執筆:Swooo編集部/監修:諸藤 哲耀(株式会社アイビス Swooo)
GitHub Copilotを企業で導入するとき、個人で使うときと同じ感覚でプランを選ぶと、データ保護と管理の要件を満たせません。個人向けプラン(Free・Pro・Pro+・Max)と企業向けプラン(Business・Enterprise)は、価格の違い以上に「組織のコードがどう扱われるか」「管理者が何を制御できるか」が異なるからです。この記事は、情報システム部門・DX推進担当・開発責任者の方に向けて、プラン体系と料金(2026年7月24日時点の公式掲載値)、企業プランの管理機能、そして見落とされがちなContent Exclusion(コンテンツ除外)の適用範囲の限界まで、公式情報ベースで整理します。
結論を先に言えば、プラン選定そのものは難所ではありません。難しいのは導入後の運用です。ライセンスの棚卸し、個人アカウントによるシャドー利用への対策、除外設定が効かない機能の把握。この3点を設計しないまま全社配布すると、「契約したのに使われない」「守ったつもりのコードが守られていない」という2種類の失敗が同時に起きます。本文では、この記事では、プラン体系に加えて導入後の運用設計まで踏み込みます。
GitHub Copilotの現在地:プラン体系と料金(2026年7月24日時点)
GitHub Copilotのプランは、個人向け4種類と組織向け2種類の計6種類です。名称が似ているため(Pro+とEnterpriseはどちらも$39/月)、まず全体像を押さえます。以下はいずれも2026年7月24日時点でGitHub公式サイトに掲載されている米ドル価格です。料金・仕様は改定が続いているため、契約前に必ず公式の料金ページで最新の内容を確認してください。
個人向けプラン:Free・Pro・Pro+・Max
| プラン | 月額 | 含まれるAIクレジット | 概要 |
|---|---|---|---|
| Free | $0 | ー | 月2,000回のコード補完と限定的なチャット・エージェント利用。複数モデルを選択可。Copilot CLIも含む |
| Pro | $10 | $15 | コード補完が無制限。Copilot cloud agent・コードレビューが利用可能 |
| Pro+ | $39 | $70 | 高性能モデルの利用、監査ログ、Pro比で大きい利用量。GitHub Spark(プレビュー) |
| Max | $100 | $200 | 新モデル・新機能への優先アクセス。大量のエージェントワークフロー向け |
個人向けプランの位置づけは「開発者個人の生産性向上」です。後述するとおり、組織のコードを扱う業務利用を個人プランでまかなう構成は、データの扱いと管理の両面で企業要件を満たしません。個人プランは、あくまで私的な開発や個人事業での利用、あるいは会社が正式に認めた検証用途にとどめるのが原則です。
組織向けプラン:BusinessとEnterprise
| プラン | 月額(1ユーザー) | 主な内容 |
|---|---|---|
| Business | $19 | 管理コンソールでのシート一元管理(付与・剥奪)、組織単位のポリシー制御、監査ログ、IP補償、Content Exclusion(コンテンツ除外) |
| Enterprise | $39 | Businessの全機能に加えて、階層的なポリシー継承(enterprise配下の複数組織へのカスケード)、コードベースインデックスによる社内コンテキストを踏まえた提案、より大きなAIクレジット、高性能モデルの利用 |
単価だけを見ると「Enterpriseは Businessの約2倍」ですが、後述するとおり両者の分岐点は規模や予算ではなく、GitHub Enterprise Cloudを既に契約しているか、複数組織にまたがるポリシー統制が必要かにあります。人数が多いからEnterprise、という選び方は実態に合いません。
2026年6月の課金方式変更:AIクレジット制への移行
予算を組むうえで押さえるべき変更があります。GitHubは2026年6月1日、Copilotの課金方式を従来の「プレミアムリクエスト単位」から「AIクレジット」ベースの従量制に変更しました(GitHub公式ブログの発表による)。要点は次のとおりです。
- シート月額は変わらない:Business $19・Enterprise $39という単価自体はこの変更で変動していません
- インラインのコード補完はクレジットを消費しない:日常のタイピング補完と次編集候補(next edit suggestions)は消費対象外です
