発注書、検収書、成果物の一覧、仕様変更の記録が揃っていて、内容が一致している状態が求められます。AI開発は途中で仕様が動きやすいため、この記録の残し方を最初に決めておくと後の説明が楽になります。
- 成果物と受け入れ基準の定義:契約書または別紙に成果物の一覧と検収基準が紐づいているか。AIの精度を検収条件に含める場合は、測り方とテストデータの決め方まで書き込む
- 変更管理:仕様変更の依頼と合意が記録に残る運用か(議事録、課題管理ツール、変更履歴)。追加費用が発生する場合の手続き
- 権利の帰属:ソースコードと成果物の著作権がどちらに帰属するか。第三者のOSSやライブラリを使う場合のライセンス確認の方法と一覧の提出
- 生成物の扱い:AIを使って作成したコードやドキュメントについて、権利関係とライセンス混入の確認をどう行っているか
- 再委託:再委託の可否、事前承諾の要否、再委託先での情報の扱い
- 作業報告:準委任契約の場合、工数の内訳と作業内容が定期的に書面で提示されるか
これらは開発が始まってから整えるより、見積もりを比較する段階で聞いておくほうが早く済みます。4項目のうちどこがネックになりそうかが分かれば、候補を絞る基準にもなります。
発注前チェックリスト
問い合わせや商談の前に、次の項目を整理しておくと話が早く進みます。
- 解きたい課題とフェーズ(PoC/本開発/運用)を言語化できているか
- 実装方式(LLM API活用/RAG/独自モデル開発)の違いと使い分けを説明してもらえるか
- 開発工程でのAI活用について、使用工程・ツール名・運用ルール・品質管理の4点まで聞けたか
- 預けるデータの学習利用の有無・保存場所・アクセス管理を即答してもらえるか
- 過去の類似案件と、そこで使った実装方式を確認できたか
- 見積もりが総額だけでなく内訳(要件定義・実装・運用)で提示されているか
- 見積もりがどの方式のどの段階(検証/本格導入)を前提にしているか確認したか
- 情報セキュリティ認証の適用範囲と、質問票への回答経験を確認したか
- 取引開始までに必要な書類と、提出にかかる期間を聞いたか
- ソースコードと設計書の管理場所、契約終了時の引き渡し範囲が決まっているか
- 成果物の一覧と検収基準が契約書面に紐づいているか
よくある質問
AI開発会社とSIerの違いは何ですか?
明確な線引きはなく、両者の領域は重なりつつあります。一般に、SIer(システムインテグレーター)は基幹システムや既存システムの構築・連携を広く手がけ、AI開発会社は生成AIやLLM、機械学習をシステムに組み込む部分を中心に手がけることが多い、という違いがあります。近年は大手SIもAI部門を持ち、AI専業の会社もシステム全体の開発を請けるため、「自社の課題にどちらの強みが必要か」で選ぶのが実用的です。
PoC(概念実証)だけの依頼は可能ですか?
多くの会社で可能です。本開発に進む前に「自社データでLLMがどこまで使えるか」「想定した精度が出るか」を小さく検証するPoCは、AI開発でよく行われる進め方です。PoCの結果をもとに本開発の可否や規模を判断できるため、いきなり大きく作るより無理がありません。相談時に、PoCから本開発までの進め方を提案できるか確認するとよいでしょう。PoCの費用相場と、発注前に決めておく4つのことはPoC開発の記事にまとめています。
自社にデータがなくても依頼できますか?
依頼内容によります。LLMのAPIを活用した文書生成・要約・分類などは、自社固有のデータがなくても実装できる場合があります。一方、社内情報にもとづいて回答させるRAGや、独自モデルの開発には、参照させるデータや学習用のデータが必要です。データがない・整っていない場合は、データの収集・整理から相談に乗ってくれる会社を選ぶと進めやすくなります。
開発期間はどのくらいかかりますか?
実装方式と規模によって変わります。LLM API活用の小規模な開発であれば数週間〜数ヶ月、RAGや業務組み込みを含む開発では数ヶ月、独自モデル開発を含む大規模なものではさらに長くなる傾向があります。PoCを挟む場合は、検証期間を別途見込んでおくと計画が立てやすくなります。発注元の規模が大きい場合は、取引先審査やセキュリティ確認の期間も別に見込んでおくと計画がずれにくくなります。
費用はどのくらいが目安ですか?
実装方式によって幅があります。目安として、LLM API活用の小規模開発で50万〜300万円、RAG構築を含む開発で100万〜1,000万円、事業に組み込む本格開発やAIエージェントで500万〜3,000万円、独自モデル開発を含む大規模開発で1,000万円〜です。小さく検証する段階は各レンジの下限側、業務に本格導入する段階は上限側に寄る、という読み方をすると見積もりの位置が掴めます。詳しくは「AIアプリ開発の費用相場はいくら?方式別の料金と内訳【2026年版】」を参考にしてください。
大手企業への納品経験があるかを見極める方法はありますか?
書類対応の経験を聞くのが早い方法です。情報セキュリティ質問票に回答した経験、認証の適用範囲を提示できるか、取引先審査で求められる書類を揃えられるか、成果物一覧と検収基準を契約書面に落とし込んだ経験があるか。これらに具体的に答えられる会社は、社内に規程と記録の運用があるため、審査工程で止まりにくくなります。
AI開発の発注で失敗しやすいパターンはありますか?
よくあるのは3つです。①検証の目的が曖昧なままPoCを始めてしまい、終わっても本開発に進むべきか判断できない、②AIの出力が常に正しい前提で業務を設計してしまい、確認工程の負荷で運用が止まる、③API利用料やデータ更新などの運用コストを見込まず、リリース後に予算が不足する。いずれも、発注前に「何を確かめたいか」「AIの誤りをどう扱うか」「月々いくらかかるか」を確認しておくことで避けられます。
まとめ
2026年のAI受託開発は、LLM API活用・RAG・AIエージェントが主流になり、必要な期間や費用の相場観もかつてとは変わりました。発注先を選ぶときは、解きたい課題とフェーズを先に決め、実装方式の使い分けを説明してもらい、データの扱いを最初に確認することがポイントです。費用は方式別のレンジと「検証か本格導入か」の段階を掛け合わせて読むと、見積もりの位置が判断できます。
あわせて、情報セキュリティ体制の適用範囲、取引先審査に出せる情報、事業継続性、監査に耐える契約と文書化の4項目も、開発が始まる前に確認しておく価値があります。技術の話が進んでいても、この工程で着手が遅れることがあるためです。
Swoooは、東証グロース上場の株式会社アイビス(証券コード9343)が提供する開発サービスです。累計50件以上の開発支援をもとに、新規事業のMVP開発から業務システムまで、要件が絞れている案件では最短2週間でMVPを納品しています。AI開発の進め方や費用についての相談を受け付けています。
じっくり比較したい方へ:会社紹介資料(体制・実績・進め方)を見る
