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Difyとは?できること5つ・料金・クラウドとセルフホストの選び方【2026年最新】

執筆:Swooo編集部/監修:諸藤 哲耀(株式会社アイビス Swooo)

Difyとは?できること5つ・料金・クラウドとセルフホストの選び方【2026年最新】

執筆:Swooo編集部/監修:諸藤 哲耀(株式会社アイビス Swooo)

Dify(ディファイ)は、チャットボット・RAG(社内文書を参照して回答するAI)・AIエージェント・業務ワークフローといったLLMアプリケーションを、プログラミングなし、あるいは最小限のコードで構築できる開発プラットフォームです。オープンソースとして公開されており、無料で自社環境に構築できるセルフホスト版と、登録すればすぐ使えるクラウド版の両方から選べます。

この記事は、「Difyとは何か」を初めて調べる方に向けた総合ガイドです。Difyでできること・できないこと、料金の全体像、クラウド版とセルフホスト版の選び方、企業で使う場合に押さえるべき点、ChatGPTやZapier・n8nとの違いまでを1本で整理します。読み終えたとき、「自社の用途にDifyが合うか」「次に何を調べればよいか」を判断できる状態を目指します。料金・仕様は2026年7月23日時点の公式公表内容にもとづいています。

Difyとは:LLMアプリを組み立てるための開発プラットフォーム

まず位置づけをはっきりさせます。Difyは、ChatGPTのような「完成したAIサービス」ではなく、生成AIを組み込んだ自社用のアプリケーションを作るための土台です。画面上でブロックをつなぐ操作を中心に、プロンプトの設計、社内文書の取り込み、外部ツールとの接続、公開用APIの発行までを一つの環境で完結できます。従来ならエンジニアがコードを書いて数週間かけていたLLMアプリの試作を、非エンジニアでも数時間で形にできる点が、広く使われている理由です。

技術的な特徴として重要なのがモデル非依存の設計です。OpenAI・Anthropic・Google(Gemini)・Azure OpenAIをはじめ100以上のモデルプロバイダに対応し、OllamaやLocalAI、GPUStackを経由すれば自社サーバー上のローカルLLMにも接続できます。つまり「どのAIを使うか」と「アプリをどう組むか」を切り離して考えられるため、特定のAIベンダーに縛られたくない場合や、あとからモデルを乗り換えたい場合にも構成を保ったまま切り替えられます。

開発元と運営体制:LangGenius社と日本法人

Difyを開発しているのは米国のLangGenius, Inc.で、2023年にオープンソースとして公開しました。ソースコードはGitHub上で公開されており、LLMアプリ開発基盤としてはトップクラスの開発者コミュニティを持ちます。事業面でも、Series Pre-Aラウンドで3,000万ドルを調達しており、オープンソースプロジェクトにありがちな「開発が止まるリスク」に対して一定の裏づけがあります。

日本市場との関わりも深く、2025年2月には日本法人のLangGenius株式会社が東京に設立されました。同年9月にはNTTデータなどと共同で一般社団法人Dify協会が設立され、国内でのコミュニティ活動や品質基準づくりが進んでいます。また、運営会社としてSOC 2 Type IIとISO 27001:2022の認証を取得しており、クラウド版を企業で利用する際のセキュリティ評価の材料も揃っています。海外ツールを業務に採用するときに気になる「日本でのサポート体制」「運営元の信頼性」の両面で、企業が検討の土俵に載せやすい状態になっているといえます。

提供形態はオープンソースとクラウドの二本立て

Difyには大きく3つの提供形態があります。どれを選ぶかで費用も運用体制も変わるため、最初に全体像を押さえてください。

提供形態概要向いている使い方
Dify CloudLangGenius社が運用するクラウドサービス(SaaS)。アカウント登録だけで使い始められる個人・チームでの検証、小規模な試験導入
Community Edition(セルフホスト)無料のオープンソース版。Dockerで自社サーバーや自社クラウド環境に構築する社内データを自社の管理下に置きたい本番運用(インフラ運用体制がある場合)
Dify EnterpriseSSO・監査ログ・複数ワークスペース管理などに対応した法人版。個別見積・年間契約。自社環境へのセルフホストにも対応全社展開、セキュリティ・統制要件の厳しい企業