- クレジットを消費するのはチャット・エージェント系機能:Copilot Chat、Agent mode、Copilot cloud agent(旧称 cloud agent)、コードレビュー、Copilot CLIなどが消費対象です
- 移行期のプロモーション:Business・Enterprise顧客には2026年8月まで2倍のプロモーションクレジットが付与されると案内されています(執筆時点)
実務上の含意は明確です。「シート単価 × 人数」だけでは予算が確定しないということです。エージェント機能を積極的に使うチームほどクレジット消費が増えます。各プランに含まれるクレジット量と超過時の従量単価は改定される可能性があるため、社内検討の早い段階でパイロット利用での実測消費量を取り、その数字をもとに見積もることを推奨します。プランごとの利用枠の詳細は公式ドキュメントで確認してください。
個人プランと企業プランの本質的な違い:データの扱いと管理機能
個人プランと企業プラン(Business・Enterprise)の違いは、使えるモデルや利用量の差ではありません。本質的な差は次の2点です。
違い1:組織のコードがどう扱われるか
企業導入で最初に確認すべきは、入力したコードやプロンプトがAIモデルの学習に使われるかどうかです。BusinessとEnterpriseについては、顧客のコードをモデルの学習に使用しない方針であることがGitHubが方針として案内しています(文言は更新されるため、契約時は一次情報での確認をおすすめします)。一方、個人プラン、特にFreeプランでは、データ利用に関する設定を利用者自身が確認・変更する必要があります。
ここで重要なのは、この種のポリシーは文言が更新されるという事実です。二次情報の「学習に使われません」という記述を鵜呑みにせず、契約前にGitHub公式のデータプライバシーに関するドキュメントで一次情報の文言を直接確認してください。セキュリティ部門への説明資料には、確認した公式ページのURLと確認日を添えるのが確実です。
違い2:管理者が何を制御できるか
Business・Enterpriseで提供される管理機能は、大きく4系統あります。
- シート管理:管理コンソールからライセンスの付与・剥奪を一元管理できます。誰が使っているかを組織側が把握できることが、個人プランの寄せ集めとの決定的な違いです
- ポリシー制御:どの機能(チャット、エージェント、CLIなど)を有効にするか、どのモデルを許可するかを組織単位で制御できます
- 監査ログ:シートの付与・剥奪、ポリシー変更、機能の有効化変更、アクセス取り消しなどのイベントが記録されます。保持期間やエクスポート形式などの詳細は、公式ドキュメントで最新の仕様を確認してください
- IP補償:Copilotの提案に起因する知的財産権の紛争について、一定条件下でGitHub側が防御を担う補償がBusiness・Enterpriseに含まれると案内されています。補償の発動条件(提案をそのまま採用したか、フィルタ設定を有効にしていたか等)や範囲は契約文書で定まるため、法務部門による契約条件の確認が必須です
言い換えると、企業プランの価値は「AIの性能」ではなく「組織として説明責任を果たせる状態でAIを使えること」にあります。個人プランを業務に流用する構成では、この4系統がすべて欠落します。
BusinessとEnterpriseの分岐点は「規模」ではない
BusinessとEnterpriseの選択は、人数規模で語られがちですが、実際の分岐点は次の3つです。
| 判断軸 | Businessで足りるケース | Enterpriseを検討すべきケース |
|---|---|---|
| GitHubの契約形態 | GitHub FreeまたはTeamプランの組織で使う | GitHub Enterprise Cloudを既に契約している(Copilot EnterpriseはEnterprise Cloud環境が前提です) |
| ポリシー統制の範囲 | 単一組織で完結し、組織単位のポリシー制御で足りる | enterprise配下に複数の組織(子会社・事業部単位など)があり、上位から一括でポリシーを継承させたい |
| コンテキストの深さ | 汎用的な補完・チャットで足りる | コードベースインデックスにより、社内リポジトリの設計判断や命名規則を踏まえた提案・回答が必要 |
ポリシー継承には知っておくべき挙動があります。GitHub公式ドキュメント(Copilotのポリシーに関するページ)によると、複数の組織からライセンスを付与されているユーザーについて、同一enterprise内では最も緩いポリシーが適用され、異なるenterprise間では最も厳格なポリシーが優先されるという整理です。子会社ごとに組織を分けてポリシーを厳しくしたつもりが、同一enterprise内の別組織の緩い設定が効いてしまう、という事故はこの挙動の理解不足から起きます。複数組織で運用する場合は、設定後に実際のユーザーで適用状態を検証してください。
Content Exclusionの正確な理解:適用されない機能がある
企業導入の検討で必ず出てくるのが「機密性の高いコードをAIに読ませない設定はあるか」という問いです。答えはContent Exclusion(コンテンツ除外)ですが、この機能には適用範囲の限界があり、そこを理解せずに「除外設定をしたから安全」と判断すると、統制の前提が崩れます。
何を設定でき、何が起きるか
Content ExclusionはBusiness・Enterpriseプランでのみ利用できる機能です(個人向けプランでは設定できません)。指定したファイルやリポジトリをCopilotの処理対象から除外します。設定できる主体は3階層あります。
- リポジトリ管理者:自分が管理するリポジトリ内のコンテンツを除外
- 組織オーナー:組織に属するCopilotユーザーに対して除外を設定
- enterpriseオーナー:enterprise全体に対して除外を設定
除外が有効な範囲では、対象コンテンツはインライン補完の生成に使われず、他のファイルへの提案の文脈(コンテキスト)としても参照されず、Copilot Chatの回答生成にも利用されず、Copilotコードレビューの対象からも外れます(GitHub公式ドキュメント「Excluding content from GitHub Copilot」による)。
適用されない機能:CLI・cloud agent・Agent mode
ここからが本題です。2026年7月24日時点の公式ドキュメントでは、Content ExclusionはCopilot CLI・Copilot cloud agent・Copilot ChatのAgent modeには適用されないことが明記されています。つまり、次のような経路では除外設定が効きません。
- 開発者がターミナルからCopilot CLIを使って、除外指定したファイルを含む作業をする
- GitHub上でIssueをcloud agentに割り当て、エージェントがリポジトリを読んでプルリクエストを作る
- IDE内のCopilot ChatをAgent modeで動かし、複数ファイルにまたがる自律的な作業をさせる
皮肉なことに、この3つはいずれも2025年以降にCopilotの主役になったエージェント系機能です。利用が伸びている機能ほど除外設定の適用外、という構図を理解しておく必要があります。適用範囲は今後変わる可能性があるため、導入時点の公式ドキュメントで必ず最新の記載を確認してください。
実務上の帰結:除外設定は「境界線」ではなく「補助線」
この限界を踏まえると、機密コードの保護設計は次のように組むのが妥当です。
- 第一の防衛線はリポジトリのアクセス権:Copilotは利用者本人がアクセスできるコンテンツを扱います。そもそも触れる人を絞ることが、どのAI機能にも共通して効く基本の統制です
- 第二の防衛線は機能ポリシー:除外設定が効かない機能(CLI・cloud agent・Agent mode)を、機密領域を扱うチームでは組織ポリシーで無効化する、という選択肢を検討します
- Content Exclusionは補助線として使う:認証情報ファイル、鍵、個人情報を含むデータ定義など「補完やチャットに出てほしくないもの」を減らす目的では有効です。ただし完全な遮断を保証する機能ではない、と社内文書に明記します
セキュリティ部門向けの説明資料に「Content Exclusionにより機密情報を遮断」とだけ書くのは、正確ではありません。「適用範囲と適用外の機能」をセットで書いたうえで、機能ポリシーとアクセス権設計を組み合わせる。この書き方ができているかどうかが、導入設計の質を分けます。
2026年4月の新規申込一時停止:何が起き、今どうなっているか
2026年のCopilotを語るうえで避けて通れない出来事があります。時系列で事実を整理します。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年4月22日 | GitHubが、GitHub Free/Teamプランの組織向けにCopilot Businessの自己サインアップ(セルフサーブでの新規申込)を一時停止。既存Business顧客のシート追加・利用には影響なしと案内。同時に個人向けPro・Pro+等の新規登録も一時停止し、利用上限も強化 |
| 2026年6月17日 | 個人向けプラン(Student・Pro・Pro+・Max)の新規登録を数週間かけて段階的に再開すると発表 |