「オープンソースで無料でも使えるし、クラウドで手軽にも使える」という二本立てが、Difyの普及を支えている構図です。個人や小さなチームはクラウド版で気軽に始め、企業はデータの置き場所を選べるセルフホスト版で本番運用する、という住み分けができています。それぞれの選び方は後半の章で詳しく扱います。

Difyでできること5つ

Difyでできることは、大きく5つに整理できます。先に「どの機能がどんな業務に対応するか」の対応表を示してから、順番に見ていきます。

機能何ができるか業務での使いどころの例
①チャットボット対話型アプリを画面操作で構築・公開社内ヘルプデスク、顧客からの一次問い合わせ対応
②RAG(ナレッジベース)社内文書を根拠に回答するAIを構築社内規程・マニュアルの検索応答、過去資料の照会
③ワークフロー条件分岐を含む多段のAI処理を組み立て問い合わせ分類と返信下書き、レポートの自動整形
④AIエージェントツールを使い分けてタスクを自律的に遂行調査・集計など複数ステップの作業の代行(発展領域)
⑤プラグインモデル・外部ツール連携を後から追加新しいLLMへの乗り換え、外部サービスとの接続

①チャットボット:対話型アプリを画面操作で作る

もっとも手を付けやすいのがチャットボットの構築です。AIの役割や口調を指示するプロンプトを設定し、必要に応じて参照資料をつなげば、社内ヘルプデスク・問い合わせ対応・FAQ応答のような対話型アプリが作れます。作ったアプリはWebページとして公開したり、既存サイトに埋め込んだり、APIとして他のシステムから呼び出したりできます。会話ログが残るため、「どんな質問が多いか」「どこで回答に失敗しているか」を確認しながら改善できる点も、試作を育てていくうえで役立ちます。

②RAG:社内文書を根拠に回答するAIを作る

RAG(検索拡張生成)は、社内規程・マニュアル・過去資料などの文書をDifyに取り込み、その内容を根拠として回答するAIを作る機能です。生成AIの弱点である「もっともらしい誤答」を、自社の文書という裏づけで抑えられるため、生成AIの企業活用では特に需要が大きい領域です。Difyではナレッジベースと呼ばれる領域に文書をアップロードし、チャットボットやワークフローから参照させる形で組み込みます。文書の分割方法や検索精度の調整も画面上で行えるので、「まず1つの部署のマニュアルで試す」といった小さな検証から始められます。

③ワークフロー:多段のAI処理を業務フローとして組む

ワークフローは、複数の処理ステップをブロックとしてつなぎ、条件分岐や変数の受け渡しを含む一連の流れを組み立てる機能です。たとえば「問い合わせメールを分類→種類ごとに別のプロンプトで下書きを生成→形式を整えて出力」のような多段処理を、コードを書かずに構築できます。単発の質問応答を超えて、業務プロセスそのものにAIを組み込む段階で主役になる機能です。

実務上のポイントとして、ワークフローの途中に人の確認を挟むHuman Input Node(v1.13.0で追加)があります。AIの出力をそのまま流さず、要所で人が承認・修正してから次へ進める構成が標準機能で組めるため、「全部AI任せは不安だが、途中確認があるなら業務に載せられる」という現場の要件に応えられます。組んだワークフローはAPIとして公開できるので、既存の業務システムやチャットツールから呼び出す使い方も可能です。

④AIエージェント:ツールを使いながらタスクを進めるAI

エージェントは、あらかじめ決めた手順どおりに動くワークフローと違い、AI自身が状況を判断してツールを呼び出しながらタスクを進める仕組みです。検索・計算・外部API呼び出しなどのツールを与えておくと、AIが必要に応じて使い分けて目的に近づいていきます。