停止の理由についてGitHub側は、Agent modeやcloud agentなどエージェント型ワークフローの利用急増により、Copilotの計算コストの構造が変化したためと説明しています(Microsoft側責任者のコメントが複数の海外報道で伝えられています)。Businessの自己サインアップ再開時期については、執筆時点(2026年7月24日)で確定情報を確認できていません。検討中の企業は、GitHub公式のChangelogで最新の受付状況を確認するか、GitHubの営業窓口・販売パートナー経由での契約可否を問い合わせてください。
この出来事から企業側が読み取るべきは、GitHubへの批判ではなく調達上の教訓です。エージェント型AIの計算コストは供給側にとっても新しい変数であり、価格・利用枠・申込条件は今後も動きうるということです。具体的には次の2点を推奨します。
- 導入計画に「申込・調達の確認」を明示的に入れる:使いたいプランが今すぐ契約できるかは自明ではありません。パイロット計画の初日に確認する項目です
- 単一ツール前提の全社標準化を急がない:AIコーディングツールは複数併用が技術的に可能です。1つのツールの供給条件が変わっても開発が止まらない構えを持っておくと、交渉上も運用上も選択肢が残ります
導入の実務:ライセンス管理・シャドー利用対策・規約整合
契約後に待っている運用の論点を3つ扱います。
論点1:ライセンス管理は「配って終わり」にしない
Business・Enterpriseの管理コンソールではシートの付与・剥奪ができますが、「付与したまま使われていないシート」を自動で回収する仕組みが標準で完結しているわけではありません。棚卸しは組織側の運用として設計する必要があります。実務の型は次のとおりです。
- 付与の基準を先に決める:「希望者全員」ではなく「対象リポジトリで開発業務を行うメンバー」など、付与条件を文書化します。研修受講を付与条件にする設計も有効です
- 四半期ごとに利用状況を確認する:管理画面の利用データをもとに、一定期間利用のないシートを洗い出します
- 剥奪ではなく再配分として運用する:未利用シートの回収を「取り上げ」として運用すると反発が生まれます。「使いたい人が待っているので回す」という再配分の建て付けにすると、棚卸しが回りやすくなります
- クレジット消費もあわせて見る:2026年6月以降の課金方式では、シート数に加えてエージェント機能のクレジット消費が費用を左右します。「シートは使っているが補完のみ」の人と「エージェントを多用する」人ではコスト構造が違うため、利用の内訳まで見て予算を更新します
論点2:シャドー利用対策は「禁止」の一言で終わらせない
シャドー利用とは、会社が契約していない経路(個人契約のProプランなど)で従業員が業務コードをAIツールに入力してしまう状態を指します。Copilotの場合、個人アカウントで$10/月のProを契約すれば個人の判断で使えてしまうため、会社が正式導入しないままでいると、かえって統制の効かない利用が広がるという逆説があります。
技術的に完璧な検知は困難です。個人PCや個人アカウントでの利用を会社側がすべて監視することはできません。だからこそ、対策は「塞ぐ」と「用意する」の両輪になります。
- 公式の経路を用意する:最大の対策は、会社契約のBusiness/Enterpriseシートを必要な人に行き渡らせることです。正規ルートが使いやすければ、私的契約で業務コードを扱う動機は大きく減ります
- 会社の設備では会社のアカウントだけを通す:業務端末・社内ネットワークからのGitHubアクセスを組織アカウント(SSO必須化)に限定する設計を、既存のID管理・端末管理の仕組みと組み合わせて検討します
- ルールは「ツール名」でなく「データ」で書く:「Copilot禁止」という書き方は、次の新ツールが出るたびに陳腐化します。「業務コード・顧客データを、会社が契約していないAIサービスに入力しない」というデータ基準のルールにしておくと、ツールの入れ替わりに耐えます
- 除外設定の限界と整合させる:前章のとおり、Content Exclusionはエージェント系機能に適用されません。「会社契約なら何を入れても安全」という誤解を放置せず、機密区分ごとの取り扱いを研修で明示します
論点3:コーディング規約・レビュー体制との整合
Copilotの提案コードは、動くかどうかという意味では高い水準にありますが、自社のコーディング規約・セキュアコーディング基準・lintルールに沿っているかは別問題です。エージェントが生成する変更量が増えるほど、レビューが実質的な品質ゲートになります。押さえるべきは3点です。
- 機械で判定できるものは機械に寄せる:lint・フォーマッタ・静的解析・テストをCIで必須化し、AI生成コードも人手コードも同じゲートを通します。AI導入を機にCIの整備状況を見直す価値があります