この領域は直近のアップデートで強化が続いているところで、2026年7月17日リリースのv1.16.0では「Dify Agent」がベータ版として追加されました。Linuxサンドボックス(隔離された実行環境)でのコード実行、エージェントに能力を追加するスキルシステム、既存ワークフローとの統合が特徴です。ただしベータ段階の機能である点には注意が必要で、本番業務に組み込む判断は安定版化を待つか、影響範囲を限定した試験利用から始めるのが現実的です。エージェントの動向は変化が速いため、最新の状況は公式リリースノートで確認してください。

⑤プラグインによる拡張:必要な機能を後から足す

Difyは2025年のv1.0でプラグインアーキテクチャに移行し、モデルへの接続や外部ツール連携を、マーケットプレイスからプラグインとして追加する方式になりました。新しいLLMへの対応や外部サービスとの接続が本体アップデートを待たずに増えていく構造で、「今は対応していない機能が、あとから足せるようになる」拡張性を持っています。自社でプラグインを開発して追加することもできるため、コードを書けるメンバーがいる組織では、ノーコードの手軽さとコードによる拡張を組み合わせた使い方ができます。

なお、Dify本体の開発ペースは速く、2026年6月のv1.15.0、7月のv1.16.0と、月単位で機能追加が続いています。新機能が使えるようになる速さは利点ですが、セルフホストで運用する場合はこの更新に追従する手間が発生する、という表裏の関係にあります。この点は後述のクラウド版とセルフホスト版の比較にも関わってきます。

Difyでできないこと・向かないケース

導入判断を誤らないために、Difyが不得意な領域も正直に押さえておきます。「何でもできる」前提で始めると、途中で設計をやり直すことになります。

作り込んだ独自UIの顧客向けプロダクトには向かない

Difyで作ったアプリの画面は、チャット形式や入力フォーム形式のテンプレートが基本です。配色やロゴの調整はできますが、独自のデザイン・画面遷移・会員管理を持つ顧客向けサービスをDify単体で作り込むことはできません。その場合は、画面と業務ロジックは別のツールで作り、AI処理だけをDifyに任せてAPIでつなぐ分業構成が現実的です。たとえば画面をノーコードツールのBubbleで作り、裏側のAI処理をDifyが担う構成は、この分業の典型例です。詳しくはBubble×Dify連携の解説記事で扱っています。

基幹システムの置き換えはDifyの役割ではない

販売管理・会計・在庫管理といった基幹システムそのものをDifyで置き換えることはできません。Difyはあくまで「LLMを使う処理」を組むための基盤であり、トランザクション処理やマスタ管理を担う設計にはなっていません。既存システムはそのまま残し、その周辺に「問い合わせ応答」「文書処理」「データ要約」といったAIの仕事を足していく、という関係で捉えるのが正確です。DifyのワークフローはAPI経由で既存システムと接続できるため、この「周辺に足す」構成は無理なく組めます。

正解が曖昧な業務・例外だらけの業務の全自動化

生成AIの出力には一定の揺らぎが残ります。手順が定型化されておらず例外判断が頻発する業務や、そもそも正解の定義が曖昧な業務を「全自動で」処理させようとすると、精度の問題で運用が止まりがちです。この種の業務は、前述のHuman Input Nodeで人の確認を挟む半自動の構成にするか、対象業務自体を見直すのが先です。ツールの問題ではなく、生成AI全般に共通する性質として押さえておいてください。

AIを使わない純粋なシステム間連携

「フォームの回答をスプレッドシートに転記して通知する」のような、AIの判断を必要としないシステム間連携の自動化は、Zapierやn8nといった自動化ツールの得意領域です。Difyでも組めなくはありませんが、道具の主目的が違います。この違いは類似ツールとの違いの章で整理します。

DifyをそのままSaaSとして再販すること(ライセンス制約)

オープンソース版のDifyを使って、複数の顧客企業に提供するマルチテナント型のサービスを運営するには、LangGenius社の書面による許諾が必要です。「無料のオープンソースだから何でも自由」ではない点は、事業利用を考える場合の重要な前提です。詳細はライセンスの節で説明します。

Difyの料金の全体像(2026年7月23日確認)

Dify Cloudの料金プランは次の4つです。金額は公式サイトの表示どおりドル建てで記載します。

プラン料金主な内容位置づけ
Sandbox無料メッセージクレジット200(試用向けの総量。月ごとの付与ではない)、アプリ5個、メンバー1名まず触ってみる
Professional月59ドル(年払い590ドル)クレジット5,000/月、アプリ50個、メンバー3名個人・小チームの継続利用
Team月159ドル(年払い1,590ドル)クレジット10,000/月、アプリ200個、メンバー50名部門単位での利用
Enterprise個別見積(年間契約)SSO・監査ログ・複数ワークスペース・セルフホスト対応など全社展開・高度な統制要件

表中の「メッセージクレジット」は、Dify側が用意したモデルを使ってAIの応答を生成する際に消費される単位です。自分でLLMプロバイダのAPIキーを登録して使う場合は、この枠にかかわらず自分のキー側の課金で動かせます。つまりクレジットは「APIキーを用意しなくても試せる持ち分」と理解しておけば十分です。

読み違えやすいポイントが2つあります。1つめは、Sandboxの200クレジットは「毎月200」ではなく、試用向けに用意された総量だという点です。使い切ったら補充されないため、無料プランのまま業務で使い続ける前提は成り立ちません。継続利用するならProfessional以上が実質的なスタートラインです。

2つめは、この料金は「Difyというプラットフォームの利用料」であり、AIの応答そのものにかかるLLMのAPI費用(OpenAIやAnthropicへの支払い)は別建てだという点です。自分のAPIキーを登録して使う場合、その従量課金は各AIベンダーへ直接支払うことになります。Difyの月額だけを見て「月59ドルで収まる」と考えると、利用が増えた段階で想定外のコストが表面化します。

セルフホスト版(Community Edition)はソフトウェア自体が無料ですが、サーバー費・構築の手間・運用の人件費がかかるため、「無料で運用できる」わけではありません。企業導入を前提にした費用の組み立て方(LLM API費の見積もり方、構築を外注する場合の相場、総保有コストでの比較)は、Dify企業導入ガイドで詳しく整理しています。本記事では「プラン料金とAPI費の二階建てになっている」という構造の理解までで十分です。

クラウド版とセルフホスト版の選び方

Difyを使い始めるとき、最初の分かれ道が「クラウド版か、セルフホスト版か」です。判断材料を表にまとめます。

観点Dify Cloudセルフホスト(Community Edition)
始めるまでの手間アカウント登録のみ。数分で開始Dockerでの構築が必要。サーバーの用意も自前
費用プラン料金(無料〜月159ドル)+LLM API費ソフトウェアは無料。インフラ費+運用の人件費+LLM API費
データの所在LangGenius社の管理するクラウド上自社が管理するサーバー・クラウド環境内
アップデート自動で反映自社で適用(更新頻度が高く、追従の手間がかかる)
SSO・監査ログEnterprise契約で対応Community Editionは非対応。必要ならDify Enterpriseのセルフホスト構成
向いている段階検証・試験導入社内データを扱う本番運用

使い分けの結論はシンプルです。検証はクラウド版で小さく始め、社内データを本格的に扱う段階になったらセルフホストまたはEnterpriseを検討する。この順番なら、初期投資ゼロで「自社の業務に効くかどうか」を確かめてから、インフラや契約の判断に進めます。逆に、最初からセルフホスト構築に踏み切ると、効果検証の前に構築・運用のコストを抱えることになります。