- レビュー観点を「AI生成前提」に更新する:もっともらしいが要件と微妙にずれるコード、不要に広い変更、古いAPIの利用などはAI生成コードに特有の傾向です。レビューチェックリストに観点を追加します
- Copilotコードレビューは補助として使う:Copilot自身のコードレビュー機能はプロジェクトの文脈を踏まえた指摘ができますが、自社基準への適合を保証するものではありません。人のレビューを置き換えるのではなく、一次スクリーニングとして位置づけます
進め方の全体像:パイロットで運用を検証してから広げる
ここまでの3つの論点(ライセンス管理・シャドー利用対策・規約整合)は、全社展開の前にパイロットで検証できます。ライセンスを配って終わりにせず、小さく検証してから広げる進め方です。
| 段階 | 期間の目安 | やること |
|---|---|---|
| パイロット | 1〜2ヶ月 | 2〜5名のチームにBusinessシートを付与し、実業務の題材で利用する。クレジット消費量の実測、Content Exclusionと機能ポリシーの設定検証、レビュー工程への影響確認をこの期間に行う |
| ルール整備・研修 | 1〜2ヶ月 | パイロットの知見をもとに、データ取り扱いルール・付与基準・レビュー観点を文書化する。利用者向けの研修で「除外設定の限界」「機密区分ごとの扱い」まで共有する |
| 展開・棚卸し運用 | 継続 | 付与基準に沿って対象を広げ、四半期ごとの利用状況確認と再配分を定常運用に載せる。公式の料金・仕様変更を追う担当も決めておく |
パイロットの検証項目に「申込・調達の確認」(前章参照)と「クレジット消費の実測」を含めておくと、展開段階の予算と契約の見通しが立てやすくなります。研修を付与条件に組み込むと、シャドー利用対策とライセンス管理の両方が同じ仕組みで回ります。
導入効果のデータをどう読むか:「55%高速化」の正確な出典
社内検討資料でよく引用される「Copilotでタスク完了が55%速くなった」という数字には、正確な限定条件があります。これはGitHubが2022年に実施した実験(約95名を対象に、JavaScriptでHTTPサーバーを書くという特定タスクの所要時間を比較)の結果です。Copilot利用群は平均1時間11分、非利用群は平均2時間41分でした。統計的には有意ですが、特定の小規模タスクでの結果であり、業務開発全体が55%速くなるという意味ではありません。
企業導入の文脈では、GitHubがAccentureと実施した企業環境での調査(約4,800人規模の開発者を対象に、実業務での利用状況と生産性指標を分析したもの)のほうが参照に適しています。いずれにせよ、外部の数字は「他社環境での参考値」にとどめ、自社のパイロットで実測した数字を意思決定の根拠にするのが確実です。パイロットから研修・全社展開までの組み立て方は、ツールは異なりますが開発内製化の進め方の解説記事で詳しく扱っており、Copilot導入にもそのまま応用できます。
Claude Code・Cursorとの関係:排他ではなく役割分担
「Copilotを入れるか、Claude CodeやCursorにするか」という二者択一の問いを受けることがありますが、この3つは技術的に排他ではありません。実際、複数ツールを併用する開発組織は珍しくなく、それぞれの重心が異なります。
- GitHub Copilot:GitHubというコード管理基盤に組み込まれていることが最大の特徴です。リポジトリ・Issue・プルリクエストと同じ管理体系の中でAI機能とその統制(シート・ポリシー・監査)を扱えます。既にGitHubを全社標準にしている企業にとって、管理面の導入障壁が最も低い選択肢です
- Claude Code:ターミナルで動くエージェント型ツールで、複数ファイルにまたがる改修・テスト実行までの自律的な作業に重心があります
- Cursor:AIを前提に設計されたIDEで、エディタ内での開発体験に重心があります
Claude CodeとCursorの企業導入視点での詳細な比較(設計思想・料金・ガバナンス機能・国内動向)はClaude CodeとCursorの比較記事で扱っています。また、AIツールを含む開発環境全体をどう組み立てるかはWebアプリ開発環境の解説記事を参照してください。
選定の考え方として実務的なのは、「どれが一番優れているか」ではなく「契約と統制をどの管理体系に乗せるか」「エージェント実行の基点をどこに置くか」という問いに置き換えることです。GitHub中心の開発体制ならCopilotが統制面の第一候補になり、そのうえで特定チームの高度なエージェント利用にClaude Codeを追加する、といった構成は十分に成立します。