注意点として、セルフホスト版のCommunity EditionにはSSO(シングルサインオン)や監査ログの機能がありません。「データを自社に置きたい」と「アカウント統制・ログ管理をしたい」の両方が必要な場合は、Dify Enterpriseを自社環境にセルフホストする構成が該当します。この2つの要件を混同したまま検討を進めると、あとで構成を組み直すことになるため、早めに整理しておいてください。

迷ったときは、次の順で自問すると構成が絞れます。

  1. 扱うデータに機密情報・個人情報は含まれるか:含まれないならクラウド版のまま進めて問題が起きにくい。含まれるなら次へ
  2. データの置き場所に社内規程・業界規制の縛りがあるか:あるならセルフホスト系の構成を軸に検討する
  3. SSO・監査ログ・部門横断の統制は必要か:必要ならDify Enterprise。不要で、インフラ運用を担える体制があるならCommunity Editionのセルフホスト
  4. インフラ運用の担い手が社内にいるか:いない場合は、Enterprise契約または構築・保守の外部委託を含めて比較する
図解:Difyのクラウド版かセルフホスト版か迷ったときの判断順。機密・個人情報の有無、データ所在の規程・規制、SSO・監査ログの要否、インフラ運用の担い手の4ステップ

ライセンスの条件:Modified Apache License 2.0

セルフホストを検討するなら、ライセンスの正確な理解が必要です。Difyのオープンソース版は、Apache License 2.0をベースに独自の条件を加えたModified Apache License 2.0で提供されています。ポイントは次のとおりです。

  • 商用利用は可能:自社の業務でDifyをセルフホストして使うこと(単一テナントでの利用)は、無料で問題ありません
  • マルチテナント運用には書面許諾が必要:Difyのソースコードを使って複数の顧客にサービスを提供する形態(DifyをSaaS化して再販するような使い方)は、LangGenius社の書面による許諾が要ります
  • ロゴ・著作権表示の改変は不可:Difyのコンソールやアプリ内のロゴ・著作権表示を削除・変更することはできません。なお、Difyのフロントエンドを使わずAPIだけを利用する構成では、この制約は適用されません

まとめると、「社内利用なら実質的に自由、Difyを土台にした事業展開には条件がある」という設計です。ライセンス原文はGitHubのリポジトリで公開されているので、事業利用を検討する場合は原文の確認をおすすめします。

企業利用の視点:みずほFGの事例とデータの扱い

Difyは個人開発者のツールにとどまらず、大企業の本番業務でも使われ始めています。企業目線で押さえるべき2つの論点を紹介します。

大企業での採用実績:みずほフィナンシャルグループ

公表されている国内事例の代表が、みずほフィナンシャルグループです。同グループはDify Enterpriseを全社に展開しており、法人営業業務の実証では最大52.2%の業務時間短縮という結果が公表されています(2026年)。金融機関はデータの扱いに関する要件が特に厳しい業種であり、そこで全社規模の採用実績があるという事実は、Difyという基盤の企業適性を測るうえで参考になります。このほか、公式サイトの導入企業にはリコーなどの名前も確認できます。

もっとも、「大企業が使っているから自社でも安全」と短絡はできません。みずほFGの例はSSO・監査ログ・セルフホストに対応したDify Enterpriseでの導入であり、無料のCommunity Editionやクラウド版の小規模プランとは統制のレベルが異なります。自社の要件がどのエディションに対応するのかを見極めることが先決です。

データの扱いは「Dify・LLM・インフラ」の3層で考える

企業でDifyを使う場合、セキュリティの検討対象はDify本体だけではありません。①Dify(アプリと文書データの置き場所)、②接続するLLM(プロンプトと文書が渡る先)、③動かすインフラの3層それぞれで、データがどこを通りどこに保存されるかを整理する必要があります。たとえばDifyをセルフホストしても、接続先のLLM API(OpenAIやAnthropicなど)には処理対象のデータが渡ります。「セルフホストだから外部にデータが出ない」という理解は正確ではなく、LLM側の法人向け利用条件(入力データを学習に使わない設定など)の確認が別途必要です。

図解:企業利用のデータの扱いはDify・接続するLLM・動かすインフラの3層で考える

また、生成AIの社内利用ではDifyの機能とは別に、「どのデータを入れてよいか」の社内ルールづくりが欠かせません。機密区分ごとに投入可否を決め、利用者に周知したうえで運用を始めることが、あとから統制をかけ直す手間を防ぎます。

Dify Enterpriseで加わる統制機能

参考までに、法人版のDify Enterpriseで加わる主な機能を挙げます(2026年7月23日時点の公式公表内容)。

  • 認証・アカウント統制:SSO(SAML/OIDC)、SCIMによるアカウントの自動プロビジョニング
  • 監査:改ざん検知に対応した監査ログとSIEM(ログ統合管理基盤)連携
  • デプロイの選択肢:Kubernetes(Helm chart)による自社環境への構築、AWS/GCP/Azure向けTerraformモジュール、外部ネットワークから完全に隔離したエアギャップ環境への対応
  • データ管理:VPC内・特定リージョン内でのデータ保持、BYOK(自社管理鍵による暗号化)
  • 組織管理:複数ワークスペースと、部門単位のクォータ・アクセス制御

裏を返せば、この一覧は「大企業の情報システム部門が生成AI基盤に求める要件のリスト」でもあります。自社の要件がここまで必要か、Community Editionやクラウド版の範囲で足りるかを見比べることが、エディション選定の実質的な作業になります。

この3層の整理、セキュリティ審査を通すための準備資料、構築を外注する場合の依頼先の見極め方は、Dify企業導入ガイドで実務レベルまで掘り下げています。また、「社内チャットボットを作りたい」という目的が先にある場合は、Difyのようなプラットフォーム型のほかにSaaS利用・個別開発という選択肢もあるため、社内AIチャットボットの構築ガイドで方式比較から検討することをおすすめします。

類似ツールとの違い:ChatGPT・Zapier・n8nと比べる

Difyを調べていると必ず出てくるのが「ChatGPTと何が違うのか」「Zapierやn8nがあれば十分では」という疑問です。結論からいうと、これらは競合というより目的の軸が違う道具で、比べ方を間違えると選定を誤ります。

ツール本質的な役割Difyとの関係
ChatGPT完成した対話型AIサービス。人がその場で使うDifyは「自社用のAIアプリを作る基盤」。階層が違い、DifyからOpenAIのモデルを呼び出す関係も成り立つ
ZapierSaaS同士をつなぐ自動化サービス。クラウド完結・接続先が豊富連携の自動化が主目的。AI処理を一部組み込めるが、RAGやプロンプト設計を作り込む基盤ではない
n8nワークフロー自動化ツール。セルフホスト可能で複雑な処理分岐に強い思想が近い部分もあるが、n8nは汎用の連携・自動化が主軸。DifyはLLMアプリの構築に特化。併用する構成も多い

ChatGPTとの違い:使う道具か、作る基盤か

ChatGPTは「完成品」であり、開いてすぐ会話できます。一方Difyは、その会話体験を自社の文書・自社の業務フロー・自社の画面で再構成するための基盤です。「社員それぞれがAIと対話する」段階ならChatGPTで足りますが、「社内規程を根拠に回答させたい」「業務プロセスの中に組み込みたい」「利用ログを自社で管理したい」といった要件が出てきた段階で、Difyのような構築基盤が選択肢に入ります。両者は排他ではなく、DifyのアプリからOpenAIのモデルを使うこともできるため、「ChatGPTかDifyか」ではなく「そのまま使う段階か、組み込む段階か」で考えるのが正確です。