よくある質問
Q. BusinessとEnterpriseはどちらを選べばよいですか?
分岐点は人数ではなく3つの条件です。(1)GitHub Enterprise Cloudを既に契約しているか(Copilot Enterpriseはこれが前提です)、(2)複数組織にまたがるポリシーの一括統制が必要か、(3)コードベースインデックスによる社内コンテキストを踏まえた提案が必要か。3つとも当てはまらないなら、まずBusinessで始めて必要になった時点で移行を検討する進め方が合理的です。
Q. 入力したコードがAIモデルの学習に使われることはありますか?
Business・Enterpriseについては、顧客コードをモデル学習に使用しない方針が広く案内されています。ただしポリシー文言は更新されるため、契約前にGitHub公式のデータプライバシーに関するドキュメントで一次情報を直接確認し、確認日つきで社内資料に残すことを推奨します。個人向けプラン(特にFree)はデータ利用設定を利用者自身が確認する必要があり、業務利用の前提には適しません。
Q. Content Exclusionを設定すれば機密コードは完全に守られますか?
守られません。2026年7月24日時点の公式ドキュメントで、Content ExclusionはCopilot CLI・cloud agent・Copilot ChatのAgent modeには適用されないと明記されています。補完やチャットへの露出を減らす補助線としては有効ですが、完全な遮断ではありません。第一の防衛線はリポジトリのアクセス権設計、第二が機能ポリシーによる制御、Content Exclusionは第三の補助と位置づけてください。
Q. 2026年4月の新規申込停止は今も続いていますか?
個人向けプランは2026年6月17日に段階的な再開が発表されました。一方、Copilot Businessの自己サインアップ(GitHub Free/Teamプラン組織向け)の再開時期は、執筆時点(2026年7月24日)で確定情報を確認できていません。GitHub公式Changelogで最新の受付状況を確認するか、GitHubの営業窓口・販売パートナーに契約可否を問い合わせてください。既存Business顧客のシート追加は停止の影響を受けないと案内されています。
Q. Claude CodeやCursorと比べてどう選べばよいですか?
「契約と統制をどの管理体系に乗せるか」で考えるのが実務的です。GitHubを全社のコード管理基盤にしているなら、シート管理・ポリシー・監査を同じ体系で扱えるCopilotが統制面の第一候補になります。エージェント型の自律的な開発作業を重視するならClaude Code、AI前提のエディタ体験を重視するならCursorが候補に入り、併用も技術的に可能です。詳細な比較軸はClaude CodeとCursorの比較記事を参照してください。
まとめ:プラン表の外側に、導入の成否がある
GitHub Copilotの企業導入を、プラン体系から運用設計まで整理しました。要点は次のとおりです。
- 料金は個人向けFree・Pro $10・Pro+ $39・Max $100、組織向けBusiness $19・Enterprise $39(2026年7月24日時点・米ドル)。2026年6月からAIクレジット制に移行し、エージェント機能の利用量が費用を左右する
- 個人プランと企業プランの本質差は「データの扱い」と「管理機能」。学習利用ポリシーは契約前に公式の一次情報で文言を確認する
- BusinessとEnterpriseの分岐点は規模ではなく、Enterprise Cloud契約の有無・階層的ポリシー統制の要否・コードベースインデックスの要否
- Content ExclusionはCLI・cloud agent・Agent modeに適用されない。除外設定を「完全な遮断」として扱わず、アクセス権設計・機能ポリシーと組み合わせる
- 2026年4月の新規申込一時停止が示すとおり、AIツールの供給条件は動く。調達確認を導入計画に組み込み、単一ツール前提の標準化を急がない
プランの比較表は公式サイトを見れば作れます。導入の成否を分けるのはその外側、つまりライセンスの棚卸し、シャドー利用を減らす正規経路の整備、除外設定の限界を織り込んだデータ保護設計、AI生成コードを前提にしたレビュー体制です。この記事がその設計の土台になれば幸いです。
Swoooは、AIコーディングツールを実務で使う開発会社として、導入設計・パイロット支援・企業向けAI研修を提供しています。ツール選定やデータ取り扱いルールの整備から相談できます。研修の詳細はAI研修のページをご覧ください。