Zapier・n8nとの違い:自動化のハブか、AIアプリの基盤か

Zapierとn8nは「システムとシステムをつなぐ」ことが主目的の自動化ツールです。AI機能も取り込まれていますが、位置づけはあくまで自動化フローの1ステップです。対してDifyは、プロンプト設計・ナレッジベース・会話ログ・モデル切り替えといったLLMアプリを作り込むための道具立てが中心にあります。

実務では「どちらか」ではなく役割分担で考えると整理しやすくなります。たとえば、AIによる文書応答や要約の部分はDifyで作り、その前後のデータ受け渡しや各種SaaSへの通知はZapierやn8nが担う、という構成です。DifyのアプリはAPIとして呼び出せるため、この分担は自然に組めます。「AIの応答品質を作り込みたい処理」がどれだけあるかが、Difyを中心に据えるかどうかの分かれ目です。

GPTs・LangChainとの違いも一言で

比較対象としてよく挙がる残り2つにも触れておきます。GPTsは、ChatGPTの中でカスタム版のChatGPTを作れる機能です。手軽さでは優れていますが、OpenAIのモデルとChatGPTの環境が前提で、モデルの選択・データの置き場所・業務システムとの接続の自由度はDifyのほうが広くとれます。LangChainは、エンジニアがコードで書くLLMアプリ開発フレームワークです。自由度は高い一方、作る・直すのすべてにコードが必要で、非エンジニアがワークフローを触ることはできません。「コードでの作り込み(LangChain)」と「画面操作での構築(Dify)」の中間を埋める位置に、Difyの実用性があります。

Difyの始め方:最短ルート

Difyを試すだけなら、費用も環境構築も不要です。クラウド版なら次の3ステップで始められます。

  1. アカウント登録:公式サイト(dify.ai)からサインアップします。無料のSandboxプランで開始できます
  2. モデルの接続:使いたいLLMプロバイダ(OpenAI・Anthropicなど)のAPIキーを設定画面で登録します。Sandboxの試用クレジットの範囲なら、キーなしで試すこともできます
  3. 最初のアプリを作る:テンプレートを選ぶか、チャットボットを新規作成し、プロンプトを書いて動かしてみます。最初の動くアプリまで、慣れれば30分もかかりません

セルフホストで始める場合は、Docker Composeを使ってサーバー上に構築します。構築自体の難易度は高くありませんが、前述のとおり運用の継続が本題になるため、まずはクラウド版で「作りたいものが作れるか」を確かめてからで遅くありません。

最初の題材の選び方:3つの基準

ツールの操作より結果を左右するのが、最初に何を作るかの選定です。基準は3つあります。①発生頻度が高い業務(週1回しか起きない業務ではAIの効果を測れない)、②手順がある程度定型化されている業務(例外判断だらけの業務は最初の題材に向かない)、③効果を時間で測れる業務(「なんとなく便利」で終わらせないため)。社内文書の検索応答、問い合わせメールの分類と下書き、定例レポートの要約あたりが、この3条件を満たしやすい典型例です。逆に、経営判断や人事評価のような正解の定義が難しい領域を最初の題材に選ぶと、精度の議論が先に立って前に進まなくなります。

画面ごとの具体的な操作手順、チャットボット・RAG・ワークフローそれぞれの作り方は、Difyの使い方ガイドで画面の流れに沿って解説しています。実際に手を動かす段階になったら、そちらを参照してください。

よくある質問

Q. Difyは無料でどこまで使えますか?

2つのルートがあります。クラウド版のSandboxプランは無料で、200クレジット分(試用向けの総量で、月ごとに補充はされません)まで試せます。もう1つはセルフホストのCommunity Editionで、ソフトウェア自体は無料です。ただしセルフホストにはサーバー費用がかかり、どちらのルートでも接続するLLMのAPI費用は別途発生します。「完全無料で業務利用を続ける」ことは想定しにくく、無料枠は評価用と考えるのが実態に合っています。

Q. Difyは商用利用できますか?

できます。自社業務での利用は、オープンソース版でも無料で商用利用が可能です。ただしライセンス(Modified Apache License 2.0)に2つの条件があります。①Difyを使って複数顧客向けのマルチテナント型サービスを運営する場合は書面での許諾が必要、②コンソールやアプリ内のロゴ・著作権表示は削除・改変できない、の2点です。社内利用の範囲では通常問題になりませんが、Difyを組み込んだサービスの外販を考える場合は事前にライセンス原文を確認してください。

Q. プログラミングの知識は必要ですか?

チャットボットやRAG、基本的なワークフローの構築なら、コードを書かずに画面操作だけで作れます。一方、既存システムとのAPI連携、独自プラグインの開発、セルフホスト環境の構築・運用にはエンジニアリングの知識が必要です。「作り始めるのにコードは不要、本格的に組み込む段階では技術者がいたほうがよい」というのが実際の温度感です。

Q. セルフホストには何が必要ですか?

Dockerが動くサーバー(自社サーバーまたはAWS等のクラウド環境)があれば構築できます。ただし構築後の継続運用として、頻度の高いアップデートへの追従、バックアップ、監視、障害対応を誰が担うかを決めておく必要があります。また、Community EditionにはSSOや監査ログの機能がないため、これらが必要な場合はDify Enterprise(セルフホスト対応)の契約が前提になります。

Q. 企業で導入する場合、どのプラン・構成を選べばよいですか?

段階で分けるのが定石です。まず検証段階はクラウド版(無料〜Team)で対象業務への効果を確かめる。本番展開の段階で、データの所在要件があればセルフホスト、加えてSSO・監査ログ・全社統制が必要ならDify Enterpriseを検討する、という流れです。セキュリティ審査の通し方や外注時の費用相場まで含めた進め方はDify企業導入ガイドで詳しく解説しています。

まとめ:Difyは「AIを業務に組み込む段階」で選ぶ基盤

要点を整理します。

  • Difyは、チャットボット・RAG・ワークフロー・エージェントといったLLMアプリを構築するための開発プラットフォーム。オープンソース(セルフホスト)とクラウドの二本立てで提供されている
  • 強みは、コードなしで始められる構築のしやすさ、100以上のプロバイダに対応するモデル非依存性、プラグインによる拡張性。エージェント機能はv1.16.0のDify Agent(ベータ)で強化が進む
  • 一方、独自UIの顧客向けプロダクトや基幹システムの置き換えには向かず、画面は別ツール・AI処理はDifyという分業構成が現実解になる
  • 料金はプラットフォーム利用料とLLM API費の二階建て(2026年7月23日時点でProfessional月59ドル・Team月159ドル)。無料のSandboxは試用の総量200クレジットで、継続利用の前提には置けない
  • 企業利用ではみずほフィナンシャルグループの全社展開などの実績があるが、Community Edition・クラウド・Enterpriseで統制機能が異なるため、自社要件に合うエディションの見極めが先決

次のステップは目的によって分かれます。まず手を動かして試すならDifyの使い方ガイドへ。企業導入としてセキュリティ審査・費用・外注の判断を進めるならDify企業導入ガイドへ。顧客向けサービスの画面と組み合わせたい場合はBubble×Dify連携の解説が参考になります。

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本メディアを運営するSwooo(東証グロース上場・株式会社アイビス/証券コード9343)は、Difyのような生成AI基盤の構築を含む業務AI化の導入支援と、AI駆動開発×ノーコードによる受託開発で、累計50件以上の開発支援を行ってきました。対象業務の選定からPoC、セキュリティ要件を踏まえた本番構築、社内で運用を引き取る内製化の段階までを一貫して支援します。「Difyが自社の用途に合うか」という入口の相談からで構いません。

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※Difyの料金・機能・ライセンス条件は2026年7月23日時点の公式公表内容にもとづきます。最新情報は公式サイトをご確認ください。

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